CBR-100AC
CAN通信無線LANコンバータ

CBR-100AC

CANデータを無線LANに変換・配信・ロギングし稼働監視の効率アップを実現
働く車向け CAN/無線LANブリッジ

概要

本製品は、車載用途を中心に産業機器でも利用されているCAN通信を無線LAN経由でリアルタイムにパソコンやタブレットへ転送するためのCAN/無線LANブリッジです。 稼働中の車両のリモートモニタリングや各種設定が可能となることで、現場保守作業の効率を大幅に改善できます。さらに、車両の稼働状況を本機内蔵のストレージに保存することができるため、異常が発生した場合の原因解析・早期復旧をスピーディーに行えます。本製品では内蔵のCPUや各種ドライバソフトを刷新することで従来製品に比べ処理能力と使い勝手を大きく向上させました。

特長

 

CAN通信のIP変換 (Converter Server Mode)

車両のCAN通信をIEEE 802.11b/g/n対応無線LANに双方向に変換することで、パソコンやタブレット・スマートフォンなどのモバイル機器を使った稼働診断(※1)を可能にします。車両・産業機器搭載のモバイルモデムを利用した通信に比べ、稼働中のデータをリモートかつリアルタイム(※2)に確認できるため現場での異常動作の特定を容易に行えます。

CAN通信のIP通信化 (Converter Server Mode)

※1 弊社サンプルアプリケーション"CAN Monitor Application"を利用、もしくはお客様のCANアプリケーションに弊社CAN/無線LAN変換モジュールを組込むことでご利用頂けます。
※2 本製品とタブレットやパソコン間における通信距離やリアルタイム通信性能は、利用環境(本製品の設置場所、利用するタブレットやパソコン種別、周辺の無線LANアクセスポイントの有無等)によって変わります。

CAN通信情報のロギング

内蔵のeMMCストレージや外部USB対応メモリ(※3)にCANデータをバイナリもしくはテキスト形式でロギングできます。ストレージ容量を使い切った場合、古いログを自動削除することでロギングの継続が可能となり、現場でなかなか再現しない異常の発見や、作業オペレータの操作解析などに有効活用できます。

有線CAN通信の無線LANブリッジ (e-Cable Mode)

※3 USBメモリの接続は、本製品のUSBインタフェースに別途USBケーブルを使って行います。接続中は、本製品の防塵・防水性能が低下します。また、本機能の利用にあたって、USBメモリはFAT32でフォーマットされている必要があります。

有線CAN通信の無線LANブリッジ (e-Cable Mode)

2台のCBR-100ACを利用することで、有線CAN通信を無線化することができます。従来有線CANケーブルでの接続が必須だった各種計測器や産業機器などを自由に配置することが可能になります。

有線CAN通信の無線LANブリッジ (e-Cable Mode)

車載対応仕様

本製品は建機・農機など働く車で必要な動作温度、防水防塵、耐振動、車両電源など車載向け仕様を標準でサポートしています。

車載対応仕様

ココがポイント

【CAN高速起動】
車両ロギングで必要とされる電源ONから本機の高速起動や高速ロギング開始(2.5秒)をサポート。電源投入直後からのCANログ取得を可能にします。

【動作パフォーマンスの大幅な向上】
ハードウェアおよびソフトウェアの刷新により、使い勝手を大幅に向上させました。

  CDS-2150(従来機) CBR-100AC 効果
CPU空き処理能力 7% 75% 複数機能の同時処理能力の向上
CANログタイムスタンプ分解能 5ms 1ms より詳細な稼働情報・トラブル原因の分析
CANログ転送時間(※4) 約600秒 約300秒 CANログ回収時間の短縮
CANログ圧縮(※5) なし あり より長時間のCANログ保存

※4 本製品内に保存された1.6GBのCANログデータをUSBメモリに転送した場合。利用するUSBメモリの種類により必要な転送時間は変動します。
※5 ロギングするCANデータの内容やログ保存形式により圧縮率は変動します。

仕様

型番 CBR-100AC
無線LANインタフェース x1:IEEE 802.11b/g/n 1Tx1R (2.4GHz)
デバイスインタフェース CAN x2:CAN2.0B Active, ISO11898 High Speed (max.1Mbit/s)
シリアル x1:RS-485/422A準拠 ※1
USB x1:USB OTG2.0準拠 (コネクタMicro-B) ※2
デジタル入力 x2:オープンもしくはGND接続
デジタル出力 x1:オープンコレクタ出力, 最大出力電流:5mA
LED 本体×4
動作環境条件 温度条件:-30~+65℃
湿度条件:20~95%RH(結露なきこと)
保存環境条件 温度条件:-40~+85℃ ※3
湿度条件:20~95%RH(結露なきこと)
電源 DC10~32V
アクセサリ電源での起動・シャットダウンに対応
最大消費電力 DC10~32V/0.3A
外形寸法 約100 x 90 x 31.2mm(本体のみ、突起物除く)
重量 約320g
同梱物 本体、設置ガイド、簡易適合証明書/保証案内シート、GPLお問い合わせ案内シート
各種取得規格 FCC Class B, ICES-003 ClassB, CE ClassB, RoHS
システム CPU: NXP社 i.MX6ULLシリーズ(528MHz)
ROM: 32MB
RAM: 128MB
内蔵ストレージ: eMMC 2GB(疑似SLC/ユーザ利用可能1.6GB)
筐体 樹脂ケース
防塵・防水 防水:JIS D0203 D2準拠
防塵:JIS D0207 F2準拠
対応ソフトウェア CAN Monitor Application(サンプルアプリ)
保証期間 5年 ※4
標準価格 オープン価格
注釈 ※1 外部機器を制御するための機能は実装されていません。
※2 RNDISによるCAN over USB通信およびUSBメモリ接続に対応
※3 +65℃以上 1000 時間、+75℃以上 500 時間を超えないこと
※4 お客様車両機器に組み込んでご利用される場合、別途保証条件を設定

記載された社名及び製品名は各社の登録商標または商標です。
改良のため、予告なく仕様を変更することがあります。

製品構成

名前 備考
CBR-100AC 本体および設置ガイドなどを同梱
インタフェースケーブル 別売:本機1台につき1本必要
開発キット(ブリッジ端末用)(※5) 別売:開発環境、ドキュメント、サンプルコード同梱DVD
開発キット(WindowsOS用) 別売:開発環境、ドキュメント、サンプルコード同梱DVD
開発キット(Android OS用) 別売:開発環境、ドキュメント、サンプルコード同梱DVD

※5 CBR-100AC専用の組込みアプリケーション開発キットです。

外観図

cds2150_06.jpg

ケーブルピンアサイン情報

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インタフェースケーブル ピンアサイン情報
端子番号は、右図の本体側集合コネクタ(JAE製 MX23A18NF2)を参照ください。

端子 名称 機能
1 CAN1_H※6 CAN1ポート
2 CAN1_L※6
3 SIO_GND シリアル基準レベル
4 BATT 電源入力
5 KEY 電源制御入力
6 DIN1 デジタル入力ポート
7 DIN2
8 RESERVED※7 予約ポート
9 DOUT デジタル出力ポート
10 CAN2_H※6 CAN2ポート
11 CAN2_L※6
12 TRXD_R※8 終端ポート
13 TRXD_L※8 シリアル入出力
14 TRXD_H
15 TXD_L シリアル出力
16 TXD_H
17 GND 電源入力
18 GND

※6 CANの終端(推奨120Ω)はH、L間に必要に応じて作成してください。
※7 オープンとしてください。
※8 TRXD_RとTRXD_Lを接続することによりRS-485が終端処理されます。

インタフェースケーブル(別売)外観

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連携ソフトウェア

開発キット(別売)

CBR-100AC用アプリケーションを追加するためのキットです。本開発キットを利用することで、ブリッジ端末内部にLinuxアプリケーションを組込んだり、タブレット・PC側で利用する稼働モニタリングアプリケーションを開発できます。

development_kit.jpg

CAN Monitor Application(サンプルアプリケーション)

CBR-100ACを使って、CANデータを無線LANでモニタリングするためのWindows用サンプルアプリケーションです。
CANデータを本アプリケーションから車両側に送信することもできますので、本製品を購入後すぐにCAN/無線通信機能の評価を開始できます。

cma.jpg

※ 本ソフトウェアはこちらよりダウンロードできます。

働く車のリモートモニタリング

近年、各自動車メーカはコネクティッドカーと呼ばれる、自動・快適運転・走行・車輛管理を目的としたネットワーク通信に対応した車両開発に力を入れています。これらは車両に搭載された各種センサやカメラ映像情報、また走行情報をクラウドサービスと連動し実現されるサービスですが、その基本となる速度・エンジン回転数、ブレーキや故障情報などの走行情報はCAN(Controller Area Network)という通信方式で車両内の各コントローラー(ECU: Electronic Control Unit)間でやり取りされています。

このCANによる車両内の制御通信は乗用車だけでなく、建設機械や農業機械などの"働く車"と呼ばれるカテゴリーの車両でも一般的に利用されています。この市場においては、建設現場や農地においていかに車両を効率的に稼働させ生産性を上げられるかが重要になります。そのため、各車両メーカでは自動走行・遠隔操作や、車両保守作業の効率化、稼働情報の分析による予防保全など様々な方法で生産性向上を目指しています。

これらの実現に必要とされるのが無線通信による稼働データの収集やリモート制御です。しかしながら、働く車と、通常の無線機器が対象とする一般オフィスでは無線機器が利用される通信条件や設置環境は大きく異なり、CAN通信の無線化には特別な対応が必要となります。

CANと無線LAN通信の違い

CAN通信はCAN 2.0Bという規格でも通信速度は最高1.0Mbpsでそのデータは通常29bit/フレームで送受信されます。他方、無線LANなどのIP通信は数十~数百Mbpsといった速度での通信でやり取りされており、送受信データは約1,500bit/フレームといったCANに比べて格段に大きなサイズの通信に最適化されています。

この想定された通信速度やデータサイズの違いにより、単純にCANフレームを個々にIPフレームに変換したのでは極めて非効率(大きなバケツで少量の水を送るようなもの)となってしまいます。

CAN・無線変換の最適化

CAN・無線変換の最適化

そのままでは非効率なCAN・無線/IP通信変換を効率的に行うには、細切れのCANフレームをIP通信に合わせた形に加工・取りまとめて最適化する必要があります。この作業は無線装置内部でCANフレームをIP通信に適したデータ量までバッファリングすることで実現できます。

このバッファリングにより『広帯域な無線LAN通信を活用できる』ことだけでなくTCP/IP通信を利用する場合の『データ再送効率の向上による通信遅延低減』や『無線端末側の通信負荷の低減/低発熱化』といった副次的な効果が得られます。特に低発熱は、防塵防水対策として密閉性が求められる働く車向け製品では必須となります。

通信距離の延長・遅延への対応

CANの無線化用途には、通信データの確実性を最優先とする制御用アプリケーションと、通信の継続性を重要視する監視用アプリケーションがあります。制御用途ではエラー再送に対応したTCPプロトコルを利用しますが、周辺環境や通信距離によってはデータ再送待ちや遅延が発生します。他方、監視用途では、データの完全性よりも通信距離の延長や遅延によるPC・タブレットなどの監視ソフト側からの通信断を避ける必要があります。この場合、エラー再送の無いUDPを利用するのが適しています。

用途に応じたIP通信方式を採用することで、リモートアプリで利用するタブレットPC・スマートフォン端末を効果的に活用できます。

映像情報の最適化

CANデータという車両情報と合わせて周辺映像を確認したいという要望があります。映像データはCANデータと比べて圧倒的にサイズが大きく、そのまま無線転送するとCAN通信用の帯域まで使ってしまいます。そのため、CANと映像情報をセットで無線転送する場合は、映像情報を効率的かつスマートに送信する必要があります。

複数のカメラ映像を1セットにして送信しデータ量を減らす。周辺の無線環境や通信速度の変化に応じて映像フレーム(fps)や画像品質を自動変更するといった対応が有効です。

タブレットイメージ

PC・タブレットアプリケーション

車両のリモート監視・操作には、ノート・タブレットPCやスマートフォンといったモバイル端末の利用が一般的です。これら市販機器は入手性もよく、リモート監視・操作のためのアプリケーションを開発する環境も整っています。他方、それらの無線通信機能は一般的なオフィスやWi-Fiホットスポットでの利用を想定したもので、端末のバッテリーと省エネを考慮した動作に最適化されています。

このような市販モバイル端末を無線CAN通信で安定的に利用するためには、モバイル端末側の無線通信機能も安定動作させる必要があります。この点、よく発生する問題として『通信が瞬間的に停止・息継ぎしてしまう(無線モジュールのスリープ)』、『常に周辺の他のアクセスポイントを検索してしまう(バックグラウンドスキャン)』といったものが挙げられます。通常のWeb閲覧や電子メール送受信では全く問題無いこれらのmsレベルの動作のもたつきも、遅延にシビアなCAN通信においては大きな問題となります。

モバイル端末に搭載されたOS標準機能ではこれらの設定を詳細に変更するのは困難なため、車両アプリケーション側で常に端末の無線機能を最適な状態に維持する必要があります。

農機イメージ

利用アプリケーションに応じた選択

CAN通信の無線化アプリケーションを市販モバイル端末で利用する場合、選択肢※は無線LAN(いわゆるWi-Fi)か
Bluetooth®となります。

無線LANは高速・大容量・複数端末の同時通信が可能です。複数のCANチャネルや負荷の高いCAN通信(1,000fps以上)を無線化、また複数のモバイル端末で利用したり、映像とセットで通信させる場合に適した通信方式です。また無線干渉の可能性が低い5GHz帯を利用できるメリットもあります。

他方、Bluetooth®は通信速度は無線LANに及びませんが、1対1でのペアリング通信に特化しているので簡単に設定・利用できます。周波数ホッピング機能により無線干渉に比較的強く、モバイル端末の消費電力も無線LANに比べ低いため長時間稼働できるといったメリットがあります。

通信できる距離は無線LANで数十m~100m程度、Bluetooth®では数m~10m前後※となるので、車両からどの程度の距離で目的のアプリケーションを使う必要があるかで無線方式を選択することになります。
※Class1対応製品では無線LAN並みの100m程度まで通信可能ですが、モバイル端末側もClass1に対応した製品である必要があります。

利用アプリケーション

 

まとめ

CAN通信を無線化するには、CAN通信とIP通信の違いを考慮した無線機器を選択し、同時にモバイル端末アプリケーション側でも安定通信を実現する仕組みを設けるといった全体最適が必要になります。また、利用するアプリケーションに適した無線方式を選択することも重要です。

今後モバイル通信領域では高速・低遅延通信を特長とする5Gサービスの開始が予定されていますが、利用可能な地域やその品質レベル・通信費用など課題も多く残っており、普及するまでにまだ時間がかかると予想されます。それらを踏まえ、車両という屋外で利用される製品・アプリケーションに応じて、無線LAN・Bluetooth®・モバイル(LTE/5G)を組み合わせて利用するアプローチが引き続き主流となると思われます。

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