国内初、SRF無線プラットフォームの製品化をサポートする環境を提供開始
国立研究開発法人情報通信研究機構
サイレックス・テクノロジー株式会社
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)と、サイレックス・テクノロジー株式会社(本社:京都府精華町、代表取締役社長:三浦 暢彦、以下 サイレックス)は、サイレックス本社内にある無線製品開発・検証の場「THE BASE for 5G and Wireless」(以下、THE BASE)に、国内初となるSRF無線プラットフォーム※1の製品化をサポートする環境の提供を開始します。SRF無線プラットフォームを使ったアプリケーションの試験が可能な環境を提供することで、SRF無線プラットフォームを用いた製品の開発を支援します。
ローカル5GやWi-Fi 6、802.11ah等の複数無線が混在するTHE BASEには、新たに設置したSRF無線プラットフォームや無線センサーによって収集した情報を分析した結果を可視化するために、NICTが開発した3次元の無線可視化環境も併せて提供します。
SRF無線プラットフォームを用いた製品を実際の稼働状況に近い条件で動作させることで、安定稼働評価や特定のパラメータ設定、無線環境における製品の挙動を調査することが可能となりました。
【背景】
製造現場では、生産効率を向上するため無線通信を用いた製造向けアプリケーションの導入が年々進んでおり、今後もさらに増加するものと予想されます。無線通信を用いた製造向けアプリケーションの例としては、自動搬送車による部品搬送の自動化やトルクレンチ等の工具の情報の収集・管理などがあります。一方で、無線通信は干渉や遮蔽の影響により通信品質が不安定になり、遅延やスループットが悪化することがあります。その結果、自動搬送車が安全のために停止したり、工具の情報が取れず製造ラインが停止したりと、却って生産効率が悪化してしまうことがあります。
このような事態を避けるため、NICTとサイレックスは、製造現場の無線化を推進するFlexible Factory Project※2の活動を実施してきました。またNICTは、SRF無線プラットフォームに高い関心を持つ企業とともにフレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)※3を設立し、技術仕様の標準化を推進してきました。
【今回の成果】
従来、製品化前の無線システムの評価は電波暗室等で行われることが多く、実環境での移動ロボットの動きや無線通信の変動を含めた評価が難しい状況でした。ローカル5G、Wi-Fi 6、802.11ah対応の製品開発・検証の場であるサイレックスのTHE BASEに、SRF無線プラットフォームの製品化をサポートする環境を整えることで、無線システムを持ち込んでリアルな環境に近い形で接続を試すことができ、SRF無線プラットフォームについても特定のパラメータや状況下でのシステムの挙動を調査することができます。検証エリアでは、無線可視化ソフトウェアも提供し、SRF無線プラットフォームによる無線安定化の性能や移動ロボットの無線通信の状況を確認することができます。
*THE BASEのSRF無線プラットフォームは、技術仕様書Ver. 2.0に対応しています。
図1 常設したSRF無線プラットフォームの接続環境
【今後の展望】
本環境を通じてリアルな環境における無線利用の課題抽出を可能とし、SRF無線プラットフォームを用いた製品化のサポートを行います。
<各機関の役割分担>
・NICT:SRF無線プラットフォームの提供、移動ロボットの無線影響の可視化ツールの提供
・サイレックス:複数無線や移動ロボットの稼働する設置エリアの提供、接続実施支援
図2 THE BASEの3Dモデルデータ
検証エリアのレイアウト・壁・無線移動体の走行経路等の情報取得とSRF無線プラットフォームの動作確認に使用
図3 無線可視化画面
図2の情報をもとに無線の状態を可視化
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SRF無線プラットフォームは、無線リソースを最適に制御し、安定した通信を提供することで、無線化に伴う課題を解決します。無線通信の不安定さによる通信の途切れや遅延、画像の乱れが産業現場に与える影響を減らすため、サイレックスは、安全で信頼性の高い「切れない無線空間」実現の一環として参画しています。
参考サイト:SRF無線プラットフォーム~製造現場等の無線のトラブルを解決しIoTでデジタル化を促進~
■ 用語解説
*1 Smart Resource Flow(SRF)無線プラットフォーム
多種多様な無線機器や設備を繋ぎ、安定に動作させるためのシステム構成。Smart Resource Flowは、マルチレイヤシステム分析を用い、製造に関わる資源(人、設備、機器、材料、エネルギー、通信など)がスムーズに流れるよう管理するシステム工学戦略。同一空間内に共存する他のアプリケーションの通信状況を監視して通信に使用するチャネルや通信速度を適応的に制御することで、無線区間での干渉を回避して通信遅延を抑制する。SRF無線プラットフォームの技術仕様はFFPAにより策定された。
*2 フレキシブル・ファクトリー・プロジェクト(Flexible Factory Project)
工場での無線利活用促進を目的として2015年6月に設立した、NICT主導による多種無線通信実験プロジェクト。現在、NICT、オムロン株式会社、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、日本電気株式会社、富士通株式会社、サンリツオートメイション株式会社、村田機械株式会社、株式会社モバイルテクノ、株式会社パナソニック システムネットワークス開発研究所、株式会社インターネットイニシアティブ、株式会社構造計画研究所、サイレックス・テクノロジー株式会社、トヨタテクニカルディベロップメント株式会社、PwCコンサルティング合同会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、株式会社 竹中工務店、京セラ株式会社、AK Radio Design株式会社、フクダ電子株式会社、マイクロウェーブ ファクトリー株式会社、アンリツ株式会社、積水化学工業株式会社、東日本電信電話株式会社の23社が参加。新たな無線プラットフォームの開発や、無線通信規格の仕様策定、製造現場の通信セキュリティを含む各種ホワイトペーパーの発行などに取り組んでいる。
*3 フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)
フレキシブルファクトリパートナーアライアンスは、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現する協調制御技術の規格策定と標準化、および普及の促進を通じ、製造現場のIoT化を推進するために2017年7月に設立された非営利の任意団体。メンバー企業は、2024年6月現在、オムロン株式会社、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、サンリツオートメイション株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構、日本電気株式会社、富士通株式会社、村田機械株式会社、シーメンス株式会社、一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター。会長は、アンドレアス・デンゲル (ドイツ人工知能研究センター)。
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