水力発電所の地下点検作業で無線LANによる遠隔監視を実現

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水力発電所の地下点検作業で無線LANによる遠隔監視を実現

関西電力株式会社 様

採用・導入製品:
(1センターあたり:BR-300AN×1台、BR-400AN×8台)

導入場所    :    水力発電所(木曽水力センターをはじめ計9か所)
導入時期    :    2021年2月

世界的に加速しているゼロカーボン化のなかで、改めて注目を集めている「再生可能エネルギー」。発電時にCO2を排出しない地球資源を活用したクリーンなエネルギーとして知られ、日本でもこの再生可能エネルギーを主力電源化していこうとさまざまな取り組みが行われています。
この大きな目標達成に向けて積極果敢に挑戦しているのが、「ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー」である関西電力(以下、同社)です。同社は、安全で安定したエネルギーの自給率向上を目指すとともに、地球温暖化への対応として、グループ全体でCO2排出を2050年までにゼロにする「ゼロカーボンビジョン2050」を宣言し、ゼロカーボン社会の実現に向けた再生可能エネルギー開発に取り組んでいます。

今回、同社が取り組む再生可能エネルギー事業の中でもNo.1の電源構成比※1を誇る「水力発電」の施設内において、サイレックスの無線LANブリッジ「BR-300AN」とメッシュネットワークシステム「BR-400AN」が採用されました。LTEなどの通信回線が届かない地下エリアで、安心・安全を維持しつつ、無線LAN環境の導入により点検作業の「効率化」を図っています。

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【導入前の課題】
発電所内には通信回線が無く、
地下点検作業の進捗把握が困難

水力発電所の多くは山間部にあり、その大部分は無人発電所です。水力発電を安全・安定的に稼働させるためには巡視や設備点検が不可欠で、定期的に巡視や設備工事で社員や協力会社の作業員が水力発電所に入所します。しかし、発電所内には通信インフラ環境が整備途上であり、作業員は固定電話や有線LANで繋がれたPCで水力センターにいる所員と連絡を取り合う状況でした。

写真:山口発電所

写真:木曽水力センター

地下式発電所の場合、水力発電の要となる水車や発電機といった設備は地下に設置されています。地下エリアでは携帯電話のLTE通信も届かず、遠隔地にいる水力センターの所員は発電所地下現場での点検作業の状況を見ることはできないため、実際どのように点検工程が進んでいるかを確認する術はありませんでした。
水車・発電機の分解点検となると、数か月にも及ぶ大規模工事となります。巨大な水車・発電機を部品単位まで分解し、点検・検査・修理を行い、再度組み立て直すというもので、この期間中は発電も停止させています。

写真: 地下現場での発電機分解の様子

【導入後の効果】
遠隔監視による地下現場の見える化で、
作業状況の把握ができ保安力も向上

LTE通信だけでは不十分だった発電所内の通信インフラを整備するため、サイレックスの無線LAN機器である「BR-300AN」「BR-400AN」を導入し、ウェブカメラと組み合わせることで地下現場の見える化を実現しました。

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図のように、水車と発電機は上下に直結しているため、分解点検の際は上にある発電機から順番に取り外し、その次に水車がある下のフロアに移動して分解するという流れになります。そのため、まずは作業するフロアに「BR-400AN」とウェブカメラを設置し、フロアを移動するごとに作業員と一緒に機器類も移動させる必要があったため、「BR-400AN」の手軽に持ち運べる「可搬性」は重要な導入ポイントとなりました。

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無線インフラ環境の導入により、発電所内での地下作業の進捗状況を離れた場所にある水力センターでもウェブカメラ映像からリアルタイムに確認できるようになりました。発電を停止させる必要のある水車・発電機の分解点検をリアルタイムで状況確認できることにより、工程に影響のあるような遅れがある場合の早期発見・計画見直しすることができ、発電停止時間の延長防止につながります。さらに、進捗チェックだけでなく、現場の作業員が不安全行動をしていれば、すぐに連絡をして注意喚起できるため、安全管理レベルの向上にもつながっています。

【導入後の効果】
安全パトロールも遠隔実施が可能に

関西電力では、作業者の安全を確保する取り組みとして、協力会社とともに「安全パトロール」を実施しています。コロナ禍以前は関係者が現場に集まり安全に作業できているかを確認していましたが、コロナ禍の行動制限下では、導入した無線インフラとウェアラブルカメラを活用した遠隔での安全パトロールを実施。現場にいる立会人がウェアラブルカメラを装着し、大阪の本社や木曽水力センターへインターネット経由で映像を共有し、遠隔からでも実施の有効性を確認できました。

<導入後の効果>
・地下現場での作業状況のリアルタイム確認による発電停止時間の延長防止
・不安全行動の注意喚起で安全管理レベルの向上
・遠隔での「安全パトロール」実施

将来的に、経済産業省が策定したガイドライン※2のように、水力発電所におけるICT活用がより一層進み「スマート保全」が確立すれば、「安全」で「効率的」な点検作業により発電停止期間も短縮でき、発電量のアップにもつながることが期待されています。

【お客様の声】
小型軽量により別の発電所でも有効活用、
コストメリットも大きい

今回導入した無線インフラシステムは水力発電所内に常設している訳ではなく、長期の設備工事の期間だけ一時的に設置し、完了後は取り外してまた別の発電所で活用しています。 一部有線LANケーブルを敷設しなければならず、そこが一番大変な作業ですが、全てのフロアに有線LANを敷設するよりは無線LANシステムを導入する方が時間短縮につながっています。

「発電所が異なっても同じ構成で利用でき、機器の設定もほとんど変更する必要がないため、作業員数名で1日あれば設定から設置まで無線インフラ環境を構築できます。あらかじめ設定を済ませておけば、あとは電源を入れて最適な通信速度が出る場所に設置するだけでいいのは便利ですね。」と関西電力株式会社の小山様。

また、1拠点で9台(BR-300AN×1台、BR-400AN×8台)という構成のため、拠点数が多いと導入台数も多くなり、その分コストにも比例してきますが、サイレックスの無線LAN製品はリーズナブルな価格でセットアップも簡単なため、導入ハードルが低く、非常にコストメリットが大きかったです。

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関西電力株式会社
再生可能エネルギー事業本部 木曽水力センター
小山 三智雄 様

※1関西電力、電源構成およびCO2排出係数
※2経済産業省、水力発電設備における保安管理業務のスマート化技術導入ガイドライン 令和4年4月

 

採用製品

参考資料・ウェブサイト

<日本の電源構成:2019年vs 2030年>
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2021/005/#section2 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/community/dl/20220316_fit.pdf

<再生可能エネルギー関連>
https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckeconomy/20210817-OYT8T50047/

<関電:再生可能エネルギーの取り組み、電源構成比>
https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/newenergy/challenge/
https://www.kepco.co.jp/corporate/profile/outline.html

<関電:ゼロカーボンビジョン2050>
https://www.kepco.co.jp/sustainability/environment/zerocarbon/roadmap.html

<水力発電所における保全管理業務のスマート化ガイドライン>
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2022/04/20220428-1.pdf

<点検の様子>
https://ja-jp.facebook.com/kanden.jp/posts/1778122485550410/
https://twitter.com/kanden_official/status/1553289597278633992
https://ja-jp.facebook.com/kanden.jp/posts/1996588413703815/

<安全パトロール>
https://www.facebook.com/kanden.jp/posts/1635467639815896/

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