Wireless・のおと
サイレックスの無線LAN 開発者が語る、無線技術についてや製品開発の秘話、技術者向け情報、新しく興味深い話題、サイレックスが提供するサービスや現状などの話題などを配信していきます。
変調のはなし(4)
難しい話が続いたので、今回は息抜きです。
その昔、無線はおろか電線を使った通信網(電話ではなく、モールス符合の電信)すら無かった時代、「腕木通信」というシステムが主にヨーロッパで使われていました。軍艦の間で行われていた手旗信号を大型化・固定設備化したもの、と考えて貰えばわかりやすいかも知れません。
今回はこの腕木通信を例にとって、OOK, ASK, FSK などの変調方式と、「シンボルと情報量」という概念について説明してみようと思います。
その昔、無線はおろか電線を使った通信網(電話ではなく、モールス符合の電信)すら無かった時代、「腕木通信」というシステムが主にヨーロッパで使われていました。軍艦の間で行われていた手旗信号を大型化・固定設備化したもの、と考えて貰えばわかりやすいかも知れません。
今回はこの腕木通信を例にとって、OOK, ASK, FSK などの変調方式と、「シンボルと情報量」という概念について説明してみようと思います。
まず、実際に使われていた腕木通信塔の原理図を示します。支柱の上で自由回転する腕と、腕の両端の「ヒジ」の角度の組み合わせでシンボルを示します。ここに示したアルファベットに加えて 0-10 の数字も表現できたようで、すなわちシンボルあたり 37 状態、log2(37)=5.2bit/シンボルの情報量を持つことになります。16QAM (4bit/シンボル) と 64QAM (6bit/シンボル) の間くらいの情報密度ですね。
なお資料によっては本図に対して左右反転状態で示されているものもあり、腕木を「前から見た図」なのか「裏から見た図」なのかで分かれるようですが、どちらが「前から見た図」なのかは判らないことを記しておきます。
史実の腕木通信塔とシンボル(表示)
基本情報(シンボル)の伝達
さて実際に使われていたものとは別に、一番簡単な腕木通信について考えてみましょう。腕が立っていたら「1」、そうでなければ「0」という2値情報です。
腕木におけるOOK(1bit/symbol)
これは OOK(On-Off-Keying)に相当するものだと直感的にわかりますね。そして、この方式が持つ根源的な問題もわかると思います。腕が出ていないことが「0」という情報なのか、それとも担当者が寝坊をしたのか判断できません。また腕が立ちっ放しのときに「1という情報が連続している」のか、それとも「機械が故障して腕が引っ掛った」「担当者がトイレに行って戻ってこない」などのトラブルなのかも判断できません。
このように、OOK は「敵が来たら狼煙を上げる」というような単純な情報伝達...無線機器でいえば「受信信号があればドアを開く」ような用途には向くのですが、複雑な情報を扱うには一般に適さないのです。
では、FSK を腕木通信に例えるとどうなるでしょうか?腕を振る速度で情報を伝えるというのが比較的正確な比喩ですが、担当者が疲れてしまいそうです。なのでここでは「腕の色によって判断する方式」、としましょう(※註)。白い腕が立てば「1」、黒い腕が立てば「0」というように。こうしておけば、「担当者が寝坊している」という情報と「0という情報が通達された」という情報を混同することはありません。OOK から比べれば大きな進歩ですね。
(※註)色は可視光電磁波の周波数なので、色=周波数という例えはあながち的外れでもありません。ただし我々が日常生活で使う「色」は複数スペクトラムが様々な強度で混合した電磁波ですが、FSK で使う「周波数」の概念はレーザーやプリズム分解光(虹)のような単スペクトラム光に近いものです。人間の目は高性能なので混合色も単スペクトラム色も同じように「色」として認識しますが、例えば蝶などには狭い範囲のスペクトラム光にしか反応しない生物もいます。
腕木におけるFSK(1bit/symbol)
AM ラジオより FM ラジオのほうが音質が良いのも、これと同じ原理です。AM ラジオは「電波の強さ」を音声波形として伝達するので、雑音も含めた電波の強弱がそのまま音声として再生されます。しかし FM ラジオは音声波形を周波数の変化として変調し、電波の強弱は基本的に無関係なので雑音を大幅に減らすことを可能にしているのです。
文字伝送と符号化
さて、これまでの OOK と FSK はどちらも1シンボル=1ビットでした。「敵が来た」というような1ビットの情報を伝達するのはそれでも良いのですが、「男の子が産まれた」とか「麦の買い付け 500 ポンド」といった複雑な情報を伝えるには、時間軸に沿って幾つもの情報を流して文章を分解・再構成しなければなりません。かくして「符合化」という概念が生まれます。電信ではトンツーを組み合わせた「モールス符合」が使われていたことは以前にも紹介しました。
さて、腕木信号で文章(アルファベット)を伝えるためにはどんな符合を用いれば良いでしょう?腕が立つ・立たないで1ビットの情報しか伝えられない OOK では、結局モールス符合のようなものを使うしかありません。アルファベット 26 文字を 1 ビット/シンボルの伝送系で伝えるためには log2(26)=4.7 なので、最低でも 5bit の情報が必要になります。アルファベット1文字あたり5回も腕を上げたり下げたりしなければならないわけで、これが「効率が悪い」ことは直感的に理解して頂けると思います。
では FSK ではどうでしょう?色を情報伝達に使うならば、例えば26色の腕を用意しておいてアルファベット1文字に相当する色の腕を上げれば、1文字あたり1回で情報伝達できることになります。船舶で用いられている信号旗がまさにこのシステムですね。これを電波の世界に例えると、周波数の変化を 0/1 の2種類だけでなく、n 種類のシンボルに割り当てる n-FSK (この場合は 26-FSK)となります。
FSK の問題は「(周波数を増やすと)回路規模が増大する、電波の使用効率が悪い、周波数間隔を詰めるとシンボル誤認が起こる」と書きました。腕木(旗)信号に関してこれを述べると、全ての通信所に26種類の信号腕ないし旗を用意し(≒占有周波数帯の増加)、26種類の信号を読み取れる技能を持った通信員を配置しなければならず(≒回路規模の複雑化)、しかし1回の通信あたりに使うのは1本づづなので効率が悪い(≒周波数使用効率の悪化)ということになります。また26種類の信号は見分けが付きやすいようにデザインしないと、似たデザインの信号を読み違える事故が頻発することにもなります(≒周波数間隔を詰めるとシンボル誤認が起こる)。
位相とシンボルの対応
では PSK はどうなるでしょう?波形情報では例えにくいのですが、コンスタレーションの位相図で描けば例えやすいです。通信塔に時計の文字盤のようなものを備え、腕がどの角度を指しているかで情報を伝えれば良いのです。BPSK は「腕が右向きか左向きか」で1ビット/シンボル、QPSK なら4方向で2ビット/シンボル、8PSK なら8方向で3ビット/シンボルの情報伝達を行うというのも判りやすいでしょう。
腕木におけるBPSK(1bit/symbol)
腕木におけるQPSK(2bit/symbol)
APSK は「腕の方向」と「腕の長さ」という情報を組み合わせたものです。そして APSK の一形式である QAM は、腕の方向と長さを組み合わせることによってマトリクスの1点を指すようにした方式です。腕木に例えるなら、文字盤つきの腕木のようなものを考えて頂ければ近い例えになると思います。
腕木における16QAM(4bit/symbol)
例えば 6x6 のマトリクスで36点のなかの1点を指す腕木システムがあれば、1回の信号伝達でアルファベット26文字+数字10文字のなかのどれか1つを送ることが可能になります。シンボルの数だけ信号を用意する n-FSK 方式(信号旗システム)にくらべると時間当たりの伝送効率は同等ですが、必要な機材の規模や通信員の訓練(=占有周波数帯や回路規模)はずっと効率が良くなることが判って頂けるかと思います。
ただしマトリクスの間隔をあまりに詰め過ぎると、 n-FSK 同様(あるいはそれ以上の頻度で)読み違えが多発するので、あまり欲張りはできません。「電波通信では 64QAM がほぼ実用上限、頑張っても 256QAM どまり」というのはそういう意味ですし、64QAM より 16QAM のほうが、16QAM より QPSK のほうが、8PSK より BPSK のほうがより劣悪な環境下でも(伝送効率低下と引き換えに)より確実な情報伝達ができます(※註)。電波状況が悪くなると無線 LAN が遅くなるのは、シンボルレートを下げる=遅くすることによって情報伝達の確実性を上げる設計がなされているからです。
(※註)64QAM は 8x8=64 格子の何処を腕が差しているかを正確に読み取る必要がありますが、BPSK は腕が右か左かだけを読めば良いのです。霧や陽炎が立った状況下で、性能の悪い望遠鏡で通信塔を覗く信号手にとって、どちらが読み取りやすいかという話です。
マルチキャリア伝送/OFDM
最後に OFDM を例えてみましょう。OFDM はマルチキャリア伝送です。すなわち腕木通信に例えるならば通信塔が複数の腕や文字板のセットを持ち、複数の文字を同時に送れるようなシステムです。
腕木におけるOFDM(16QAM x 4サブキャリア)
前述したように 802.11a/g では 48 本、802.11n(HT40) では 108 本、802.11ac(HT160) では 452 本ものデータサブキャリアを用いますが、これは通信塔1基あたりにそれだけの数の文字盤が備わっていることを意味します。例えば 64QAM x 48 サブキャリアでは 288 ビットの情報を1回で伝えることができる一方、n-FSK で頑張って 1024 種類の旗を用意しても、1回に伝えられる情報は 12 ビット しかありません。OFDM による高速化=情報伝達の効率化が「圧倒的」で、シングルキャリアでは太刀打ちできないというのはそういう意味です。
現実には数百個の文字盤を備えた腕木通信塔など想像することも難しく、そんなものを国中に建設して回ることなど物理的に不可能でしょう。「DSP と高速フーリエ変換が実用化されるまで OFDM は実用不可能だった」というのはそういう意味で理解して頂けるかと思います。しかし、なぜ DSP を使えば OFDM が(比較的)容易に実装できるのか、「直交信号の合成・分離」や「高速フーリエ(逆)変換」まで踏み込むともう腕木信号で例えることは不可能で、本格的に情報通信工学の教科書を読んで頂く必要があります。
まとめ
通信工学の世界ではとかく「シンボル」「符合」「直交」「スペクトラム」という難しそうな言葉が出てきて入門者を悩ませますが、今回はなるべく例え話を使って通信の概念を伝えてみました。ただ例え話は諸刃の剣で、例え話の方から入ってしまうと妙に話を拡大解釈してとんでもない結論をひねり出しちゃう人がいたり、数式恐怖症が克服できなくて結局通信工学の本質を理解できず「わかったつもり」になってしまうリスクもあります。本コラムも「わかったつもり」ではなく、通信技術理解への端緒になれば幸いです。
なお資料によっては本図に対して左右反転状態で示されているものもあり、腕木を「前から見た図」なのか「裏から見た図」なのかで分かれるようですが、どちらが「前から見た図」なのかは判らないことを記しておきます。

基本情報(シンボル)の伝達
さて実際に使われていたものとは別に、一番簡単な腕木通信について考えてみましょう。腕が立っていたら「1」、そうでなければ「0」という2値情報です。

これは OOK(On-Off-Keying)に相当するものだと直感的にわかりますね。そして、この方式が持つ根源的な問題もわかると思います。腕が出ていないことが「0」という情報なのか、それとも担当者が寝坊をしたのか判断できません。また腕が立ちっ放しのときに「1という情報が連続している」のか、それとも「機械が故障して腕が引っ掛った」「担当者がトイレに行って戻ってこない」などのトラブルなのかも判断できません。
このように、OOK は「敵が来たら狼煙を上げる」というような単純な情報伝達...無線機器でいえば「受信信号があればドアを開く」ような用途には向くのですが、複雑な情報を扱うには一般に適さないのです。
では、FSK を腕木通信に例えるとどうなるでしょうか?腕を振る速度で情報を伝えるというのが比較的正確な比喩ですが、担当者が疲れてしまいそうです。なのでここでは「腕の色によって判断する方式」、としましょう(※註)。白い腕が立てば「1」、黒い腕が立てば「0」というように。こうしておけば、「担当者が寝坊している」という情報と「0という情報が通達された」という情報を混同することはありません。OOK から比べれば大きな進歩ですね。
(※註)色は可視光電磁波の周波数なので、色=周波数という例えはあながち的外れでもありません。ただし我々が日常生活で使う「色」は複数スペクトラムが様々な強度で混合した電磁波ですが、FSK で使う「周波数」の概念はレーザーやプリズム分解光(虹)のような単スペクトラム光に近いものです。人間の目は高性能なので混合色も単スペクトラム色も同じように「色」として認識しますが、例えば蝶などには狭い範囲のスペクトラム光にしか反応しない生物もいます。

AM ラジオより FM ラジオのほうが音質が良いのも、これと同じ原理です。AM ラジオは「電波の強さ」を音声波形として伝達するので、雑音も含めた電波の強弱がそのまま音声として再生されます。しかし FM ラジオは音声波形を周波数の変化として変調し、電波の強弱は基本的に無関係なので雑音を大幅に減らすことを可能にしているのです。
文字伝送と符号化
さて、これまでの OOK と FSK はどちらも1シンボル=1ビットでした。「敵が来た」というような1ビットの情報を伝達するのはそれでも良いのですが、「男の子が産まれた」とか「麦の買い付け 500 ポンド」といった複雑な情報を伝えるには、時間軸に沿って幾つもの情報を流して文章を分解・再構成しなければなりません。かくして「符合化」という概念が生まれます。電信ではトンツーを組み合わせた「モールス符合」が使われていたことは以前にも紹介しました。
さて、腕木信号で文章(アルファベット)を伝えるためにはどんな符合を用いれば良いでしょう?腕が立つ・立たないで1ビットの情報しか伝えられない OOK では、結局モールス符合のようなものを使うしかありません。アルファベット 26 文字を 1 ビット/シンボルの伝送系で伝えるためには log2(26)=4.7 なので、最低でも 5bit の情報が必要になります。アルファベット1文字あたり5回も腕を上げたり下げたりしなければならないわけで、これが「効率が悪い」ことは直感的に理解して頂けると思います。
では FSK ではどうでしょう?色を情報伝達に使うならば、例えば26色の腕を用意しておいてアルファベット1文字に相当する色の腕を上げれば、1文字あたり1回で情報伝達できることになります。船舶で用いられている信号旗がまさにこのシステムですね。これを電波の世界に例えると、周波数の変化を 0/1 の2種類だけでなく、n 種類のシンボルに割り当てる n-FSK (この場合は 26-FSK)となります。
FSK の問題は「(周波数を増やすと)回路規模が増大する、電波の使用効率が悪い、周波数間隔を詰めるとシンボル誤認が起こる」と書きました。腕木(旗)信号に関してこれを述べると、全ての通信所に26種類の信号腕ないし旗を用意し(≒占有周波数帯の増加)、26種類の信号を読み取れる技能を持った通信員を配置しなければならず(≒回路規模の複雑化)、しかし1回の通信あたりに使うのは1本づづなので効率が悪い(≒周波数使用効率の悪化)ということになります。また26種類の信号は見分けが付きやすいようにデザインしないと、似たデザインの信号を読み違える事故が頻発することにもなります(≒周波数間隔を詰めるとシンボル誤認が起こる)。
位相とシンボルの対応
では PSK はどうなるでしょう?波形情報では例えにくいのですが、コンスタレーションの位相図で描けば例えやすいです。通信塔に時計の文字盤のようなものを備え、腕がどの角度を指しているかで情報を伝えれば良いのです。BPSK は「腕が右向きか左向きか」で1ビット/シンボル、QPSK なら4方向で2ビット/シンボル、8PSK なら8方向で3ビット/シンボルの情報伝達を行うというのも判りやすいでしょう。


APSK は「腕の方向」と「腕の長さ」という情報を組み合わせたものです。そして APSK の一形式である QAM は、腕の方向と長さを組み合わせることによってマトリクスの1点を指すようにした方式です。腕木に例えるなら、文字盤つきの腕木のようなものを考えて頂ければ近い例えになると思います。

例えば 6x6 のマトリクスで36点のなかの1点を指す腕木システムがあれば、1回の信号伝達でアルファベット26文字+数字10文字のなかのどれか1つを送ることが可能になります。シンボルの数だけ信号を用意する n-FSK 方式(信号旗システム)にくらべると時間当たりの伝送効率は同等ですが、必要な機材の規模や通信員の訓練(=占有周波数帯や回路規模)はずっと効率が良くなることが判って頂けるかと思います。
ただしマトリクスの間隔をあまりに詰め過ぎると、 n-FSK 同様(あるいはそれ以上の頻度で)読み違えが多発するので、あまり欲張りはできません。「電波通信では 64QAM がほぼ実用上限、頑張っても 256QAM どまり」というのはそういう意味ですし、64QAM より 16QAM のほうが、16QAM より QPSK のほうが、8PSK より BPSK のほうがより劣悪な環境下でも(伝送効率低下と引き換えに)より確実な情報伝達ができます(※註)。電波状況が悪くなると無線 LAN が遅くなるのは、シンボルレートを下げる=遅くすることによって情報伝達の確実性を上げる設計がなされているからです。
(※註)64QAM は 8x8=64 格子の何処を腕が差しているかを正確に読み取る必要がありますが、BPSK は腕が右か左かだけを読めば良いのです。霧や陽炎が立った状況下で、性能の悪い望遠鏡で通信塔を覗く信号手にとって、どちらが読み取りやすいかという話です。
マルチキャリア伝送/OFDM
最後に OFDM を例えてみましょう。OFDM はマルチキャリア伝送です。すなわち腕木通信に例えるならば通信塔が複数の腕や文字板のセットを持ち、複数の文字を同時に送れるようなシステムです。

前述したように 802.11a/g では 48 本、802.11n(HT40) では 108 本、802.11ac(HT160) では 452 本ものデータサブキャリアを用いますが、これは通信塔1基あたりにそれだけの数の文字盤が備わっていることを意味します。例えば 64QAM x 48 サブキャリアでは 288 ビットの情報を1回で伝えることができる一方、n-FSK で頑張って 1024 種類の旗を用意しても、1回に伝えられる情報は 12 ビット しかありません。OFDM による高速化=情報伝達の効率化が「圧倒的」で、シングルキャリアでは太刀打ちできないというのはそういう意味です。
現実には数百個の文字盤を備えた腕木通信塔など想像することも難しく、そんなものを国中に建設して回ることなど物理的に不可能でしょう。「DSP と高速フーリエ変換が実用化されるまで OFDM は実用不可能だった」というのはそういう意味で理解して頂けるかと思います。しかし、なぜ DSP を使えば OFDM が(比較的)容易に実装できるのか、「直交信号の合成・分離」や「高速フーリエ(逆)変換」まで踏み込むともう腕木信号で例えることは不可能で、本格的に情報通信工学の教科書を読んで頂く必要があります。
まとめ
通信工学の世界ではとかく「シンボル」「符合」「直交」「スペクトラム」という難しそうな言葉が出てきて入門者を悩ませますが、今回はなるべく例え話を使って通信の概念を伝えてみました。ただ例え話は諸刃の剣で、例え話の方から入ってしまうと妙に話を拡大解釈してとんでもない結論をひねり出しちゃう人がいたり、数式恐怖症が克服できなくて結局通信工学の本質を理解できず「わかったつもり」になってしまうリスクもあります。本コラムも「わかったつもり」ではなく、通信技術理解への端緒になれば幸いです。