1km離れてもつながるWi-Fi

1km離れてもつながるWi-Fi

IEEE 802.11ahは、日本で本格的に利用可能になった新無線規格です。920MHz帯を使い、免許不要で屋外使用も可能。遠距離性能から広大な敷地の工場やプラントなどでの活用が期待されています。

1km先まで通信できる新しいWi-Fi規格の「IEEE 802.11ah」。別名で「Wi-Fi HaLow™(ヘイロー)」や「S1G(Sub 1GHz)」とも呼ばれます。Wi-Fiといえば新しく6GHz帯を使うWi-Fi 6Eの高速通信性能が注目されていますが、IEEE 802.11ahも同じ2022年9月に日本で本格的に利用可能になったばかりの規格です。920MHz帯を使い、免許不要で屋外使用も可能です。遠距離性能から広大な敷地の工場やプラントなどでの活用が期待されています。

長距離Wi-Fiソリューション

IEEE 802.11ahは、920MHz通信の長所を取り込んだWi-Fi

920MHz帯を使うIEEE 802.11ahでは、半径1kmといわれる長距離でのデータ通信、映像伝送ができる通信速度、ネットワーク層のデータ通信はこれまでのWi-Fiと高い互換性を持ち、同様の使い勝手で通信できるといった特徴があり、「Wi-Fiと920MHz通信のいいとこ取り」といわれることもあります。

IEEE 802.11ahは920MHz通信の長所を取り込んだWi-Fi

サイレックスでは、2022年11月に11ahに対応した無線LANモジュール、親機となる無線LANアクセスポイント、子機となる無線LANブリッジを出荷開始しており、いますぐに使えるIEEE 802.11ah対応製品を取りそろえています。

遠距離通信が必要なところに、契約や許認可などの必要もなく、IEEE 802.11ahの機器を用意して設置するだけですぐに通信を開始することができます。
サイレックスは、この機器を使って実際に屋外で1km離れた場所と映像のやりとりができることを確認しているほか、見通しの悪い屋外でも600mの距離で映像伝送に成功するなど、実験結果を公表しています。

実地テスト結果(一報)

ただし課題もあります。IEEE 802.11ahの通信において、日本では電波の送信時間が1時間当たり累計360秒(Duty比10%)までと規制されています。

Wi-Fiだから機器を置き換えれば簡単に使えるIEEE 802.11ah

IEEE 802.11ahの用途としては、工場、物流倉庫、そしてプラントなど広い敷地内で計測数値や監視映像などを送信することが挙げられます。作業員が直接、メーターの数値を読みにいかなければならなかったところを、ネットワークカメラを使って遠隔確認すれば、大幅な省力化が可能です。このほか農業、ショッピングモール、などさまざまな場所で応用が利くのではないかとお客様からフィードバックをいただいています。

従来のWi-Fi規格では1kmという距離で通信できる機器はなく、特別なソリューションを用意しなければなりませんでしたが、IEEE 802.11ah対応の機器を使えば、市販のLAN対応のカメラなどが、設定次第ではそのまま使える場合があります。しかも、LANの延長として使えるため、途中にWi-Fiのアクセスポイントを介せば、Wi-Fi対応のタブレットやPCなどから直接、離れた場所にある機器と通信することも可能です。

ただし、前述の通り、日本国内ではDuty比10%制限があり、上限に達した場合は、法律上、一定時間の送信を控える必要があります。電波的にクリーン、かつ、見通しが良い環境であれば、1Mbps程度なら連続通信しても上限に達しにくいとはいえ、現在のLAN上を流れるデータは大きくなりがちで、通信量の制御をしなければ、あっという間に上限に達してしまうことがあります。そして、遠くに飛んでしまうゆえに他の電波との干渉を避けなければならないという課題があるのです。

920MHz帯のDuty比10%制限について

そのため、対策は必須です。サイレックスのIEEE 802.11ah製品では、LANに流れるパケットを無線に置き換えて電波で飛ばすだけではありません。Duty比10%制限は特定の端末が無線帯域を占有することへの対策でもあるため、データを流しすぎて上限に達してしまった場合には、自動的に一定時間、送信を控え、法令違反のない運用をします。これは当然の機能として搭載しています。

遠隔監視をする場合に通信の容量を抑えるためには、要件を満たしながら、どこまで画像の解像度やフレームレートを落とすか、どんな圧縮率の高い映像形式を選ぶか、ということも重要になってきます。

Duty比10%の制限とサイレックスならではの工夫

2022年9月に、利用できる帯域幅として2MHz幅と4MHz幅が追加されたため、Duty比10%という制限はありますが、それでも電波がクリーンな環境であれば1Mbps程度の通信は連続して確保できます。電波の送信間隔を間引きながら動画の伝送をすることも不可能ではありません。データ量の少ないIoT機器や、解像度やコマ数を落とした監視映像ならばそのままでも利用は可能です。

日本国内のIEEE802.11ahスペック

Duty比10%は制限ではありますが、通信するデータの容量などを十分に把握していれば、あまりDuty比10%ということを気にせずに使うこともできます。これらについては、実際の運用ノウハウが重要になります。

Duty比10%は各機器に対して適用される規制です。例えば、アクセスポイント1台に対して、多くの子機が通信する場合、アクセスポイント1台の送信頻度が多くなり、Duty比10%の制限にかかりやすくなります。

このような場合、アクセスポイント数を2倍にすればアクセスポイント側の送信できる(合計の)時間も2倍になります。機器の数と配置や無線のチャネルを最適化していくことで、必要な通信帯域を確保できる可能性が高まってきます。

これも、やみくもにアクセスポイントを増やせばよいということにはなりません。早くからIEEE 802.11ahに携わってきたサイレックスならではのノウハウが生かせるところであり、当社にご相談いただければ、お客様はこのノウハウを活用いただけます。

920MHz帯は良く飛ぶが、飛びすぎることもある

一般的には周波数が高いほど電波が回り込みにくくなり、遮蔽物に弱くなります。サブギガヘルツ帯と呼ばれる920MHz帯では、これまでWi-Fiで主に使われてきた2.4GHz帯、5GHz帯よりも周波数が低いため、遮蔽物の陰となる場所への届きやすさや長距離伝送が期待されます。当社の実験の通り、見通しが悪い状態でも600mの距離で映像伝送が可能となれば、今後、さまざまな活用法が考えられます。

しかし、電波がよく飛び、長距離通信ができることはメリットばかりではありません。飛びすぎる、届きやすいという性質により、必要のないところや意図しなかったところまで電波が届き、セキュリティのリスクが高まります。そして、利用者が多くなれば混信の恐れも高くなります。到達範囲が広いがゆえのデメリットと言えます。

IEEE 802.11ahのセキュリティは最新のWPA3に対応していますので、安心しで導入いただけます。さらに必要のないところまで電波を飛ばさないために、サイレックスの機器には送信出力を調整する機能を搭載しています。 使おうとしているチャネルがすでに使用されていないかを調べ、空いている最適なチャネルを選ぶサーベイ機能も備えています。

また、920MHz帯を使う通信規格はIEEE 802.11ahだけではありません。LoRa WAN、Sigfox、Wi-SUNなどは、すでに利用されています。利用が増えてくれば、これらとの電波の取り合いによる実質的な速度低下や、混信による到達距離の減少なども予想されますし、既存の規格においても、より大きな容量の情報をやり取りするようになり、送信時間が増えてくる恐れもあります。多分に環境に依存することがあるため、まずサイレックスにご相談ください。

アメリカではIEEE 802.11ahにDuty制限はなく、出力も大きい

サイレックスでは、国内だけでなく海外でもIEEE 802.11ah製品を展開しています。なかでも、日本に先行して2020年に販売開始したアメリカでは、Duty比10%という制約はなく連続送信が可能です。しかも、電波の出力も日本よりも大出力であることが許されています。

アメリカをはじめとしてIEEE 802.11ahを各国で展開してきたサイレックスには、Duty比制限にかからないようにするだけでなく、混信や飛びすぎを防ぐ、という課題にこれまでも対応してきた経験と実績があります。

サイレックスの11ahの特長

日本ではDuty比10%があるとしても、さまざまな用途で920MHz帯の利用が増えた場合に、すべての通信が収まりきらず、混信という問題が出てくると推測されます。まさにそのとき、一足先にアメリカで経験を積み蓄積したノウハウが生きてくると言えます。

そして、世界の国や地域によって、Duty比はさまざまで、アメリカのように制限のないところもあれば、日本のように10%や、さらに厳しいところもあります。今後、世界各地に出荷する製品に統一してIEEE 802.11ahを搭載するようなことがあれば、世界で出荷経験のあるサイレックスであれば、モジュールの出荷先ごとの調整などにも対応できます。

今後発生する課題は、チップベンダーと協力して解決

サイレックスには、これまでWi-Fi製品を展開する中でチップベンダーと直接話し合い、安定して有効な製品をまとめあげた実績があります。すでにIEEE 802.11ahにおいても、電波の出力など日本の法規制に対応するための協力を行っています。

例えば、最近解決した課題として、このような事例がありました。
LANにはさまざまなブロードキャストパケットが流れていますが、その中の不必要なブロードキャストパケットがIEEE 802.11ahのアクセスポイントに流れてしまい、あっという間に送信制限の上限に達して、必要な通信がしにくくなったという事例です。

これに対しサイレックスでは、不要なパケットで送信時間を消費しないようなチューニングも施すことで解決しました。これも、先行してIEEE 802.11ahに取り組むなかで得たノウハウのひとつです。
Duty比10%という運用についても、利便性向上に向けた提案をチップベンダーに行い、機能の搭載や仕様変更のきっかけになるなどの実績があります。

新たな機能の搭載や仕様の変更があれば、そのチップを採用するすべてのメーカーの機器で利用することができますが、なぜその機能や変更が必要になったかという背景と、詳細な活用法は、提案した会社だけが深く知るところであり、それらをより有効に生かすことができるのです。
また、同時に実際にIEEE 802.11ahを経由してデータ通信を行うことが想定されるカメラやIoT機器のメーカーに対して、IEEE 802.11ahで快適に通信できるデータの最適化の協力ができるのも、初期からIEEE 802.11ahをてがけてきたサイレックスならではと言えるでしょう。

IEEE 802.11ahを広め、活用していくために

IEEE 802.11ahは、まさにこれから普及をする段階ですので、発展にはメーカー同士や関連省庁などとの連携が不可欠です。
サイレックスでは、ネットワークカメラメーカーなどと協力して、より効率的で利便性の高いIEEE 802.11ahの活用法の検討を進めていますが、全体の課題としてDuty比10%が今後も適切なのかどうかの検討や、新しい周波数帯への拡張とそこでの適切なDuty比や運用方法など、IEEE 802.11ahに関わるベンダーが協力して対応していかなければならない課題もあります。

サイレックスは「802.11ah推進協議会(AHPC)」に参画し、先行して製品化した優位性や知見を生かしながら、IEEE 802.11ahの普及と活用拡大に努めています。

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