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Linux Box「LB-100AN」を使ったBLE/IoT Cloud Gateway開発

2017年8月 3日 16:57
製品企画担当
こんにちは。
テクニカルマーケティング担当です。

IoTでのセンサとクラウドの連携は、ヘルスケア、テレマティクス、防災、工場や倉庫などの産業機器分野、家電や消耗品のサービスなどあらゆる分野への展開が注目されています。今回は、サイレックス製品「LB-100AN」を使ったセンサとクラウド連携ソリューションを簡単に開発する方法についてレポートします。
1. 構成
センサ情報の収集と、無線/有線LAN経由でのクラウド連携を行うゲートウェイ装置を実現するためには、下記構成要素が必要となります。

・センサ
・センサ情報収集機能
・ネットワーク・インターネットに接続するための無線/有線LAN
・クラウドに接続するためのゲートウェイ機能
・クラウドサービス

今回、開発機材には、サイレックス製 無線LAN対応Linux Box 『LB-100AN』と市販のBluetooth USBドングル、クラウドサービスには、Kii株式会社クラウドを使用し、BLE Beaconタイプのセンサ情報をクラウド連携させます。

サイレックス製『LB-100AN』は、有線/無線LAN、USB、RS-232Cなどの物理インタフェースを備えた組込みLinuxボードと、ソフトウェアを開発するためのSDKをセットにした、即時量産対応可能な商品です。無線LANモジュールには、産業・医療用とで実績のあるSX-PCEAN2を搭載し、アクセスポイント・ステーション機能、エンタープライズ認証もサポートします。

項目

内容

備考

SoC

Marvell Armada370

800MHz (ARMv7)

ROM

32MB

RAM

128MB

ストレージ

eMMC

MLC 4Gbyte or 擬似SLC 2Gbyte

外部I/F

有線LANGbE対応)

無線LAN IEEE802.11a/b/g/n

USB2.0 Type-A x 1

RS-232C (5pin 外部ポート) x 1

UART (4pin 内部ポート) x 1

無線モジュール:SX-PCEAN2c

アンテナ:内蔵 x

電源供給

5 VDC~24VDC

DCジャック(EIJ-2)

ナイロンコネクタ(Option

LED

3

プッシュボタン

1

外形寸法

100mm x 100mm x 25.5mm

基板のみ:85.6mm x 89mm


クラウドサービスには日本発グローバルクラウドベンダであるKii株式会社のKii Cloudを利用します。Kii Cloudは、Kii 株式会社が提供する MBaaS(Mobile Backend as a Service)/IoTクラウドプラットフォームで、モバイルアプリや IoT ソリューションに必要なサーバ側の機能を、クラウドを使って汎用的な API として提供するサービスです。これにより、サーバ機能の実装や運用を行うことなくサービスを実現でき、短期間・低コストで実現することができます。


2. ゲートウェイ構築
ゲートウェイ実現のために、Bluetooth機能とGateway機能、コンバータ機能をそれぞれ組込みます。
以下、具体的な開発作業について解説していきます。
※LB-100AN SDKの準備に関しては割愛致します。

(ア) Bluetooth機能の組込み
LB-100AN SDKにBluetoothの機能を追加します。

Bluetoothスタックには、BlueZを使用します。BlueZは下記3つのレイヤで構成されており、Bluetooth機器を制御する場合は、アプリケーションから、デーモン、ドライバを経由してコマンド制御、および、結果の取得を行います。

■ アプリケーション:ユーザ空間からのBluetooth機器の設定、制御
■ デーモン:アダプタ設定やサービスの管理。上位アプリとの中継
■ ドライバ:物理層のドライバ。Linux Kernelコードに組込み済み
※Bluetooth USBドングルにはエレコム製(LBT-UAN05C2)を利用しています。

■ ドライバ:Linux開発者にはおなじみの"make menuconfig"コマンドを用い、Bluetoothを有効にします。

blog01.png

■ デーモン、アプリケーション: Buildrootより追加するだけでBlueZのダウンロードからコンパイルまで行われます。

blog02.png

ここまでの作業を行った後、LB-100ANのF/Wを更新するとBluetooth機能が使用可能となります。下記例のように、Bluetoothデーモンを起動し、BLE機器のスキャンを行うと、周辺のBLE機器情報が得られますので、一度、動作確認してください。


<Bluetooth機能の動作確認>
blog03.png
... Bluetoothデーモン起動

... HCITOOLBLE機器をスキャン








(イ) Gateway機能の組込み
次に、Gatewayの機能を実装するために、クラウド通信のアプリケーションと環境を準備します。
準備するものは以下の2つとなります。

■ Gateway Agent
■ Gateway Manager

尚、Kii GatewayクライアントはGo Googleが開発したGo言語で作成されています。Goはコンパイル時に依存関係の解決を行うため、その際に使用するGOPATH. GOROOTの環境変数も別途設定します。

• Go言語コンパイラを取得
• Go言語実行ディレクトリ作成。環境変数を設定

<Go言語環境変数設定例>

blog04.png

また、Kii GatewayではHTTPSを使用するため、開発環境の証明書を後に製品に組込む必要があります。開発環境の証明書を事前に更新しておいてください。

■ Gateway Agent
Kii Cloudと通信を行うためのモジュールです。
Kiiよりバイナリ提供されていますので、ファイルを入手し、Gateway AgentにKii Cloudアプリ情報を設定します。

blog05.png

■ Gateway Manager
Gateway Agent制御用アプリケーションです。Kiiよりサンプルコードとして提供されていますので、Gateway Manager Application Sample作成し、アプリ情報を設定します。

blog06.png
blog07.png

(ウ) コンバータ機能の組込み
コンバータはセンサやアプリケーションに合わせて作成します。今回は、Bluetoothから受信した情報をクラウドに上げる形式に変換します。今回使用したセンサは、BLE Beaconタイプのもので、温度・湿度・照度の3つのセンサ情報がBeaconのアドバタイジングパケットに格納されます。そのため、コンバータはパケットのPDU Payloadからセンサ情報を抽出し、適した温度、湿度、照度の数値情報に変換します。

<BLEの一般的なパケット構造>

blog08.png
3. 完成
これらの機能を組込むことにより今回のBLE Cloud Gatewayが完成します。
動作フローは最終的にこのようになります。

blog09.png

Gateway Managerを用いて、Gateway Agentをクラウドへ登録
hcitoolでBLEデバイスのスキャンを実行し、各Beacon情報を取得
目的のセンサ情報のみをコンバータで抽出
Gateway Agentからクラウドにアップロード

実際のセンサ情報やクラウドに表示される内容:

blog10.png
4. まとめ
今回、IoTセンサを無線LAN経由でインターネット上のクラウドサーバに情報をアップロードするためのBLE Cloud Gatewayを開発しましたが、実はこれ、5月に東京ビッグサイトで開催された『IoT/M2M展』に出展するためのデモ開発でした。

サイレックス製品『LB-100AN』をプラットフォームに使い、OSSおよびクラウドベンダのアプリケーションを活用することによって、1週間という短期間で実用的な製品として開発作業が完了しました。

 『LB-100AN』は、サイレックスの標準品として、もしくは機器メーカ様のOEM向けのプラットフォームとして量産実績のあるプラットフォームです。今回のデモ開発にとどまらず、信頼性の高いハードウェアをそのまま量産化製品に適用できるメリットがあります。
今回のブログの元ネタとなったプレゼンテーション資料をダウンロードすることができますのでそちらも是非ご参照ください。

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