EUの新しいサイバーセキュリティ規則がワイヤレス機器にもたらす影響と、サイレックスの先進的な取り組み
プリンタから医療機器に至るまで、あらゆる製品がインターネットにつながる現代において、デジタル製品のセキュリティ確保はもはや選択肢ではなく、法的に課された責務として捉えるべきです。特に欧州連合(EU)はこの分野で世界をリードしており、製造業者がEU市場で製品を販売し続けるためには、新たなサイバーセキュリティ規則への対応が不可欠となっています。
サイレックスでは、安全かつ信頼性の高い接続ソリューションを提供するため、これらの新しい規則に準拠した製品開発を進めています。本記事では、無線機器指令(RED)に基づく新しいサイバーセキュリティ規格「EN 18031-1」の概要と、それに対するサイレックスの取り組みをご紹介します。
EN 18031-1とは?なぜ重要なのか?
EN 18031-1は、2025年8月1日から施行されるEUのサイバーセキュリティ規格で、無線機器指令(RED)の一部として適用されます。スマートホーム機器から産業用IoT機器まで、インターネットに接続されるすべてのワイヤレス製品が対象となり、以下の要件を満たす必要があります。
- ネットワークのセキュリティを損なわないこと
- 個人情報(氏名、位置情報、利用履歴など)を保護すること
- オンライン決済や仮想通貨を扱う場合、金融詐欺を防ぐ機能を備えること
つまり、セキュリティ機能は後付けではなく、製品設計の初期段階から組み込まれていなければなりません。規格に準拠していない製品は、EU市場での販売が禁止されます。
なぜ今、対応が求められているのか?
ネットワークが標準化された環境では、わずかな脆弱性が大きな被害につながる可能性があります。ワイヤレス機器のセキュリティが不十分だと、以下のようなリスクが生じます。
- 家庭のネットワークの乗っ取り
- 個人情報の漏洩
- 企業活動の妨害
- 脆弱な機器を利用した大規模なサイバー攻撃
こうしたリスクを防ぐため、EUは法的拘束力のある規則としてEN 18031-1を導入しました。これは、任意のセキュリティ対策とは異なり、遵守が義務づけられたものです。
サイレックスのコンプライアンス対応とリーダーシップ
サイレックスは、「安全な接続性こそが信頼できる技術の基盤である」との信念のもと、EN 18031-1をはじめとする各種サイバーセキュリティ規格への対応を進めています。以下は、当社が製品に導入している主なセキュリティ対策です。
- HTTPSによる安全なウェブアクセス
設定ページへのアクセスは暗号化されたHTTPSのみを許可し、旧式のHTTPはデフォルトで無効化。 - パスワード設定の必須化
初期状態での使用を防ぐため、パスワードが設定されるまで製品は動作しません。 - 設定ファイルの暗号化
インポート・エクスポートされる設定データはすべて暗号化。 - ブルートフォース攻撃対策
自動化されたパスワード推測攻撃を防止する機能を搭載。 - ファームウェアの保護
リバースエンジニアリングを困難にする難読化と、デジタル署名による真正性の確認。 - 柔軟なサービス制御
管理者がサービスやプロトコルを制御可能。 - セキュリティ機能の透明化
暗号化方式や鍵強度などの情報をマニュアルに明記。 - 既知の脆弱性への対応
SSLv3、TLS1.1、WEP、OPEN Wi-Fiなどの旧技術を排除またはリスク軽減。制限がある場合は詳細なドキュメントとリスク評価を提供。
お客様へのメリット
EN 18031-1の導入は、IT管理者から一般ユーザまで、すべての方にとってセキュリティ向上の恩恵をもたらします。一方で、製造業者にとっては大きな挑戦でもあります。サイレックスは、この課題に対して万全の準備を整えています。
最後に
EN 18031-1のような規制は、業界のあり方を根本から変えつつあります。サイレックスは、その最前線で変革を牽引していることを誇りに思います。私たちは、セキュリティのトレンドに従うだけでなく、それを形づくる存在でありたいと考えています。
お客様が常に安全かつ規制に準拠した環境を維持できるよう、サイレックスは今後も全力でサポートしてまいります。
ライタープロフィール
木地 隆浩
15年間ソフトウェア開発に携わった後、現在は無線LANモジュールの製品企画を担当しています。技術の知識と現場感覚を活かしながら、最新のトレンドも取り入れて、お客様の「困った」を一緒に考え、解決へ導く提案を心がけています。話しやすさと信頼感を大切に、日々取り組んでいます。
関連製品
関連情報