あなたのユースケースにぴったりのエッジAIシナリオは?
エッジAIの展開シナリオ
「エッジAI」という用語は、さまざまな種類の製品に対して使用されます。それぞれの機器にエッジAIを活用する際、最適なシステムアーキテクチャは、要求される精度、AI推論のレイテンシ、ネットワークの可用性、各デバイスの消費電力、デバイスコストなど、多くの要因に左右されます。
■AI推論の展開シナリオ1:エッジデバイス
リモートカメラ、センサ、個別のロボット、ハンドヘルドデバイスなど
■AI推論の展開シナリオ2:複数の機器を管理する集中制御装置
オートメーションシステムの集中型コントローラユニット、マルチ入力ビデオレコーダなど
■AI推論の展開シナリオ3:オンプレミスエッジコンピュータ
オンプレミスサーバ
1. エッジデバイス
例:リモートカメラ、センサ、個別ロボット、ハンドヘルドデバイスなど
エッジデバイス(エッジ=端、つまり、一番端に位置する端末)上でAI推論を行うと、応答時間が速く、ネットワークの接続状況や通信の安定性に左右されません。ネットワークに接続されている場合でも、送信するデータ量が少ないため、ネットワーク全体のパフォーマンスへの影響は最小限です。そのため、他のネットワーク通信を必要とするプロセスに悪影響を与える可能性も低くなります。 一方で、AI推論に対応したSoCやMCUは非対応のものに比べて消費電力が多く、コントローラやシステム全体のコストも高くなる傾向があります。
したがって、この方式は以下のようなデバイスに適しています:
- 常に安定して動作する必要がある
- 他のネットワーク機器の動作に影響を与えてはいけない
- リアルタイムでの応答が求められる
- 性能向上のための追加コストを許容できる
このようなデバイスには、NPUやアクセラレータを統合したSoCが最適です。AIモデルのデプロイやAIによるイベント検知・アラートを管理するため、これらのデバイスはネットワーク機能を備えることが一般的です。システムを安定して運用するためには、信頼性の高い産業グレードの接続性が不可欠です。
■ユースケース例
- ドローン
- 搬送ロボット
- 監視カメラ
- 外観検査カメラ
- カメラ付きハンドヘルド機器、内視鏡
- AGV(無人搬送車)
- AMR(自律移動ロボット)
- 患者モニタリング
2. 複数の機器を管理する集中制御装置
例:自動化システムのコントローラ、多入力ビデオレコーダなど
この装置の代表例は、オートメーションシステムや予知保全システムの一部として使用されるコントローラです。小型カメラ、センサ、モータ制御機器などのエンドデバイスが、有線通信プロトコルや無線ネットワークを介してAIコントローラと常時やり取りを行います。 これらのエンドデバイスは一般的に小型・低消費電力・低コストであるため、AI推論機能を搭載するのは難しくなります。特に多数のエンドデバイスが軽量なタスクを行う場合はその傾向が顕著で、こうしたケースでは、エンドデバイスから送られるデータやそれらデータに対しての制御は集中制御装置で処理する方が効率的です。このような制御装置は産業用コンピュータやデスクトップPCに近い構成を取ることがあります。
SoCの選定はシステム要件に大きく依存します。したがって、あるデバイスにとって最適なアーキテクチャを一概に言うことはできません。判断の際には、次のような要素が考慮されます。
- 処理すべきデータ量
- 監視・制御するデバイスの数
- 各接続デバイスとのデータ交換頻度
- 各デバイスからの推論結果に応答するまでの遅延(レイテンシ)
コントローラは有線または無線ネットワークを介して各デバイスと頻繁にデータをやり取りします。この接続性は、信頼性が高く、堅牢性が求められます。ネットワーク切断によるシステム障害を防ぐためには、冗長化も考慮すべきです。さらに、リアルタイムのオートメーションシステムを支えるうえで、レイテンシやスループットといった性能も極めて重要です。
■ユースケース例
- プロセスオートメーション用の産業用コンピュータ
- AI対応PLC
- AOI(自動光学検査)システム
- IoTゲートウェイ
- 外科医支援システム、ガイド付き手術システム
3. オンプレミスのエッジコンピュータ

AI推論に使用するデータ量が大きく、AIモデルのパラメータ数が多く、高精度が求められ、データプライバシが重要で、レイテンシが優先事項でない場合には、サーバのようなオンプレミスのエッジコンピュータが最適です。
一般的に、サーバアーキテクチャは必要に応じて拡張でき、専用のGPUを搭載できるため、負荷の大きいAI推論タスクを実行することが可能です。サーバを導入しない場合、中小規模の事業者の場合はデスクトップPCを利用することもでき、その場合でも高性能CPUとGPUの組み合わせが有効です。
■ユースケース例
- AI支援による医用画像診断
- ゲノム解析
- 創薬初期段階の研究
- 生成AIやエージェント型AIをオンプレミスのサーバ上で稼働させ、企業のワークフローを支援
まとめ


ライタープロフィール
神代 悟
プロダクトマネージメントを担当しています。 困ったときはサイレックスに聞いてみようと思っていただけるような製品、サービスを提供できるよう、最新技術を学び、どう取り込むと課題を解決できそうかを考えることに楽しみを感じています。
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エッジAIとは
エッジAIとは――低遅延・省電力・高セキュリティ。産業現場で求められるAIの形がここにあります。クラウドに頼らず、デバイスそのものがAIを実行する ―― それが「エッジAI」です。
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AI推論はクラウドからデバイスへ オンデバイスAIの未来
AI推論は今、大きな転換期を迎えています。クラウドベースのAIから、エッジ(デバイス)上でのAI推論へと移行が進んでいるのです。ハードウェア性能の向上と、より小型で高精度なAIモデルの登場により、オンデバイスAIが注目を集めています。
では、なぜこの移行が起きているのでしょうか?そして、組み込み型AIシステムを設計する際に考慮すべきポイントとは?