Wireless・のおと
サイレックスの無線LAN 開発者が語る、無線技術についてや製品開発の秘話、技術者向け情報、新しく興味深い話題、サイレックスが提供するサービスや現状などの話題などを配信していきます。
SX-580 WiFi 電気スタンド製作記(1)
ここのところ無線規格の話ばかり続いていたので、久しぶりに(というかこのブログ始めてかも)手を動かして何か作る記事を書いてみます。弊社がリリースしている SX-580-2700DM SDK を用いて、「iPhone から WiFi で操作できる電気スタンド」を作ってみよう、という企画です。第一回は SX-580 SDK 開発環境のセットアップ編です。
SX-580-2700DM と SDK について
SX-580-2700DM は弊社のインテリジェント無線モジュール「SX-580」の開発キットバージョンです。標準版 SX-580 と SX-580-2700DM の違いはフラッシュメモリが 64Mbit (8MByte) から 256MBit (32MByte) に拡大されていることで、これにより rootfs 領域の余裕を大きく取ってユーザープログラミングの柔軟性を向上しています。フラッシュメモリ以外の仕様は略同一であり、列挙すると下記のようになっています。
SX-580 SDK(正式な製品型番は「SX-IMAPP-SDK」) は SX-580-2700DM 上で動作する Linux の BSP (Board Support Package) に相当するものです。基本的にはブートーローダ(U-Boot)、Linux カーネル、Linux ファイルシステム(rootfs)を生成するためのソースコードとビルド環境、そして無線 LAN のドライバとターゲットファームウェア(バイナリ供給、ソースコード非公開)から構成されています。ビルド環境はシンプルな Makefile とスクリプトによるもので、Eclipse のような GUI 統合環境にはなっていませんし、LTIB や YOCTO のようなパッケージマネージャも持っていません。原始的とも言えますし、シンプルなだけに直球的でわかりやすいとも言えます。
SX-580 SDK は Linux 上で動作します。Windows 上で SX-580 SDK の開発を行う場合は仮想マシン(Virtual Machine)上に Linux をインストーhttp://www.silex.jp/products/module_evk/sximappsdk.htmlルし、その上に SX-580 SDK をインストールすることになります。弊社からは Ubuntu 9.04(April 2009) の VM イメージが推奨環境として提供されています。
Ubuntu のデフォルトインストール状態では開発ツールが殆ど入っていないので、クリーンインストールした場合は apt-get で色んなものを取って来なければなりませんが、silex から配布されている VM イメージでは SX-580 のビルドに必要なものは一通りインストールされた状態になっています。
Windows 上に VM 環境を作成する
Windows 上に仮想マシン環境を作成するため、まずは VM ソフトウェアをインストールします。SX-580 SDK (1.0.1) のデベロッパーガイドには VMWare 社の VMWare player を用いた仮想マシン環境作成の手順が掲載されていますが、VMWare player の無償版配布版は「評価用」とされており商業利用はライセンス契約に抵触します。今回はそういう制限のない Oracle 社の VirtualBox を使用しました。今回使用したバージョンは 4.3.14 です。
まず http://www.virtualbox.org から Windows x86 用の VirtualBox をダウンロード・インストールします。設定は基本デフォルト、途中で何度か聞いてくるダイアログは「OK」「Next」連打で進めましょう。
VirtualBox ダウンロードサイト。(表示)
VirtualBox インストーラの実行。(表示)
「Next」で先に進めます。(表示)
デフォルト設定で「Next」。(表示)
デフォルト設定で「Next」。(表示)
警告を確認して「Yes」。(表示)
「Install」 (表示)
インストール開始。(表示)
何度かこんな警告が出ますが、「Continue」します。(表示)
インストール完了。(表示)
VirtualBox 上に仮想 Ubuntu マシンを作成する
インストールを終えて VirtualBox を起動すると画面 のようになります。ここから「New」ボタンを押して Linux VM を作成します。仮想メモリはとりあえず 1MByte、仮想ディスクの設定は「無し」で進めて、一旦 VM が出来てから設定を変更します。
VirtualBox 初期画面から「New」選択。(表示)
「Linux」「Ubunut (32bi)」を選択し「Next」。(表示)
メモリは 1024KByte を設定して「Next」。(表示)
仮想ディスクは無しで「Create」。(表示)
警告を確認して「Continue」。(表示)
仮想マシン作成状態。(表示)
まず silex が配布している自己解凍ファイル Ubuntu_VM.exe を実行して Ubuntu_VM.vmdk を作成します。展開先は何処でも良いのですが、私はバックアップ管理の利便上、VM 管理ファイルと同じディレクトリ(c:\users\sasaki\VirtualBox VMs\SX580SDK)に置いています。
Ubuntu_VM.exe 自己展開中。(表示)
VM の「設定」ボタンを押して設定パネルを開きます。左のタブから「ストレージ」を選択し、IDE コントローラ横の「+」ボタンをクリックし、「既存のディスクを追加」で先ほどの Ubuntu_VM.vmdk を選択します。なおここでは SX-580SDK ドキュメントと既述を合わせるため、ファイル名を「Ubuntu.vmdk」に変更してあります。
仮想マシンの設定から「ストレージ」選択。(表示)
IDE ディスクを追加する。(表示)
展開した Ubuntu VM イメージを選択。(表示)
仮想ディスク選択状態。(表示)
仮想ディスクの次にネットワークの設定を変更します。左のタブから「ネットワーク」を選択、デフォルトで「NAT」となっている設定を「Bridge」に 変更します。NAT では VM 内から外のアクセスはできても外から VM へのアクセスができない(難しい)ので、VM を TFTP サーバとして使うためには Bridge のほうが都合が良いからです。
仮想マシンの設定から「ネットワーク」選択。(表示)
設定を「NAT」から「Bridge」に変更。(表示)
ついでに VM とホスト PC のファイル交換用に「Shared Folders」を設定しておきます。これを設定しなかった場合、VM とホスト PC の間でファイルを交換するためには SCP のようなネットワーク経由のファイル転送をせねばなりません。共有フォルダも何処でも良いのですが、私は C:\temp\share を指定しています。
仮想マシンの設定から「共有フォルダ」選択。(表示)
共有フォルダの選択。(表示)
共有フォルダの選択。(表示)
共有フォルダ選択状態(Auto-mount 設定)。(表示)
共有フォルダ設定状態。(表示)
仮想 Ubuntu マシンを起動・設定する
必要な設定を行った VM の状態を示します。これを選択して「Start」を押せば仮想マシンが始動し、Ubuntu 9.04 (April 2009) が起動するはずです。ユーザ名・パスワードは「sxdevel」です。
VM の設定状態。(表示)
VM 起動しログイン状態。(表示)
Ubuntu にログインした状態。(表示)
silex から提供している Ubuntu の VM イメージはデフォルトで日本語 106 JIS 配列キーボードが設定されています。私は英語 104 US 配列を使用しているので、System->Preference->Keyboard を選択して設定を変更します。キーボードモデルを「Generic 104-PC」に設定、レイアウトの「+Add...」をクリックして「English-USA」を追加、Layout のリストボックス内でドラッグ&ドロップして「USA」を上に移動し「Default」をクリックしておきます。日本語キーボードを使う可能性がない場合 は「Japan」を削除してしまっても良いでしょう。
System->Preference->Keyboard 選択。(表示)
Keyboard Model を変更する。(表示)
"Generic 104-key PC" を選択。(表示)
"+Add" する。(表示)
Selected Layouts: の "+Add" を選択。(表示)
English / USA を選択して "+Add"。(表示)
Selected layouts: 内の USA をドラッグして上に上げる。(表示)
さて VirtualBox には共有フォルダを設定しましたが、そのままでは共有フォルダ機能は使えません。VM 内で動いている仮想マシンに「Guest Additions」機能を追加インストールする必要があります。
まず VirtualBox のメニューから「Device -> Insert Guest Additions CD Image...」を選択し、VM 内に仮想 CD-ROM がマウントされた状態にします。
Device -> Insert Guest Additions CD Image... 選択。(表示)
仮想 CD-ROM がマウントされた状態。(表示)
仮想 CD-ROM の中身。(表示)
ターミナルを開き、root 権限(sudo)で仮想 CD-ROM 内のスクリプト「VBoxLinuxAdditions.run」を実行します。
共有フォルダのインストール開始。(表示)
共有フォルダのインストール終了。(表示)
インストールが終わったら仮想 CD-ROM を Eject します。
仮想 CD-ROM のイジェクト。(表示)
この状態で仮想マシンを再起動すれば、/media/sf_shared に c:\temp\shared の内容が見えているはずです(アクセスには root 権限が必要)。
仮想 Ubuntu マシン上に SX-580 SDK をインストールする
SX-580SDK 開発環境 SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz を共有フォルダに置き、VM 内からコピーして展開します。ここでは $HOME/sx580sdk というディレクトリを作ってからその下で展開しています。
展開すると sx580sdk/snapshot というディレクトリと、SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_images.tar.gz というアーカイブファイル(プリビルドのイメージ)が格納されているはずです。とりあえず SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz はもう必要ないので削除します。cd snapshot して make すれば SX-580SDK のビルド作業が開始されます。一番最初はツールチェイン(クロスコンパイラ)の生成から始めるので何時間もかかります。昼休み前とか終業前にやったほうが良いでしょう。
ビルドが終われば、snapshot/staging/images 下にイメージが生成されているはずです。
このなかで、ターゲット上で更新する必要があるのはルートファイルシステム(rootfs.jffs2) だけです。カーネルイメージ(uImage)は Linux カーネルの設定を変えて再ビルドした場合に更新が必要です。u-boot はよほどの事が無い限り(起動直後のハードウェア設定を変えるとか、Flash メモリのマッピングを切り直すとか)更新する必要はありません。
SX-580DM-2700 に生成イメージをアップロードする
ターゲットへのイメージアップロードは U-Boot から TFTP を用いて行います。まずは VM で ifconfig eth0 を実行して VM の IP アドレスを確認してください。ここでは 192.168.5.36 が割付けられています。
uImage と rootfs.jffs2 のファイルを /tftp ディレクトリにコピーします。
SX-580EVK の 9pin D-SUB コネクタ CN6(Ethernet コネクタに一番近いやつ)にクロスケーブルを接続し、115200bps 8bit noparity に設定したターミナルソフト(putty や TeraTerm など)を接続して SX-580 の電源を投入します。起動直後にキー入力すれば自動起動が中断して U-Boot のプロンプト("MX28 U-Boot >")が表示されます。
U-Boot には DHCP が実装されていないので、固定 IP を割り当てなければなりません。何処か空いているアドレスを確保してください。以下の例では 192.168.5.201 を使います。serverip には上で確認した VM のアドレスを設定します。
VM と通信できるかどうか、U-Boot 側から ping を打ってみてください。
U-Boot から "sf probe 2:0" で Flash メモリを認識させたあと、"run update_kernel" と "run update_rootfs" を使ってカーネルと rootfs を更新します。
U-Boot から "boot" コマンドを使ってカーネルを起動します。全てうまく進んでいれば "Starting kernel..." の後に起動メッセージがずらずらと出て、十数秒で「login:」の状態まで進むはずです。
ユーザ名 "root"、パスワードなしでログインできます。
これで SX-580-2700DM のファームウェアを開発できる環境は整いました。次回からいよいよ「iPhone から WiFi で操作できる電気スタンド」を具体的に検討してゆきます。
SX-580-2700DM は弊社のインテリジェント無線モジュール「SX-580」の開発キットバージョンです。標準版 SX-580 と SX-580-2700DM の違いはフラッシュメモリが 64Mbit (8MByte) から 256MBit (32MByte) に拡大されていることで、これにより rootfs 領域の余裕を大きく取ってユーザープログラミングの柔軟性を向上しています。フラッシュメモリ以外の仕様は略同一であり、列挙すると下記のようになっています。
CPU:Freescale i.MX280 ARM926EJ @ 454MHz
RAM:32M x 16bit (64MByte) SDRAM @ 205MHz
ROM:64M(8MByte) or 256MBit(64MByte) SPI Flash @ 80MHz
LAN:1 x 10/100BASE Ethernet
WLAN:SX-SDMAN 1x1 dual-band 802.11n (AR6003)
Bluetooth:SX-SDMAN Bluetooth 4.0+LE (AR3002)
I/F:
3 x UART (1 x console, 2 x data)
2 x USB2.0FS OTG
1 x SPI
1 x I2C
11 x GPIO
SX-580 SDK(正式な製品型番は「SX-IMAPP-SDK」) は SX-580-2700DM 上で動作する Linux の BSP (Board Support Package) に相当するものです。基本的にはブートーローダ(U-Boot)、Linux カーネル、Linux ファイルシステム(rootfs)を生成するためのソースコードとビルド環境、そして無線 LAN のドライバとターゲットファームウェア(バイナリ供給、ソースコード非公開)から構成されています。ビルド環境はシンプルな Makefile とスクリプトによるもので、Eclipse のような GUI 統合環境にはなっていませんし、LTIB や YOCTO のようなパッケージマネージャも持っていません。原始的とも言えますし、シンプルなだけに直球的でわかりやすいとも言えます。
SX-580 SDK は Linux 上で動作します。Windows 上で SX-580 SDK の開発を行う場合は仮想マシン(Virtual Machine)上に Linux をインストーhttp://www.silex.jp/products/module_evk/sximappsdk.htmlルし、その上に SX-580 SDK をインストールすることになります。弊社からは Ubuntu 9.04(April 2009) の VM イメージが推奨環境として提供されています。
Ubuntu のデフォルトインストール状態では開発ツールが殆ど入っていないので、クリーンインストールした場合は apt-get で色んなものを取って来なければなりませんが、silex から配布されている VM イメージでは SX-580 のビルドに必要なものは一通りインストールされた状態になっています。
Windows 上に VM 環境を作成する
Windows 上に仮想マシン環境を作成するため、まずは VM ソフトウェアをインストールします。SX-580 SDK (1.0.1) のデベロッパーガイドには VMWare 社の VMWare player を用いた仮想マシン環境作成の手順が掲載されていますが、VMWare player の無償版配布版は「評価用」とされており商業利用はライセンス契約に抵触します。今回はそういう制限のない Oracle 社の VirtualBox を使用しました。今回使用したバージョンは 4.3.14 です。
まず http://www.virtualbox.org から Windows x86 用の VirtualBox をダウンロード・インストールします。設定は基本デフォルト、途中で何度か聞いてくるダイアログは「OK」「Next」連打で進めましょう。










VirtualBox 上に仮想 Ubuntu マシンを作成する
インストールを終えて VirtualBox を起動すると画面 のようになります。ここから「New」ボタンを押して Linux VM を作成します。仮想メモリはとりあえず 1MByte、仮想ディスクの設定は「無し」で進めて、一旦 VM が出来てから設定を変更します。






まず silex が配布している自己解凍ファイル Ubuntu_VM.exe を実行して Ubuntu_VM.vmdk を作成します。展開先は何処でも良いのですが、私はバックアップ管理の利便上、VM 管理ファイルと同じディレクトリ(c:\users\sasaki\VirtualBox VMs\SX580SDK)に置いています。

VM の「設定」ボタンを押して設定パネルを開きます。左のタブから「ストレージ」を選択し、IDE コントローラ横の「+」ボタンをクリックし、「既存のディスクを追加」で先ほどの Ubuntu_VM.vmdk を選択します。なおここでは SX-580SDK ドキュメントと既述を合わせるため、ファイル名を「Ubuntu.vmdk」に変更してあります。




仮想ディスクの次にネットワークの設定を変更します。左のタブから「ネットワーク」を選択、デフォルトで「NAT」となっている設定を「Bridge」に 変更します。NAT では VM 内から外のアクセスはできても外から VM へのアクセスができない(難しい)ので、VM を TFTP サーバとして使うためには Bridge のほうが都合が良いからです。


ついでに VM とホスト PC のファイル交換用に「Shared Folders」を設定しておきます。これを設定しなかった場合、VM とホスト PC の間でファイルを交換するためには SCP のようなネットワーク経由のファイル転送をせねばなりません。共有フォルダも何処でも良いのですが、私は C:\temp\share を指定しています。





仮想 Ubuntu マシンを起動・設定する
必要な設定を行った VM の状態を示します。これを選択して「Start」を押せば仮想マシンが始動し、Ubuntu 9.04 (April 2009) が起動するはずです。ユーザ名・パスワードは「sxdevel」です。



silex から提供している Ubuntu の VM イメージはデフォルトで日本語 106 JIS 配列キーボードが設定されています。私は英語 104 US 配列を使用しているので、System->Preference->Keyboard を選択して設定を変更します。キーボードモデルを「Generic 104-PC」に設定、レイアウトの「+Add...」をクリックして「English-USA」を追加、Layout のリストボックス内でドラッグ&ドロップして「USA」を上に移動し「Default」をクリックしておきます。日本語キーボードを使う可能性がない場合 は「Japan」を削除してしまっても良いでしょう。







さて VirtualBox には共有フォルダを設定しましたが、そのままでは共有フォルダ機能は使えません。VM 内で動いている仮想マシンに「Guest Additions」機能を追加インストールする必要があります。
まず VirtualBox のメニューから「Device -> Insert Guest Additions CD Image...」を選択し、VM 内に仮想 CD-ROM がマウントされた状態にします。



ターミナルを開き、root 権限(sudo)で仮想 CD-ROM 内のスクリプト「VBoxLinuxAdditions.run」を実行します。


インストールが終わったら仮想 CD-ROM を Eject します。

この状態で仮想マシンを再起動すれば、/media/sf_shared に c:\temp\shared の内容が見えているはずです(アクセスには root 権限が必要)。
仮想 Ubuntu マシン上に SX-580 SDK をインストールする
SX-580SDK 開発環境 SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz を共有フォルダに置き、VM 内からコピーして展開します。ここでは $HOME/sx580sdk というディレクトリを作ってからその下で展開しています。
sxdevel@silex:~$ sudo cp /media/sf_share/SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz .
sxdevel@silex:~$ sudo chown sxdevel SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz
sxdevel@silex:~$ sudo chgrp sxdevel SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz
sxdevel@silex:~$ mkdir sx580sdk
sxdevel@silex:~$ cd sx580sdk
sxdevel@silex:~/sx580sdk$ tar xf ../SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz
展開すると sx580sdk/snapshot というディレクトリと、SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_images.tar.gz というアーカイブファイル(プリビルドのイメージ)が格納されているはずです。とりあえず SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz はもう必要ないので削除します。cd snapshot して make すれば SX-580SDK のビルド作業が開始されます。一番最初はツールチェイン(クロスコンパイラ)の生成から始めるので何時間もかかります。昼休み前とか終業前にやったほうが良いでしょう。
sxdevel@silex:~/sx580sdk$ ls
snapshot SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_images.tar.gz
sxdevel@silex:~/sx580sdk$ rm ../SX-IMAPP-SDK_v1.0.1_source.tar.gz
sxdevel@silex:~/sx580sdk$ cd snapshot
sxdevel@silex:~/sx580sdk/snapshot$ make
ビルドが終われば、snapshot/staging/images 下にイメージが生成されているはずです。
sxdevel@silex:~/sx580sdk/snapshot$ ls staging/images -l
total 7356
-rw-r--r-- 1 sxdevel sxdevel 125024 2014-08-05 20:05 imx28_ivt_uboot.sb
-rw-r--r-- 1 sxdevel sxdevel 3735552 2014-08-05 20:09 rootfs.jffs2
-rwxr-xr-x 1 sxdevel sxdevel 447103 2014-08-05 19:58 u-boot
-rw-r--r-- 1 sxdevel sxdevel 1610744 2014-08-05 19:58 uImage
-rwxr-xr-x 1 sxdevel sxdevel 1610680 2014-08-05 19:58 zImage
このなかで、ターゲット上で更新する必要があるのはルートファイルシステム(rootfs.jffs2) だけです。カーネルイメージ(uImage)は Linux カーネルの設定を変えて再ビルドした場合に更新が必要です。u-boot はよほどの事が無い限り(起動直後のハードウェア設定を変えるとか、Flash メモリのマッピングを切り直すとか)更新する必要はありません。
SX-580DM-2700 に生成イメージをアップロードする
ターゲットへのイメージアップロードは U-Boot から TFTP を用いて行います。まずは VM で ifconfig eth0 を実行して VM の IP アドレスを確認してください。ここでは 192.168.5.36 が割付けられています。
sxdevel@silex:~$ ifconfig eth0
eth0 Link encap:Ethernet HWaddr 08:00:27:b2:92:84
inet addr:192.168.5.36 Bcast:192.168.5.255 Mask:255.255.255.0
inet6 addr: fe80::a00:27ff:feb2:9284/64 Scope:Link
UP BROADCAST RUNNING MULTICAST MTU:1500 Metric:1
RX packets:2665 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
TX packets:139 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
collisions:0 txqueuelen:1000
RX bytes:245622 (245.6 KB) TX bytes:19137 (19.1 KB)
uImage と rootfs.jffs2 のファイルを /tftp ディレクトリにコピーします。
sxdevel@silex:~/sx580sdk/snapshot/staging/images$ cp uImage /tftp
sxdevel@silex:~/sx580sdk/snapshot/staging/images$ cp rootfs.jffs2 /tftp
SX-580EVK の 9pin D-SUB コネクタ CN6(Ethernet コネクタに一番近いやつ)にクロスケーブルを接続し、115200bps 8bit noparity に設定したターミナルソフト(putty や TeraTerm など)を接続して SX-580 の電源を投入します。起動直後にキー入力すれば自動起動が中断して U-Boot のプロンプト("MX28 U-Boot >")が表示されます。
PowerPrep start initialize power...
Configured for 5v only power source. Battery powered operation disabled.
Jan 17 201316:00:23
FRAC 0x92925552
memory type is DDR2
Wait for ddr ready 1power 0x00820616
Frac 0x92925552
start change cpu freq
hbus 0x00000003
cpu 0x00010001
start test memory accress
ddr2 0x40000000
finish simple test
U-Boot 2009.08 (Jan 17 2013 - 15:53:03)
Freescale i.MX28 family
CPU: 454 MHz
BUS: 151 MHz
EMI: 205 MHz
GPMI: 24 MHz
DRAM: 64 MB
In: serial
Out: serial
Err: serial
Linux Kernel Magic Number addr 80000 magic 27051956
Net: FEC0
Hit any key to stop autoboot: 0
MX28 U-Boot >
U-Boot には DHCP が実装されていないので、固定 IP を割り当てなければなりません。何処か空いているアドレスを確保してください。以下の例では 192.168.5.201 を使います。serverip には上で確認した VM のアドレスを設定します。
MX28 U-Boot > setenv ipaddr 192.168.5.201
MX28 U-Boot > setenv serverip 192.168.5.36
VM と通信できるかどうか、U-Boot 側から ping を打ってみてください。
MX28 U-Boot > ping ${serverip}
Using FEC0 device
FEC: Link is down 7809
host 192.168.5.36 is alive
MX28 U-Boot >
U-Boot から "sf probe 2:0" で Flash メモリを認識させたあと、"run update_kernel" と "run update_rootfs" を使ってカーネルと rootfs を更新します。
MX28 U-Boot > sf probe 2:0
32768 KiB S25FL256S_256K at 2:0 is now current device
MX28 U-Boot > run update_kernel
Using FEC0 device
TFTP from server 192.168.5.36; our IP address is 192.168.5.201
Filename 'uImage'.
Load address: 0x42000000
Loading: FEC: Link is down 7809
T #################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#######################################################
done
Bytes transferred = 1610744 (1893f8 hex)
MX28 U-Boot >
MX28 U-Boot > run update_rootfs
Using FEC0 device
TFTP from server 192.168.5.36; our IP address is 192.168.5.201
Filename 'rootfs.jffs2'.
Load address: 0x42000000
Loading: FEC: Link is down 7809
T #################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
#################################################################
###############
done
Bytes transferred = 3735552 (390000 hex)
MX28 U-Boot >
U-Boot から "boot" コマンドを使ってカーネルを起動します。全てうまく進んでいれば "Starting kernel..." の後に起動メッセージがずらずらと出て、十数秒で「login:」の状態まで進むはずです。
MX28 U-Boot > boot
32768 KiB S25FL256S_256K at 2:0 is now current device
## Booting kernel from Legacy Image at 42000000 ...
Image Name: Linux-2.6.35.3-571
Image Type: ARM Linux Kernel Image (uncompressed)
Data Size: 1610680 Bytes = 1.5 MB
Load Address: 40008000
Entry Point: 40008000
Loading Kernel Image ... OK
OK
Starting kernel ...
Uncompressing Linux... done, booting the kernel.
Linux version 2.6.35.3-571 (sxdevel@silex) (gcc version 4.4.6 (Buildroot 2012.02-git) ) #1 PREEMPT Tue Aug 5 19:55:05 PDT 2014
CPU: ARM926EJ-S [41069265] revision 5 (ARMv5TEJ), cr=00053177
CPU: VIVT data cache, VIVT instruction cache
Machine: Silex SX-570/580 board
.
.
.
Welcome to SX-570/580
SXxxxxxx login:
ユーザ名 "root"、パスワードなしでログインできます。
これで SX-580-2700DM のファームウェアを開発できる環境は整いました。次回からいよいよ「iPhone から WiFi で操作できる電気スタンド」を具体的に検討してゆきます。