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    <title>Wireless・のおと</title>
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    <updated>2012-04-26T01:32:18Z</updated>
    <subtitle>サイレックスの無線LAN 開発者が語る、無線技術についてや製品開発の秘話、技術者向け情報、新しく興味深い話題、サイレックスが提供するサービスや現状などの話題などを配信していきます。
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    <title>Embedded Systems Conference 2012を見て</title>
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    <published>2012-04-26T01:30:00Z</published>
    <updated>2012-04-26T01:32:18Z</updated>

    <summary>先日、アメリカのサンノゼで開催された Embedded Systems Conf...</summary>
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        <![CDATA[先日、アメリカのサンノゼで開催された Embedded Systems Conference 2012 を視察してきましたが、今年はセンサーネットワークが大流行で、どこのブースにも「超低消費電力」そして「無線接続」をうたう製品(チップセット、SoC、EVK など)が並んでいたことが印象的でした。予告どおり（？）、今回は雑感に近い話を軽く流してみます。<br /><br /> ]]>
        <![CDATA[CPU アーキテクチャとしては Texsas Instruments, Freescale Semiconductor, NXP Semiconductor, ST Microelectronics などが一斉に Cortex-M 系列の省電力 SoC を並べており、SH/R8C/RX/RL78 の混成アーキテクチャを抱える Renesus Electronics　社と、PIC シリーズを持つ Microchip の二社が Cortex 軍団に立ち向かっている構図となっていました。ところで Cortex を「コアテックス」と発音する人が多いのですが、core-tex ではなく「前頭葉」という意味の単語で「コーテックス」という表記のほうが原語発音に近いと思うのですが...。<br /><br />それはともかく、「低消費電力」というのは今後十年間のコンピュータ産業を占う上で一つのキーワードとなるでしょう。今までは「とにかく速く」「とにかく大容量」であることがコンピュータの価値で、3GHz のクアッドコア CPU に 16GByte の DDR-3 と 4TByte の RAID アレイをつなげ、128 コアの GPU を水冷でぶん回してオーバークロック動作させ Futuremark で何 FPS 出した、みたいな話がコンピュータ産業の「最前線」を象徴する話題になっていましたが、今後は電力を野放図に消費して速度を追及するのではなく、電力をいかに効率よく使って優れた性能電力比を実現するかがコンピュータの価値になるのではないでしょうか。<br /><br />一方、「低消費電力」と「無線接続」は実は相反するテーマです。「無線 LAN と通信距離について(1)」でも述べたように、自由空間を伝搬する電波は距離の二乗に逆比例してその強度を落としてゆくので、同じ距離を通信するならば有線接続のほうが遥かに伝達効率が良いのです。しかしながら、「低消費電力」と「無線接続」は不可分のテーマでもあります。ありとあらゆる物にコンピュータが埋め込まれてゆく M2M (Machine-to-machine)の世界において、その全てが有線接続されることはおよそ非現実的だからです。この相克をどのようにして回避し、どのような技術的要件として落とし込むかが勝者と敗者を分けることになるでしょう。<br /><br />今まで何度か述べてきたように、こういった低消費電力無線には沢山の(１０種類ちかい)自称「次世代標準」候補が名乗りを上げています。今回の Embedded Systems Conference 2012 では、各 SoC メーカー毎に無線技術への取り組み方が現れていたと思います。<br />Bluetooth の展示はごく少なく、Zigbee (802.15.4)派と WiFi 派に大きく分かれていました。Zigbee 派の筆頭は PIC-Tail を持つ PIC 社で(ただし同社は Zero-G wireless を買収した自社 WiFi 技術も持っている)、Renesus・NXP もどちらかと言うと Zigbee 寄りの展示でした。一方 Texsas Instruments 社は新開発の「TIWI」こと CC3000 WiFi チップを前面に打ち出しており、ST Micro も Zigbee よりは WiFi を押しだした印象。Freescale 社は自社製の無線ソリューションを持っていないためパートナー企業による WiFi 講習会を開いており、我々 silex も Freescale ブースで「省電力無線」に関する講習を行いました(講師は私ではありません、あしからず)。<br /><br />現段階では、まだ誰が勝者で誰が敗者かを見極められるほどの材料はありません。家電(PC)系、工業系、携帯系それぞれに WiFi、Zigbee、Bluetoothが一日の長を持っており、互いに自らの得意分野を守りつつ他分野への浸透を図っているという状況です。そのなかでも「スマートフォンへの搭載率ほぼ100%」という WiFi が多方面への進出力では頭ひとつ抜きんでており、一方携帯電話業界への普及率が高いはずの Bluetooth は、その特徴であるプロファイルとロゴ認証制度が逆に足枷となって「携帯電話とヘッドフォン」以外の用途に進出できていない印象を持っています。<br /><br />こういうとき、技術者はついつい「従来の常識を破る」エキゾチックな新技術(純インパルスUWBとか、60GHzやテラヘルツの高周波無線だとか、ホワイトスペース帯域を使うサブギガヘルツ無線だとか)に飛びつきたくなるものですが、市場は得てして平平凡凡で「面白くも何ともない」ソリューションを選択するものですね。そう考えると低消費電力 WiFi という「平凡な」ソリューションに勝機があるのかなぁ、とも思いますが...こればっかりは、ノストラダムスでもお釈迦様でもわかりません。<br />]]>
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    <title>無線 LAN と通信距離について(5)</title>
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    <published>2012-03-27T00:30:00Z</published>
    <updated>2012-03-28T05:34:08Z</updated>

    <summary>無線LANと通信距離についてお届けしてきたこのシリーズも、今回で一旦区切りとしま...</summary>
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    <category term="cdma" label="CDMA" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
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    <category term="干渉" label="干渉" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
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        <![CDATA[無線LANと通信距離についてお届けしてきたこのシリーズも、今回で一旦区切りとします。最後のお題は干渉についてです。<br /><br />]]>
        <![CDATA[干渉(Interference)とは、信号同士あるいは信号と雑音が混ざりあって通信を阻害する現象です。ここでは無線LANシステムが直面する干渉の例を幾つか挙げて説明してゆきます。<br /><br /><b><br />2.4GHz における干渉</b><br /><br />同じ WiFi でも 2.4GHz と 5GHz では干渉度合いが違う、という話を耳にした方も多いと思います。これには (1) 2.4GHz は WiFi 以外にも沢山の機器で利用されている、(2) 2.4GHz はチャネル間で周波数が重なっているという２つの理由があります。<br /><br />(1) は比較的シンプルな話で、2.4GHz 帯は WiFi だけでなく Bluetooth や Zigbee など他の無線通信、親子電話や駐車場のゲートリモコンなどアナログ変調を使ったシステムにも使われているため、雑音レベルが全体的に高い傾向があります。なかでも、家庭内で深刻なのは電子レンジによる干渉です。無線 LAN が数十ミリワットで動いているのに対し、電子レンジは百ワットを超える文字通り桁違いに強力なマイクロ波を発生します。もちろんシールドされてはいるのですが、無線 LAN の受信信号は -70dBm (0.0001 マイクロワット)といった微弱レベルなので、電子レンジから漏れるマイクロ波は充分強力な妨害になってしまいます。<br /><br />(2) は少し複雑な事情の絡む話です。2.4GHz 帯には 1～13 までのチャネルがありますが、１チャネルあたり 20MHz を占有するにも関わらずチャネル間は 5MHz しか離れていません。ch.1(2.412GHz) と干渉しない次のチャネルは ch.6(2.437GHz)、ch.6 と干渉しないのは ch.11(2.462GHz) で、2.4GHz 帯で干渉なく使えるチャネルは３つしかありません。ここで誰かが ch.4(2.422GHz) を使えば、それは ch.1 も ch.6 も両方潰してしまいます。<br /><br /><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="freq24.png" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/freq24.png" width="471" height="275" /><br />一体なんでこんな事になっているかというと、802.11 無線 LAN (a, b, g, などのサフィックスが付かないバージョン)が最初に規定されたときは「周波数拡散」という通信方式が採用されており、CDMA (Code Division Mutlple Access) 方式に対して高い期待があったからです。<br /><br /><b><br />周波数拡散と CDMA</b><br /><br />周波数拡散通信には直接拡散(DS:Direct Secuence)と周波数ホッピング(FH:Frequency Hopping)という２つの主要な方式があります。動作原理は若干異なるのですが基本的なコンセプトは類似しており、通信周波数が一定の枠内で時間とともに動きまわるというものです。たとえば Bluetooth は FH を採用していますが、通信占有帯域はわずか 1MHz 幅で、これが 625 μ秒ごとに 2.402～2.480GHz の範囲内 79 チャネルを飛び回る動作をします。<br />周波数がどういう順序で切り替わるかは通信者同士が事前に交換した情報に基づいて行われ、基本的には疑似乱数で行われます。例えば A⇔B, C⇔D という２つのペアが 10 個のチャネルを持つ FH 方式で通信していたとして、それぞれのペアで異なる順序でチャネルを切り替えてゆく様子を下記に示します。<br /><br />
<table border="1">
<tbody>
<tr>
<th>通信ペア</th>
<th>t=0</th>
<th>t=1</th>
<th>t=2</th>
<th>t=3</th>
<th>t=4</th>
<th>t=5</th>
<th>t=6</th>
<th>t=7</th>
<th>t=8</th>
<th>t=9</th></tr>
<tr>
<td>A⇔B</td>
<td>1</td>
<td>8</td>
<td>4</td>
<td>2</td>
<td>5</td>
<td>9</td>
<td>7</td>
<td>3</td>
<td>0</td>
<td>6</td></tr>
<tr>
<td>C⇔D</td>
<td>3</td>
<td>7</td>
<td>2</td>
<td>4</td>
<td>5</td>
<td>0</td>
<td>1</td>
<td>9</td>
<td>6</td>
<td>8</td></tr></tbody></table><br />この例では t=4 の時のみチャネル 5 が衝突していますが、他の時間には衝突がありません。このように、「通信ペアの増加に従い確率的に衝突が増加する」というのが周波数拡散通信/CDMA の特徴です(※註)。<br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em"><br />※註：他には「事前に交換された情報」を知らなければ周波数の遷移パターンも判らないので盗聴が難しいとか、周波数が派手に動き回るのでシンボル間干渉に強く、マルチパスで遅延して届いた信号をレイク回路で分離合成できる、といった特長があります。シンボル間干渉やマルチパスについては前回の話を参照してください。<br /></font><br />CDMA 登場以前に使われていた TDMA (時間分割)や FDMA (周波数分割) 方式では、「割り当てる通信の単位」と「収容可能な通信チャネル」が１対１に対応していました。たとえば TV のチャネルは典型的な FDMA 方式で、空きチャネルの無いところに新しい放送局を入れることはできません。既存局と同じ周波数で無理やり電波を流せばたちまち混信して「潰し合って」しまいます。<br />しかし CDMA 方式では混信が「確率的」にしか発生せず、局を増設してもすぐに致命的な「潰し合い」にはなりません。特にデジタル通信ならば、衝突が稀に発生してもパケット損失を再送によってカバーできるため、限られた周波数帯のなかで多くの通信ペアを格納することができます。この特徴は普及台数の爆発的増加に対して基地局増設が間に合わない携帯電話業界では特に歓迎され、W-CDMA や CDMA2000 といった方式が急速に普及することになりました。<br /><br />802.11 無線 LAN が 60MHz の帯域内に重なったチャネルを 13 個も並べたのも、携帯電話と同様に周波数拡散と CDMA によって収容台数を増やせるのではないかという期待があったからなのです。しかし、無線 LAN に対しては台数増加よりも高速化に対する要望のほうが遥かに強く、802.11g で OFDM 方式を採用したことで「周波数拡散と CDMA」からはキッパリ決別することになりました。<br /><br />周波数拡散方式の場合、ある瞬間に占有している周波数帯域(キャリア)は比較的狭く、それが時間とともに一定の周波数範囲内を動き回るというものでした。しかし OFDM では「サブキャリア」と呼ばれる搬送波が複数まとめて一斉に送信されます。たとえば 802.11g の場合、312.5KHz のサブキャリアを 52 本束ねています。これが一斉に送信されるため、OFDM の通信中は 20MHz の帯域がずっと連続して占有されることになります。ゆえに 2.4GHz 帯で 5 チャネル以内に隣接したチャネル同士が同時に通信すると、周波数拡散方式では「時折(確率的に)パケットが衝突して消える」だったのが、OFDM では「確実に衝突して潰し合う」ことになってしまったのです。<br /><br /><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="fh_spectrum.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/fh_spectrum.jpg" width="360" height="340" /><b>
<div style="TEXT-ALIGN: center"><b><font style="FONT-SIZE: 0.8em">周波数拡散(FH)方式における占有周波数</font></b></div>
<div style="TEXT-ALIGN: center"><b><font style="FONT-SIZE: 0.8em"><br /></font></b></div>
<div style="TEXT-ALIGN: center"><img style="MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="ofdm_spectrum.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/ofdm_spectrum.jpg" width="360" height="340" /></div></b>
<div style="TEXT-ALIGN: center"><b><font style="FONT-SIZE: 0.8em">OFDM方式における占有周波数</font></b></div>
<div><b><br />5GHz ではどうなのか</b><br /><br />5GHz を使う 802.11a は 802.11g よりも先に規格制定が始まっており、最初から OFDM を使う前提で進められていました。5GHz 帯のチャネルが 20MHz 離して設けられているのはこのためです。このため 802.11a ではチャネル番号が重ならないかぎり、原則として干渉による性能低下は発生しません。(※註)<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em">※註：但し全く影響がないわけでもないので、離せるならば離すに越したことはありません。</font><br /><br /><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="freq52.png" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/freq52.png" width="482" height="275" />しかし高速化に対する要望はますます強く、802.11n では 40MHz 帯域を使う HT40 拡張仕様(俗に「倍速モード」とも呼ばれる)が導入されたため、この機能を使う場合は実質２つのチャネルを占有するのと同じになってしまいました。更に、次の高速化規格である 802.11ac では HT80 や HT160 といった広帯域拡張も考えられており、これらの機能を使おうとすると「通信中は ch.34～ch.48 を全部占有する」とか「誰かが真ん中へんのチャネルを使ってしまうと、広帯域モードが使えない」という事態が考えられ、結局 2.4GHz 帯と同じようなことになってしまいます。比較的広い周波数帯域を長時間にわたって占有する OFDM 方式は、その主要なメリットである高速性と引き換えにデメリットも抱えているのです。<br /><br /><b><br />レーダーとの干渉</b><br /><br />2.4GHz に対する 5GHz の利点にはチャネル間干渉が無いことに加え、「他の通信機器があまりいない」という特長が挙げられます。しかしこの「あまり」が曲者で、実は多くの国で 5GHz 帯は気象観測レーダーなど公共事業用周波数として使われてきた歴史がありました。802.11a が 802.11g より先に着手されていたのに製品化が遅れた理由の一つには、各国ごとに 5GHz 帯を使用していた既存機関が無線 LAN の普及によって帯域を「汚される」ことを嫌い、周波数帯域の割り当てや法規制との関係を整理するのに時間を要したという事情があります。特に日本では先有帯域との妥協を図った結果、世界標準から半チャネル(10MHz)だけズレた日本独自の J52 規格を採用したため、適合製品が出るまで更に時間を要したというオマケまで付きました。(※註)<br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em"><br />※註：悪評の J52 は 2005 年の法改正で廃止され、日本の 802.11a も世界共通となりました。</font><br /><br />802.11a の周波数帯は大きく四つに分けられており、その使い分けは概ね下記のようになっています。<br /><br />
<table border="1">
<tbody>
<tr>
<th>チャネル</th>
<th>周波数</th>
<th>通称</th>
<th>主な使用国</th></tr>
<tr>
<td>ch.36～ch.48</td>
<td>5.180GHz～5.240GHz</td>
<td>W52/UNII1</td>
<td>日本、アメリカ、欧州諸国</td></tr>
<tr>
<td>ch.52～ch.60</td>
<td>5.260GHz～5.320GHz</td>
<td>W53/UNII2</td>
<td>日本、アメリカ、欧州諸国</td></tr>
<tr>
<td>ch.100～ch.140</td>
<td>5.500GHz～5.700GHz</td>
<td>W56</td>
<td>日本、欧州諸国</td></tr>
<tr>
<td>ch.140～ch.165</td>
<td>5.745GHz～5.825GHz</td>
<td>UNII3</td>
<td>アメリカ、中国、韓国</td></tr></tbody></table><br />これだけでも充分ややこしいのに、更に追い打ちをかけるのが DFS です。DFS とは Dynamic Frequency Selection の略で、802.11a のシステムにレーダーなど既存機器との干渉を検出し、干渉検出時にはすみやかに運用周波数を変更する機能の実装を義務付ける、というものです。DFS の規定は国によって異なり、たとえば日本では W52 には DFS 規定がなく、W53 と W56 には規定されています。一方、アメリカには DFS 規定が(今のところ)ありません。<br /><br />DFS が無線 LAN システムにとって厄介なのは、チャネルを使用するとき「レーダー等が居ないかどうか」を一定時間(１分)調べてからでなければ電波を出してはいけない、という規定です(※註)。この「チャネルを使用するとき」というのはシステム起動時のみならず、DFS が働いて別のチャネルに移動した後にも適用されます。このため、DFS 帯域で動く 802.11a システムは DFS が働いたとき少なくとも１分、条件が悪ければ(移動した先のチャネルでまたレーダーに引っ掛かったならば)もっと長時間にわたって通信が停止するリスクを抱えています。広帯域を使う 802.11ac では、DFS の影響は更に深刻になることが予想されます。<br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em"><br />※註：もちろん、DFS には回路の複雑化や認証費用の増加などコスト面への悪影響もあります。</font><br /><br /><br /><b>雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ</b><br /><br />「雨が降ると無線 LAN の調子が悪くなる」という話をよく聞きます。2.4GHz 帯は前述したように電子レンジに使わていますが、電子レンジの動作原理は電波によって水分子を振動させて熱を発生させることです。だから「2.4GHz は水分子との共振周波数であり、ゆえに空気中の水分が増えると減衰率が高まるのだ」という説明をよく聞きますが、実はこれは俗説です。水分子の共振周波数は 22GHz 前後で、2.4GHz だけ特に共振性が高いわけではありません。ただ便宜的に扱いやすかったので 2.4GHz が使われ、電子レンジの普及によって 2.4GHz 帯は雑音だらけとなり長距離通信には使えなくなったので無免許制の ISM バンドとして世界的に開放された、という経緯なのです。水分子の共振周波数ではなく「電子レンジ先にありき」なんですね。また「空気中の雨滴が電波を吸収して...」という話についても、雨滴による減衰は豪雨下でも理論上 2.4GHz で 0.1dB/Km、5GHz でも 0.2dB/Km 程度という話があります(※註)。<br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em"><br />※註：出典 http://www.jrc.co.jp/jp/product/wireless_lan/support/faq_asw.html</font><br /><br />しかしながら、「雨が降ると無線 LAN がつながりにくくなったり、速度が落ちたりする」という現象を体験された方は多いかと思います。雨滴や湿度による減衰はゼロではないでしょうが、降雨によって電源ラインやアースの絶縁が悪化して放射ノイズレベルが上がったり、屋外設置された無線装置(携帯電話基地局、業務用無線、アマチュア無線など)の遮蔽が悪化して漏洩電波が増えるという要因のほうが大きいのではないかと考えられます。<br /><br />
<div><br /><b>まとめ<br /></b>今回は干渉に関する話を、あまり定量的ではなく・かつ散発的にご紹介しました。そろそろネタ切れになってきた、という事情もあります。次回の題はまだ未定ですが、次に続くシリーズが思いつかなければ、読み切りの軽いネタでも上げてみようと思います。<br /><br /></div></div>]]>
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    <title>無線 LAN と通信距離について(4)</title>
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    <published>2012-02-23T02:00:00Z</published>
    <updated>2012-02-23T01:56:36Z</updated>

    <summary>ここまでのシリーズで、主に「通信距離の延伸」という観点から電磁波の伝達公式とアン...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.silex.jp/blog/wireless/">
        <![CDATA[ここまでのシリーズで、主に「通信距離の延伸」という観点から電磁波の伝達公式とアンテナの基礎について解説してきました。今回は「距離」や「パワー」「感度」以外の伝達阻害要因について少し触れてみたいと思います。今回のお題は「マルチパスとデッドスポット」です。<br /><br /> ]]>
        <![CDATA[<div align="left"><font style="font-size: 0.8em;"><b><font style="font-size: 1.25em;">マルチパスとは</font></b></font><br />マルチパス(Multipass)というのは、電磁波が複数の経路を通って多重に伝達される現象です。「複数の経路」というのは直接波と反射波であり、反射波は更に「天井からの反射波」「床からの反射波」「壁からの反射波」のように複数の経路を取り得ます。受信側では、これらの反射波を合成した信号として受信されます。<br /></div><br /><div align="center"><img alt="multipass_small.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/multipass_small.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" height="177" width="300" />マルチパスの解説(<a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/multipass_large-107.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/multipass_large-107.html','popup','width=667,height=395,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">表示</a>)<br /></div><br />マルチパスが問題となるのは、各経路ごとに伝達路の長さが異なるため、受信点における信号が少しづつ時間差をもって合成された波形になってしまうことで
す。既に過去の言葉となってしまったアナログＴＶ放送で「ゴースト」が出たことを覚えておられるでしょうか。これはＴＶ受像機への電波がマルチパスとなって時間差で届いたため、時間差をもった複数の映像が重なって表示される現象です。<br /><br /><div align="center"><img alt="ghost_small.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/ghost_small.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" height="180" width="320" />ゴーストの例<a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/ghost1-108.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/ghost1-108.html','popup','width=640,height=360,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">(表示</a>)<br /></div><br />無線 LAN のような高速通信において、マルチパスは通信速度向上を妨げる大きな障害です。時間あたりに乗せる情報量＝シンボル密度を上げれば上げるほど、マルチパスによって前後のシンボルが重なり合い何が何だか判らなくなるという現象が発生するためです。この現象をシンボル間干渉(Inter-Symbol Interference, ISI)と呼びます。トンネル内のように大きな反響のある空間で、大声で早口にまくし立てる様子を想像して頂ければわかりやすいでしょう。一言づつ区切って言って貰わないと、ワンワン響くばかりで何を言って
いるのか判らなくなってしまいます。<div align="center"><img alt="ISI_small.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/ISI_small.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" height="284" width="320" />FSK変調におけるシンボル間干渉の解説<a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/ISI-109.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/ISI-109.html','popup','width=640,height=569,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">(表示</a>)<br /><br /></div>802.11b 以前で採用されていた周波数拡散方式(DSSS)では、時間あたりのシンボル変化を疑似乱数で拡散させることでシンボル間干渉の影響を減らし、かつ自己相関演算によって原信号とマルチパス信号間の遅延を検出し、その遅延に同期して逆拡散させ合成する「レイク(Rake)受信」という巧妙な回路が用いられていました。レイク回路はあまりに巧妙なので、簡単に説明するのはちょっと難しいです。どのみち、現在の無線 LAN ではレイクは多用されていないため今回は割愛させて頂きます。<br /><br />802.11a/g 以降では、複数の搬送波(キャリア)に一斉に情報を乗せて伝送するマルチ・キャリア方式の OFDM (Orthogonal Frequency-Division Multiplexing; 直交周波数分割多重変調...これについてもいずれ、まとまった解説を試みましょう)が採用されました。OFDM はその性質上レイク回路の実装が難しい反面、１キャリアあたりの時間情報密度を減らしても通信速度への影響が少ないため、有意情報(シンボル)の前後に空き時間を配置し、マルチパスでズレて届いた信号が次のシンボルに重ならないようにするガード・インターバル(Guard Interval)というマルチパス対策が採用されています。ガード・インターバルの時間は 802.11a/b/g においては 0.8 μ秒で、802.11n では高速化のため 0.4 μ秒に短縮されました。後者は「Short GI」と略される場合が多いようです。<br /><font style="font-size: 0.8em;"><br /></font><font style="font-size: 1em;"><b>デッドスポット</b></font><br />マルチパス時間差が波長の 1/2 に一致した場合は波のプラス側とマイナス側が打ち消し合ってしまい、その地点における受信強度が著しく低くなります。この現象を専門的には「マルチパス・フェーディング」と呼び、一般には「デッドスポット」として知られています。<br /><div align="center"><img alt="mp_fading_small.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/mp_fading_small.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" height="136" width="270" />マルチパス・フェーディングの解説(<a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/mp_fading_large-120.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/mp_fading_large-120.html','popup','width=540,height=273,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">表示</a>)<br /></div><br />デッドスポット現象が起きてしまうと原信号そのものが弱ってしまうため、レイク合成やガード・インターバルでも対応できません。屋外でのマルチパス現象は建造物など比較的大きく、しかも動かない反射要因に強く影響されますが、無線 LAN が多用される屋内環境では反射要因が遥かに多くて複雑で、しかもドアの開閉や人・機材の移動などによって反射経路が複雑に変化するため、それまで調子よく通信できていたものが突然調子が悪くなるような(あるいはその逆の)現象として発現します。デッドスポットによる受信強度の変化は環境に依存しますが 10～20dB にも達することがあり、しかもほんの 5～10cm 動かしただけでデッドスポットが出たり消えたりします。<br /><br />デッドスポットの測定例を下図に示します。これは PC に１本の 3dBi アンテナを接続し、室内で約 10m 先に置いた 5.2GHz アクセスポイントからの信号強度を２箇所(距離 18cm)において３分づつ測定したものです。前半のポイントでは幅 10dB 以上の強度変化があり、平均受信強度 -55dB 程度ですが、後半は 18cm 動かしただけで平均受信強度 -45dB、強度変化も 10dB 未満に収まっています。この前半の状態が「デッドスポット」です。<br /><br /><div align="center"><img alt="deadspot_s.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/deadspot_s.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" height="290" width="380" />デッドスポットの測定例(<a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/deadspot_l-117.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2012/02/deadspot_l-117.html','popup','width=761,height=582,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">表示</a>)<br /></div><br /><font style="font-size: 1em;"><b>アンテナダイバーシティ</b></font><br />デッドスポットに対する特効薬としては、距離を離したアンテナを複数(普通は２本)持たせておき、受信強度の強いアンテナを使うようにするという方法があります。これを通称ダイバーシティ(Diversity)、正確には「空間アンテナダイバーシティ(Spatial Antenna Diversity)」と呼びます。802.11n 以前の WiFi 機器に２本のアンテナが生えているのは、このダイバーシティに対応するためです。ある程度の距離を離してアンテナを設置したアンテナが２本ともデッドスポットに入る確率はアンテナ１本の場合にくらべて著しく低くなる(※註)ため、安定した受信性能が期待できるわけです。<br /><br /><font style="font-size: 0.8em;">(註) 例えばアンテナがデッドスポットに入る確率を一律30%とした場合、アンテナ</font><font style="font-size: 0.8em;">が</font><font style="font-size: 0.8em;">２本ともデッドスポットに入る確率は0.3x0.3=9%にまで減少します。</font><br /><br /><div align="center"><img alt="mvdsx2.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/mvdsx2.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" height="241" width="289" />ダイバーシティアンテナの実装例(silex MVDS X-2)<br /></div><br />さて、802.11n 以降の MIMO (Multi-In Multi-Out) 技術は高速化のために導入されたものですが、マルチパス対策としても非常に有効です。ダイバーシティでは「条件の良いアンテナ」を選択するだけですが、MIMO 受信をシングルストリームモードで使った場合、２本のアンテナからの受信信号を位相を合わせて合成することが可能となります。例えばアンテナからの信号強度がそれぞれ 0.3 と 0.6 だったとして、ダイバーシティの場合は 0.6 だけを使って 0.3 の方は捨ててしまいますが、MIMO では 0.3 と 0.6 を足して 0.9 の信号として扱うことが可能になるわけです。これを MRC(Maximum Ratio Combining; 最大比合成)と呼んでいます。<br /><br /><br /><b>まとめ</b><br />どちらかというと長距離通信時の問題についてお届けしてきた本シリーズですが、今回は「近距離だからといって、必ずしも安定した通信ができるとは限らない」というお話でした。レイクにせよダイバーシティにせよMRCにせよ、無線LAN装置には先人の知恵を結集したマルチパス混信とデッドスポット回避のための巧妙なメカニズムが組み込まれているのですが、それでも時と場合によって急に調子が悪くなったりすることは経験された方も多いのではないかと思います。それが一体どんな「時と場合」によるのかという原因判断と適切な対策はしかし、目に見えない電波が相手なだけになかなか厄介で、ここにインテグレーターとしての経験とノウハウが問われるところです。<br /><div><br /></div>]]>
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    <title>無線 LAN と通信距離について(3)</title>
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    <published>2012-01-27T00:30:00Z</published>
    <updated>2012-02-22T17:25:08Z</updated>

    <summary>前回はアンテナの各種とその特性・用途について説明しました。今回は知られているよう...</summary>
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    <category term="無線lanと通信距離について" label="無線 LAN と通信距離について" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
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        <![CDATA[<p>前回はアンテナの各種とその特性・用途について説明しました。今回は知られているようで知られていない？アンテナカタログの読み方について紹介します。<br /><br /> </p>]]>
        <![CDATA[<p>前回はアンテナの各種とその特性・用途について説明しました。今回は知られているようで知られていない？アンテナカタログの読み方について紹介します。<br /><br />まず、アンテナカタログの一例を示します。これは架空の 2GHz 帯 5dBi コ・リニア型のオムニアンテナです。<br /></p><table border="1"><tbody><tr><td>Type</td><td>Ommnidirectional Colinear</td></tr>
<tr><td>Frequency Range</td><td>2000MHz - 2500MHz</td></tr>
<tr><td>Gain</td><td>5dBi</td></tr>
<tr><td>Beam Width</td><td>E-Plane:30deg H-Plane:360deg</td></tr>
<tr><td>Max Input Power</td><td>100W</td></tr>
<tr><td>Impedance</td><td>50 ohm</td></tr>
<tr><td>VSWR</td><td>&lt; 1.8</td></tr>
<tr><td>Connector</td><td>N-Female</td></tr>
<tr><td>Windspeed Limit</td><td>200Km/h</td></tr>
<tr><td>Weight</td><td>185g</td></tr>
<tr><td>Dimensions</td><td>L:150mm D:24mm</td></tr>
<tr><td>Operating Temperature</td><td>-40 to +85 C</td></tr>
</tbody></table><br />
<br />以下、このカタログ項目の読み方とポイントを説明してゆきます。<br />
<br /><b>Type</b><br />これは前回説明したアンテナの基本形態を示しています。ただし同じタイプのアンテナでも、メーカーによって指向特性に注目して「オムニ」と書いてあったり、アンテナ構造に注目して「コ・リニア」と書いてあるなどの差異があります。<br /><br /><b>Frequency Range</b><br />アンテナの対応する周波数帯域を示しています。通常は１つの周波数帯だけ(シングルバンド)ですが、２つの周波数に対応するデュアルバンド型や、３つの周波数に対応するトライバンド型もあります。また、特に周波数帯域の広いものを「ワイドバンド」と呼ぶ場合もあります。<br /><br /><b>Gain</b><br />アンテナの最大利得を示しています。あくまで最大感度方向におけるピーク値なので、必ずしも有効角度全域でこの利得が得られるわけではないことに注意してください。例えばこのアンテナでは 5dBi で半値角 30 度ですから、アンテナ中心線から +/- 15 度ずれた位置では 2dBi の利得しか得られないことになります。<br /><br /><b>Beam Width</b><br />E 面、H 面における半値角を示しています。メーカーによっては E, H ではなく V, H(Virtical, Horizontal) と表記している場合もあります。指向特性を示すチャートが付属している場合が多いのですが、このチャートの読み方は別途説明します。<br /><br /><b>Max Input Power</b><br />最大入力電力を示しています。この限界を超えるとアンテナは過熱や放電で破損してしまいますが、無線 LAN の世界では通常 100mW 以下、1W を超えることは滅多にないのであまり心配ありません。<br /><br /><b>Impedance</b><br />インピーダンスを示しています。とりあえず無線 LAN 用では 50 オームという値に一致していれば OK です。<br /><br /><b>VSWR</b><br />定在波比という値で、ケーブルから入力された電力をアンテナがどれだけ効率よく変換するかを示しています。値は小さいほど優秀ということを意味しています。周波数に対する VSWR 値の変化を示すチャートが付属している場合がありますが、この読み方も別途説明します。<br /><br /><b>Connector</b><br />アンテナに接続するケーブルのコネクタ形状を示しています。Male と Female はネジのオスメスではなく、コネクタ芯線のオスメス形状を示しているので注意してください。コネクタの種別については別途説明します。<br /><br /><b>Windspeed Limit</b><br />アンテナの耐える最大風速を示します。走行する列車だとか高いビルの屋上に付けるような用途でないかぎり、通常は心配する必要はないでしょう。<br /><br /><b>Weight, Dimensions, Operating Temperature</b><br />重量、大きさ、動作温度範囲などの表記は他の電子部品と同じです。<br /><br /><br /><br /><font style="font-size: 1em;"><b>指向性チャートの読み方</b></font><br /><br />アンテナの指向性チャートは下記のような図で示されます。<br /><br /><br /><br /><div align="center"><img alt="beamchart1.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/beamchart1.jpg" class="mt-image-none" style="" width="476" height="268" /><br /><a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/beamchart1l.jpg">拡大表示</a><br /><div align="left"><br /></div></div>H-Plane はアンテナを真上から見た場合(水平面)、E-Plane はアンテナを真横から見た状態(垂直面)だと考えてください。水平面・垂直面とも 360 度方位に対する電波の放射強度(あるいは受信感度)を示しています。チップアンテナなど三次元的に非対称な特性を持つ機種では、XY, XZ, YZ の３軸に沿ったチャートが提示される場合もあります。<br />目盛はデシベルで、円の最外周が 0dB、そこから内側に向けて -5, -10dB, -15dB... と刻まれています。これがどういう意味かというと、アンテナの最大利得を基準点として、そこから「何 dB 下がったか」が内側に向けて刻まれているわけです。例えば公称 5dB のアンテナなら最外周は 5dB で、-5 に接する点では 0dB、-10 に接する点では -5dB の利得になります。<br />指向性の解説対象として、円対称のオムニではなく片側指向性のパッチアンテナを例として、アンテナでの半値角(E-Plane)を示すと下図のようになります。<br /><br /><div align="center"><img alt="beamchart2.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/beamchart2.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" width="384" height="256" /><a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/beamchart2l-81.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/beamchart2l-81.html','popup','width=768,height=512,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">拡大表示</a><br /></div><br />指向性チャートは「角度に対する強度変化」を中心点からの距離として表記したチャートです。例えばチャート上で水平８の字になっているからといって、電波がそういう形で広がっているわけではありません。チャートを「距離に対する強度」を示した図だと誤解すると、「アンテナはすぐ近くだと感度が弱いが、距離を離すとだんだんカバー範囲が広くなり、ある程度の距離が離れると逆に範囲が狭くなってゆく」という訳のわからない説明になってしまいます。電波はアンテナを中心に先広がりで放射され、どこまで行っても収束したりはしません。電波強度を輝度で表現し、距離に対して電波がどう広がっているかをあえて図示すると下図のようになります。<br /><br /><br /><div align="center"><img alt="beamchart3.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/beamchart3.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" width="256" height="256" /><a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/beamchart3l-84.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/beamchart3l-84.html','popup','width=480,height=480,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">拡大表示</a><br /></div><br /><font style="font-size: 1em;"><b>VSWR チャートの読み方</b></font><br /><br />VSWR は電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio)の略です。大雑把に言うと「アンテナがどれだけ効率的にエネルギーを変換しているか」を示す指標で、小さいほど良いと覚えておいてください。理論上最小値は 1.0 で、実際のアンテナでは 1.2～2.0 程度です。<br />VSWR チャートは下記のような図で示されます。多くの場合はアンテナの対応周波数帯域における VSWR を示すグラフと、幾つかの選定周波数点における測定値が記されています。<br /><br /><div align="center"><img alt="vswrchart1.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/vswrchart1.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" width="412" height="252" /><a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/vswrchart1l-87.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/vswrchart1l-87.html','popup','width=824,height=504,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">拡大表示</a><br /></div><br />このチャートを見ることで対応周波数範囲における特性のばらつきを見ることができ、特にマルチバンドやワイドバンドのアンテナでは「どの周波数帯で最も良い特性が出せるのか」「どの周波数帯が苦手なのか」を評価するのに役立ちます。VSWR チャート読み方の一例を下に示します。<br /><br /><div align="center"><img alt="vswrchart2.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/vswrchart2.jpg" class="mt-image-center" style="text-align: center; display: block; margin: 0 auto 20px;" width="448" height="312" /><a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/vswrchart2l-90.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/10/vswrchart2l-90.html','popup','width=896,height=624,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">拡大表示</a><br /></div><br />メーカーによっては VSWR ではなくリターンロス(dB)で周波数特性を示している場合もあります。リターンロスはアンテナに入力した電力と、アンテナから反射されて返ってきた電力の比率をデシベルで表現したものです。リターンロスは大きいほど性能が良い指標となり、一般的な製品では 10～20dB 程度の値を取ります。VSWR とリターンロスは反射係数ρを介して相互変換可能で、<br /><br />ρ = (VSWR-1)/(VSWR+1)<br />ρ = 1/10^(LR/20)<br />VSWR = (1+ρ)/(1-ρ)<br />LR = 20*log10(1/ρ)<br /><br />となります。例えばリターンロス 20dB に対応する VSWR は 1.2 で、VSWR=2.0 に対応するターンロスは 9.5dB となります。VSWR=2.0(リターンロス 9.5dB) のとき反射係数ρは 0.333... で、アンテナに入力された電力のうち 1/3 が「無駄に」反射されていることになります。<br /><br /><br /><b>アンテナコネクタについて</b><br /><br />アンテナコネクタには主として SMA, TNC, N の３種類があり、SMA と TNC には「RP-」が頭に付く変種があります。RP は Reverse Polarity の略で、ネジのオスメスと芯線のオスメス関係が「RP」無しのモデルとは逆になっていることを意味します(※註)。なお、N 型コネクタには「RP」タイプがありません。<br />一般消費者向けの無線 LAN 機器には小型の RP-SMA が主用されており、業務用 AP などの機器ではより大型の RP-TNC が使われています。N コネクタは元々が軍用規格品(MIL-STD)ということもあって頑丈なため、屋外用の AP やアンテナに多く見られます。<br /><br /><font style="font-size: 0.8em;">(※註) もともと「RP」型のコネクタというものは存在していませんでした。しかし米国 FCC が無免許制無線 LAN の認可にあたり、アマチュア無線やプロ無線機材と誤接続できない(させない)意図をもって、あえて互換性のないコネクタとして採用を義務付けたのが「RP」という経緯があります。しかし今では両者は混用されており、かえって混乱の種が増えただけになってしまいました。</font><br /><br />コネクタの識別については芯線のオスメス以外に、機器に付く側を「ジャック」、ケーブルないしアンテナに付く側を「プラグ」と呼んで区別しています。同軸ケーブルの場合、ネジでくるくる回す輪が付いている側が「プラグ」なので、結果として外見的にオスネジの側が「ジャック」、メスネジの側が「プラグ」になります。「RP」の付かないコネクタであれば「Jack = Female」「Plug = Male」で統一されているのですが、RP-SMA と RP-TNC ではこの対応関係が逆になります。つくづく紛らわしいことだと思います。<br /><br />]]>
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    <title>無線 LAN と通信距離について(2)</title>
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    <published>2011-12-26T01:00:00Z</published>
    <updated>2011-12-26T00:47:17Z</updated>

    <summary>前回はフリスの伝達公式から空間・周波数・パワーと通信距離の相関について解説し、通...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.silex.jp/blog/wireless/">
        <![CDATA[前回はフリスの伝達公式から空間・周波数・パワーと通信距離の相関について解説し、通信距離を延ばすには周波数が低いほど有利であること、無闇にパワーを上げても距離は大して伸びないこと、アンテナを工夫すればパワーを上げたのと同じ効果があることを示しました。今回はそのアンテナのお話です。主に指向性という観点から、各種アンテナの特性とその用途について解説します。<br /><br />]]>
        <![CDATA[<p><b>アンテナの性能とは？</b><br />アンテナの指向性能は「利得(ゲイン)」と呼ばれ、一般的に「dBi」という単位で表現されます。i はアイソトロピック(Isotropic)の頭文字で、全方位に均等な感度を持つ理想的な無指向性アンテナの感度を基準としたとき、対象となるアンテナの最大感度方位における倍数を常用対数(10 * log10(n))で表したものです。稀に「dBd」という単位が使われることもありますが、これは理想ダイポールアンテナ(利得 2.15dBi)を基準とした表記で、dBi = dBd + 2.15 で換算できます。<br /><br />アンテナの指向性が高ければ高いほど、その性能を最大限に発揮できる方向は狭くなって文字通りピーキーになります。もし信号源方向とアンテナのピーク指向性方向がズレた場合、その信号を受信できる能力は無指向性より逆に下がることになります(利得が 0 未満になります)。つまり指向性アンテナの性能表記には「利得」以外にも「その利得が発揮できる角度範囲」という数値が併記されなければなりません。この角度は利得がピーク値から -3dB になる範囲を指し、「半値角(Half-Power Angle)」と呼びます。例えば最大利得 3dBi のアンテナであれば 0dB までの角度が半値角ですし、最大利得が 0dBi ならば -3dBi までの角度が半値角となります。どの角度でも変動幅が -3dB 未満に収まるならば、全周 360 度にほぼ均等な性能を持つ無指向性アンテナということになります。<br /><br />アンテナの指向特性は対称であるとは限らず、水平面(上から見た場合)と垂直面(横から見た場合)で異なります。慣例的に垂直面を E-Plane、水平面を H-Plane と呼びますが必ずしも「縦/横」を意味している訳ではなく、本来は電磁波伝達における電気面(E)/磁気面(H)の記号を表わしています。<br />アンテナの基本形であるダイポールアンテナを地面に対し垂直に立てた場合、電気面の振動が垂直・磁気面の振動が水平に現れるので「慣例的に」 E/H を垂直・水平と見做しても構わないのですが、アンテナの形式や設置形態によっては必ずしも E/H と天地の方向は一致しないので注意してください。<br /><br />一口に「高性能アンテナ」と言っても、半値角は何度なのか、E-Plane・H-Plane に対しどのように広がっているのかによってその特性は違ってきます。そして我々人類は地表面付近を主な生活活動の場としているため、垂直面に狭く、水平面に広い指向性のアンテナがよく利用されます。以下、代表的なアンテナの名称と特性、そしてその主な用途について説明してゆきます。<br /><br /><br /><b>オムニアンテナ</b><br /><img style="MARGIN: 0px 20px 20px 0px; WIDTH: 109px; FLOAT: left; HEIGHT: 145px" class="mt-image-left" alt="omni.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/omni.jpg" width="110" height="148" />「垂直面に対して狭く、水平面に対して広い」アンテナの代表格が<b>オムニアンテナ(Omnidirectional Antenna)</b>です。これは水平面に対して 360 度ほぼ無指向性、垂直面には 10 度程度の鋭い指向性を持ち、その電波放出面は円盤状となります。外見的には棒を立てたように見えますが、内部的には小型のアンテナを縦に幾つも重ねた「トーテムポール」のような構造を持っており、「<b>コ・リニア・アンテナ</b>」とも呼ばれます。オムニアンテナの利得は一般的に 5～10dBi 程度です。<br />オムニアンテナの欠点は「電波が円盤状に出る」ことにあります。これは送受信機がほぼ同じ高さにある時は便利なのですが、携帯電話のように送信機側だけ高所に設置すると、アンテナ直下に大きな死角ができてしまいます。また、水平面から上に出る電波は宇宙空間に飛んで行って消えてしまいますので、実質的な性能が半分になってしまいます。<br /><br /><b><br /><br />セクターアンテナ<br /></b><img style="MARGIN: 0px 20px 20px 0px; WIDTH: 111px; FLOAT: left; HEIGHT: 113px" class="mt-image-left" alt="patch.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/patch.jpg" width="128" height="128" />この欠点をカバーできるのが<b>セクターアンテナ(Sector Antenna)</b>で、これは水平面に対し 90～180 度、垂直面に 30～60 度という非対称な特性を持ちます。これをぐるりと輪状に束ねて高所に設置すると、「円盤状」かつ「下向き」に特化した特性のアンテナを作ることができます。これを「セクターアンテナ・アレイ」と呼びます。セクターアンテナ１器あたりの利得は 5～12dBi 程度です。<br />高所に設置されたセクターアンテナ・アレイは近傍から遠方まで広い範囲をカバーすることができ、しかも地上の受信機に対して有効にエネルギーを放出することができます。このため携帯電話の基地局などに利用されていますが、複数のアンテナ素子を使うため高価なうえ、複数のアンテナを束ねるための高周波分配器が必要になるなどの欠点も持っています。<br /><br /><br />セクターアンテナの一種で、水平・垂直面に対称な 60～90 度程度の指向性を持つものを<b>パッチアンテナ(Patch Antenna)</b>と呼びます。携帯電話の世界では文字通り、ビル影などによって生じた不感度地帯を埋める(パッチ当て)するために用いられています。無線 LAN の世界では簡易な指向性アンテナとして、通信距離の延伸に用いられることが多いです。パッチアンテナの利得も 5～12dBi 程度です。<br /><br /><b><br /><br />高指向性アンテナ</b><br /><img style="MARGIN: 0px 20px 20px 0px; WIDTH: 212px; FLOAT: left; HEIGHT: 88px" class="mt-image-left" alt="yagi.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/yagi.jpg" width="248" height="128" /><br /><br /><br /><br /><br /></p>
<p><br /><img style="MARGIN: 0px 20px 20px 0px; WIDTH: 130px; FLOAT: left; HEIGHT: 91px" class="mt-image-left" alt="parabola.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/parabola.jpg" width="156" height="142" />八木アンテナ(正確には<b>八木・宇田アンテナ</b>)と<b>パラボラアンテナ</b>は、いずれも鋭い指向特性を持ち、いわゆる「指向性アンテナ」の代表格です。利得は 10dBi 以上が普通で、パラボラアンテナのなかには 30dBi に達するものもあります。この位のアンテナになると半値角は 5 度程度しかないため、それに応じた高精度で設置する必要があります。<br /><br />八木とパラボラの使い分けは波長(周波数)によるもので、八木アンテナは 50MHz～5GHz 程度、パラボラは 1GHz～10GHz 程度の領域で使われます(註)。<br /><br />八木アンテナは枝(素子エレメント)の長さが 1/2 波長に一致するため、50MHz 帯ではアンテナ幅約 3m となり実用上限ちかい大きさになります。逆に 5GHz では約 3cm となり、これ以上高い周波数では小さくなりすぎて実装精度の実現が難しくなるなど実用性が低くなります。<br /><br />一方、パラボラアンテナの大きさと周波数に直接の相関はありませんが、その利得は面積に比例・波長の二乗に反比例する特性があります。つまり周波数が高くなればなるほど(波長が短くなればなるほど)小直径でも高い利得が得られるわけで、逆に言えば低い周波数域で同じ利得を得ようとするとパラボラは八木アンテナより巨大化してしまいます。両者の拮抗点はおよそ 3GHz 付近にあるため、2.4GHz 用の高指向性アンテナはパラボラより八木が、5GHz 用は八木よりパラボラのほうが品揃えが豊富になっています。<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em">(註)ちなみに TV 放送用としては VHF が 90～222MHz 帯、UHF が 470～770MHz 帯、衛星放送が 12～14GHz 帯を使っています。TV 用のアンテナに「大きな八木(VHF 用)」「小さな八木(UHF 用)」「パラボラ(衛星用)」が分かれているのは、使用周波数と密接な関連があるのです。</font><br /><br />八木やパラボラアンテナは指向性が非常に強いため、相手が何処にいるか判らない移動局の通信には向きません。固定局に使う場合であっても、原則として 1:1 の通信に向いています。この特性のため、固定局同士のリンクを無線で行うバックホール(Backhaul)という用途によく使われています。<br /><br /><br /><b>無指向性アンテナ</b><br /><img style="MARGIN: 0px 20px 20px 0px; WIDTH: 103px; FLOAT: left; HEIGHT: 171px" class="mt-image-left" alt="rubber_duck.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/rubber_duck.jpg" width="130" height="200" />ノートパソコンや携帯電話の子機のように動き回る移動局の場合、受信機と送信局の位置関係は刻々と変わってゆきますので、むしろ指向性が無い＝全方位から均等に電波を受信する性能が求められます。つまり、利得が 0dBi に近いほど欠点のない優秀なアンテナという事になります。<br />無指向性アンテナの代表選手がモノポールアンテナで、基本原理は 1/4 波長の導線を垂直に立てたものです。「<b>ホイップアンテナ</b>」と呼ばれることも多く、また無線 LAN 用のプラスチック製アンテナ(弾力性プラスチックの鞘内にアンテナ素子が埋め込まれている)は「<b>ラバーダック(Rubber Duck)</b>」と呼ばれることもあります。市販の無線 LAN 機器ではもっともよく目にするタイプのアンテナと言えるでしょう。<br />モノポールアンテナの放射パターンは「水平八の字」で、真上・真下方向には感度を持ちません。各メーカー毎にいろいろ工夫されていますが、完全無欠の全指向性特性を得ることは難しく、2～3dBi 程度の利得(すなわち方向による感度のバラツキ)を持つものが多いです。<br /><br /><br /><br /><br /><img style="MARGIN: 0px 20px 20px 0px; WIDTH: 105px; FLOAT: left; HEIGHT: 65px" class="mt-image-left" alt="chip.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/chip.jpg" width="60" height="40" />携帯機器ではアンテナが突出することを嫌い、筺体内に埋め込むことが求められることもあります。このような場合には基盤上にパターンを刻印した<b>パターンアンテナ</b>、その薄膜版である<b>フィルムアンテナ</b>、あるいは部品状の<b>チップアンテナ</b>が用いられます。チップアンテナは直接基盤上に実装できる数ミリ角の部品でアンテナの役割を果たすので、超小型の携帯機器に重宝されています。チップアンテナはその内部に複雑な線路が畳み込まれており、動作原理は螺旋アンテナ(ヘリカルアンテナ)に近いものです。<br /><br />パターンアンテナやチップアンテナは一般的にモノポールアンテナより内部損失が大きくて効率が悪く、指向特性も凸凹していて必ずしも優等生ではありません。また小型ゆえに他の電子部品や筺体と隣接した位置に置かれることが多く、干渉による特性変化を受けやすいのも悩みです。携帯機器では利用者が手で握った時に特性がどう変わるかを考慮して設計しないと、実験室では優秀でも実製品使用環境では本来の性能を引き出せなくなる恐れもあります(※註)。<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em">(※註)Apple 社の iPhone4 が発売されたとき「右手から左手に持ち替えた途端に通話が切れる」と大騒ぎになりましたが、これは本体周囲の金属バンドをアンテナに利用する設計の弊害でした。<br /></font><br /><br /><b><font style="FONT-SIZE: 1em">アダプティブ・アレイ・アンテナ</font></b><br />都会のビルやマンションの屋上に、四ツ叉や八ツ叉になったアンテナを見かけた記憶をお持ちの方もおられるかもしれません。これは携帯電話のセル局に使われている<b>アダプティブ・アレイ・アンテナ</b>です。<br />アダプティブ・アレイ・アンテナとは複数のアンテナ素子を結合し、各素子の ON/OFF や素子間の遅延(位相)を電気的に操作することで指向特性を操作できるアンテナを指します。その大がかりなものは軍事用のフェイズド・アレイ・レーダーですが、もっと小規模なものは民間にも広く使われており、その代表例が携帯電話のセル局です。<br />家電製品の世界では、60GHz 帯を使う WiHD 規格がアダプティブ・アレイ・アンテナを採用したことは以前にも紹介しました。これ以外に、3x3 ストリームの 802.11n 無線 LAN(「公称 450Mbps 対応」として売られているもの)では、３ないし４本のアンテナをあえて２ストリームで使い、使用するアンテナ組み合わせを切り替えることで指向性を操作する<b>ビーム・フォーミング(Beam Forming)</b>機能を持っているものもあります。これも一種のアダプティブ・アレイ・アンテナです。<br /><br />この連載では何度か「高指向性アンテナは設置が難しい」「高指向性アンテナは移動局には向かない」と繰り返してきましたが、それはアンテナに指向性が一方向に鋭く突出しており、送受信機がその範囲に収まるように設置しないと性能がガタオチになるからです。しかしアダプティブ・アレイ・アンテナの場合、状況に応じて適応的(アダプティブ)にアンテナ指向性が調整されるので心配ありません。つまり、<b>指向性アンテナの高性能と無指向性アンテナの使い勝手を兼ね備えたアンテナ</b>といえます。その半面、アダプティブ・アレイ・アンテナは<b>サイズが大きくてコストが高く消費電力も大きい</b>欠点も持っており、例えば携帯電話ならば基地局にアダプティブ・アンテナを導入するのは容易でも、子機まで全部アダプティブにするという訳にはなかなかゆきません。<br />また、「状況に応じて」「適応的に」と言っても、何をどういう基準で状況判断し、どのようなアルゴリズムで適応するのかというアルゴリズムもアダプティブ・アンテナの性能を左右します。802.11n 無線 LAN では「アクティブ方式」と「パッシブ方式」の２種類のアルゴリズムが使われています。その詳細と利害得失については、いずれまた別の機会に御紹介しましょう。<br /><br /><br /><b>まとめ</b><br />「高性能アンテナ」と一口に言っても、使用状況によって必要とされる「性能」そのものが変化することを理解して頂けたかと思います。携帯機器ではむしろ無指向性に近いほうが「高性能」であるという話など、技術者にとっては常識であっても世間一般的にはあまり知られていないかもしれません。そういえば、一昔前には携帯電話の裏にシールを張るとか、アンテナの先端にネジ込むだけで「感度アップ！」をうたった胡散臭い製品が漫画雑誌の広告などに沢山出ていましたが、今では見なくなりましたね。アンテナの「感度(利得)」がどういう性質のものかを理解していれば、ああいった製品がいかに怪しいかもすぐにわかると思うのですが。<br />さて次回は更にアンテナについて、「カタログの読み方」を解説しようと思います。<br /><br /></p>
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    <title>無線 LAN と通信距離について(1)</title>
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    <published>2011-11-25T00:30:00Z</published>
    <updated>2011-11-25T00:29:54Z</updated>

    <summary>無線関連の製品を扱っていると、よく耳にするのが「どの位の距離まで使えるの？」とい...</summary>
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        <![CDATA[無線関連の製品を扱っていると、よく耳にするのが「どの位の距離まで使えるの？」という質問です。今回のシリーズではこの「無線と距離」について、基本原理から順を追って解説してゆきたいと思います。<br /><br />]]>
        <![CDATA[<b>フリスの公式<br /></b>無線 LAN は電波(電磁波)を用いた通信システムです。電磁波が空間を伝わる理屈はマクスウェルの電磁方程式で記述されますが、あまりに難しくなりすぎるのでここでは扱いません。距離と電波強度の関係は、マクスウェル方程式から導出された<b>フリス(Friis)の伝達公式</b>という方程式で記述されます。ここではフリス公式を土台として、無線 LAN の通信距離限界について代数的に算出してみます。<br /><br />まず、フリス公式の基本形を式(1)に示します。これは要するに、受信側の電力は送信側の電力とアンテナの性能(利得)に比例し、通信距離の二乗・波長の逆二乗に反比例するという式です。パワーが大きかったりアンテナの性能が良いほど好調な通信が期待でき、距離が延びるほど通信条件は劣化してゆくという、いわば当たり前のことを示しています。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis1.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis1.jpg" width="200" height="232" />式(1) Friis 公式の基本形<br /></div><br />これを変形して、送信電力に対する受信電力比のかたちにしたものを式(2)に示します。ここで(λ/4πD)2の部分も利得の一種(GF)だと見做すこともでき、しかしこの部分は利得ではなく損失なので GF=1/LB とみなせば式(3)が導出されます。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis2.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis2.jpg" width="200" height="96" />式(2) Friis 公式を送受信電力比で表現したもの<br /></div><br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis3.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis3.jpg" width="200" height="178" />式(3) Friis 公式から損失LBのみを取りだしたもの<br /><br /></div>これまでの式では、利得や損失は一次係数(倍数)として表現していました。しかし通信の世界ではふつう常用対数表記であるデシベルを使います。式(3)をデシベル表記にすると式(4)を得ます。ここで更に、距離に関係のない部分(4π/λ)と距離に関係する部分(D)を分離すると式(5)を得ることができます。<br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis4.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis4.jpg" width="208" height="128" />式(4) 損失を対数表現したもの<br /></div><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis5.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis5.jpg" width="280" height="56" />式(5) 損失を波長λと距離Dに関する式に分解したもの<br /></div><br />ここまで紹介してきたモデルでは、電波は障害物のない真空中を球状に拡散しながら広がってゆくことが想定されています。しかし宇宙空間でないかぎり、実際の通信環境には反射物もあれば障害物もあります。これを正確にモデル化するのは難しいのですが、簡易な近似式として式(5)の右側に係数を置くことが行われます(式(6))。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis6.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis6.jpg" width="304" height="76" />式(6) 空間伝達係数を置いた近似式<br /></div><br />この空間伝搬係数 n は無次元数で、n = 2.0 だと障害物のない理想空間、n &lt; 2.0 ならば電波が反射しながら伝達してゆくモデル(導波管など)、n &gt; 2.0 は障害物に吸収され減衰しながら伝搬してゆく様子を表わしています。<br /><br />
<div align="left">さて「通信可能な距離」とは、通信に用いられるエネルギーの総和が伝達損失を上回る距離を示します。すなわち通信限界距離を算出するには、<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis7.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis7.jpg" width="156" height="148" />式(7) 伝達限界を定める不等式<br /></div></div><br />となる式を解けば良いわけです。単位を統一するため、電力や利得をデシベルで表現すると<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis8.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis8.jpg" width="408" height="148" />式(8) 伝達限界を定める不等式(対数表現)<br /></div><br />となります。与えられた条件における最大通信距離は、通信エネルギーが伝達損失と一致する限界点となります。すなわち、送受信電力＋送受信アンテナ利得の総和が伝達損失と一致する距離を求めれば理論上最大通信距離が算出できます。この許容伝達損失上限を LP, それに応じた理論上最大通信距離を d と置くと、式 (6) および式 (8) から<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis9.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis9.jpg" width="418" height="120" /></div>
<div align="center">式(9) 伝達限界を求める方程式<br /></div><br />と書きかえることができます。これを更に変形し、左辺に距離が出るようにしたものが式(10)です。この近似式を用いることで、与えられた条件(波長、送信出力、受信感度、送信／受信系の利得／損失、空間伝達係数)における通信限界条件を推算することができます。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="friis10.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/friis10.jpg" width="216" height="56" />式(10) 伝達限界を求める方程式(距離算出)<br /></div><br /><br /><b>伝達距離のシミュレーション</b><br />では、この公式を用いて伝搬係数と到達距離がどのように相関してゆくかを見てみましょう。ここでは送信出力 14dBm + アンテナ利得 0dB, 受信感度 -76dBm + アンテナ利得 0dB, マージン 10dB として許容伝達損失 80dB を仮定しています。伝搬係数は 2.0(理想空間)～4.0(電波非透過性の障害物多数)の間で変化させています。<br /><br />
<div align="center"><a onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/07/distance-chart1-64.html','popup','width=795,height=478,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false" href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/07/distance-chart1-64.html">シミュレーション(1) 伝達係数～到達距離の相関グラフを表示</a><br /></div><br />これを見ると、まず 2.4GHz と 5.2GHz の伝達距離差が結構あることがわかります。伝達条件が悪くなるに従い 2.4GHz が急激に落ちてゆくようにも見えますが、実際には回折(回り込み)作用もあるので、これほど急激に落ちるわけではありません。経験則的には障害物の多い環境(NLOS;No Line-Of Sight 環境という言い方をします)では 2.4GHz のほうが有利に伝搬しますが、いずれにせよアンテナ間に障害物が挟まるとあっという間に通信距離が半分や 1/4 に落ちてしまう、というのが無線 LAN (に代表される、ギガヘルツ帯の電波を使った通信システムの)性質です。そしてその伝達条件は反射や回折によって変化しますので、障害物のある環境下での正確な通信距離を求めるのは非常に困難です(※註)。<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em">※註 式(6) はあくまで大雑把な近似式に過ぎません。<br /></font><br />次は送信出力と到達距離の相関を見てみます。今度は伝搬係数を 3.0 に固定、送信出力は 5dBm (3mW)～25dBm(300mW) の間で変化させています。<br /><br />
<div align="center"><a onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/07/distance-chart2-66.html','popup','width=796,height=479,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false" href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/07/distance-chart2-66.html">シミュレーション(2) 送信出力～到達距離の相関グラフを表示</a><br /></div><br />こうして見ると、出力を上げても大して到達距離が伸びないことがわかります。たとえば 2.4GHz の線に注目すると、出力を 10 倍(5dBm→15dBm すなわち 3mW→30mW)に上げても距離は 11m→24m で２倍強、100 倍(5dBm→25dBm すなわち 3mW→300mW) に上げても 11m→50m で５倍弱しか伸びていません。何故こうなるかというと、電波強度は通信距離の二乗に反比例して弱くなるからです。<br /><br /><b>押しても駄目なら・・・</b><br />送信パワーを 10 倍にする(+10dB)のは容易ではなく、100 倍にする(+20dB)のはもっと困難です。消費電力も大きくなりますし、無線 LAN では法定上の出力上限が存在するので無闇にパワーを上げられません。しかし、アンテナの工夫で送受信効率を 100 倍にするのは比較的容易です。<br /><br />「アンテナの性能」を示す指標は幾つかありますが、最も代表的なものは(既に何度か出てきている)「利得(ゲイン;Gain)」です。ここはよく誤解されているところなのですが、<b>アンテナの「利得」とは「電波をどれだけ効率よく拾うことができるか」を示す値ではなく、「どれだけ特定方向に絞って電波を放射できるか(あるいは特定方向からの電波に絞って受信できるか)」を示す値です。</b>例えるならば、騒音のなかで遠距離の会話を行うのに必要なのは「感度の良い耳」ではなく「メガホンや集音器」である、ということです。「耳の感度」だけを上げても(例えば補聴器を付けてボリュームを目一杯に上げても)、目的の声ばかりか周囲の騒音も同じだけ大きく聞こえるので、結局もとの木阿弥です。これを専門的には「信号／雑音比(SNR:Signal / Noise Ratio)が同じ」と表現します。<br /><br />前述したように、自由空間に置いたアンテナから放射された電波は 360 度全方位に対し広がりながら放射されます。しかし距離を置いた 1:1 の通信であれば、横や後ろに放射された電波は全部無駄になってしまいます。同様に、受信側では横や後ろから来るのはノイズでしかなく、見当違いの方向から電波を受けることもやっぱり無駄です。360 度全方位に対して放射する・あるいは全方位から受信する電波のうち、有意なエネルギーはそのごく一部に過ぎず、他はすべて無駄になってしまうわけです。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="ant0db.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/ant0db.jpg" width="488" height="272" />図1 アンテナ利得=0dBi の場合<br /></div><br />送信機から見て受信機のいる方向が特定できるならば、その方向にエネルギーを集中することで送信パワーを上げたのと同じ効果を得ることができます。例えば半球状の放射特性を持つアンテナならば、球状の放射特性アンテナに対して２倍のパワーを出したのと同じ効果が得られます。この場合「アンテナの利得が２倍」であると解釈することができ、一般にはそれをデシベルに換算した「アンテナ利得 3dBi」として表記します。dB の後につく「i」は全方位性＝isotropic の i を意味し、全方位性アンテナに対するエネルギーの集中度合いを示しています。送信側と受信側に 3dBi のアンテナを付ければ、送信側で２倍・受信側で２倍なので、送信パワーを４倍に上げたことに相当します。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="ant3db.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/ant3db.jpg" width="312" height="288" />図2 アンテナ利得=3dBi の場合<br /></div><br />エネルギーの集中度合いを増せば、放射・受信するエネルギーに対する有意エネルギーの比率を更に上げてゆくことができます。これが「高利得アンテナ」の働きであり、すなわち「高利得アンテナ」とは「高指向性アンテナ」を意味しているのです。図３は図２より更に放射角を半分に絞った場合、すなわち 3dBi の２倍で 6dBi の利得を持つアンテナの原理図です。この場合、システムとしての総利得は 6dB+6dB で 12dB 相当、送信パワーを 16 倍に上げたのと同じ効果が得られるわけです。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0px auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="ant6db.jpg" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/ant6db.jpg" width="312" height="248" />図3 アンテナ利得=6dBi の場合<br /></div><br />この調子で送信側・受信側に 10dBi のアンテナを付ければ、それだけで出力を 100 倍にしたのと同じ効果が得られます。しかしアンテナ利得を上げるということはアンテナ指向性を上げるということであり、送信側・受信側がお互いに「相手がどこにいるか」を正しく把握し、その方向にアンテナを向けなければ通信が成立しなくなるということでもあります。そしてアンテナ指向性というのは１種類ではありません。同じ利得(dBi)のアンテナでも、その指向性が上下左右にどう広がっているかで様々な種類があり、用途に応じて使い分けられています。<br /><br />というところで、次回はアンテナの種類とその特性・用途についてご紹介したいと思います。<br /><br />
<div><br /></div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>]]>
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    <title>無線 LAN が目指すもの(5)</title>
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    <published>2011-10-25T01:00:00Z</published>
    <updated>2011-10-25T01:02:38Z</updated>

    <summary>「より速く」「より安く」「より遠くへ」と続けてきたこのシリーズ、今回は「より安全...</summary>
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        <![CDATA[<div>「より速く」「より安く」「より遠くへ」と続けてきたこのシリーズ、今回は「より安全に」をテーマにしたいと思います。ただし今回は未来の話というより、今までの経緯を説明することに多くを割くことになりますのでご了承ください。今回のトピックは「WEP とは何だったのか」「WPA/WPA2 をめぐる混乱」「救世主 WPS」「無線 LAN セキュリティの現在、過去、未来」です。</div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>
<div><b><br /></b></div>]]>
        <![CDATA[<div><b>WEP とは何だったのか</b></div><div><br /></div><div>WEP は Wired Equivalent Privacy(有線相当の安全性)の略で、1997 年に元祖 802.11 無線 LAN 規格が制定されたときから含まれていたセキュリティ仕様です。WEP の目的はその名が示すように「有線相当の安全性」を提供することでしたが、どちらかと言えば「最低限のセキュリティを最低限のコストで実現する」という作り手の事情が多く影響していた感は否めません。</div><div>WEP の暗号化メカニズムは非常にシンプルなもので、RC4 と呼ばれるアルゴリズムに秘密鍵を与えてパケットデータを暗号化させるだけです。ただし同じ鍵を何度も繰り返し利用することによる鍵情報の推定を避けるため、IV(Initialization Vector)と呼ばれる乱数情報をパケット先頭に付加し、これを毎回変化させることで鍵の推定を困難にするつもりでした。</div><div>WEP の問題はまず、この IV が充分な長さを持っていなかったことでした。WEP の IV 長は 24bit で、これは 1677 万パケット毎に同じ値が巡ってくることを意味します。1677 万といえば「凄く大きな数字」に思えますが、11Mbps ÷ 1500 バイト/パケットで計算すれば流量は 960 パケット毎秒となり、この調子で通信が続けば 5 時間弱の周期で 1677 万パケットが流れる計算になります。もっとも同じ鍵を二度使ったからといってすぐに鍵情報が推定できる訳ではありませんが、長期間にわたって盗聴を続けることができれば同じ鍵で暗号化された情報を数十、数百と集めることができ、それを統計解析にかけることで容易に暗号鍵を逆算することができてしまいます。</div><div>しかし WEP の問題は IV 周期が短いだけでなく、IV と秘密鍵の組み合わせが単純な結合演算によってなされていたことにもありました。このため特定の IV パターンでは秘密鍵の情報が推定しやすい「Weak IV」という落とし穴があり、2001 年頃には Weak IV を選択的に待ち受けることにより数時間程度の盗聴で秘密鍵が判明してしまうことが明らかにされました。その後も WEP セキュリティホールの指摘は相次ぎ、市販のノートパソコンでも数分程度で解読できることが発表されるに至って WEP に対する信用は地に墜ちました。今日ではもはや、WEP による安全性は「気休め」以上のものだとは考えられていません。</div><div>WEP の脆弱性は「暗号アルゴリズム実装の失敗例」「繰り返してはならぬ教訓」として多くの場で取り上げられています。とはいえ、実装と運用が比較的容易で仕様の混乱も少なく、「無いよりマシ」程度とはいえ Wi-Fi 無線 LAN 普及初期からセキュリティ機能を与えていた事実には一定の評価を与えて良いのではないか、と私は思います。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>TKIP の功罪</b></div><div><br /></div><div>WEP の脆弱性は早い時期から指摘されており、WEP に代わるセキュリティ機構を標準化すべく IEEE802.11i 分科会がスタートしたものの、その制定は難航し最終標準の確定まで時間がかかると思われました。しかし WEP の脆弱性問題を座視するわけにもゆかなかったため、2003 年に Wi-Fi Alliance において独自に制定されたセキュリティ規格が WPA (Wi-Fi Protected Access)です。</div><div>WPA は 802.11i のドラフト案をベースとしており、将来規定される 802.11i 標準にできる限り近い(可能であれば全く同じ)仕様となることが考慮されていました。WPA には当時判明していた WEP の弱点をカバーするとともに、既存のハードウェア上でドライバ/ファームウェアをアップデートするだけで適用可能なことが求められました。そのため暗号アルゴリズムは WEP と同じ RC4 を使い、ただし秘密鍵と暗号鍵の関係をより複雑にすることで逆算を困難にする TKIP (Temporal Key Integrity Protocol)という機構が採用されました。</div><div>かくして WEP に代わるセキュリティ標準として登場した WPA でしたが、期待に反して(?) IEEE802.11i の制定はスムーズに進み、2004 年には仕様公開に漕ぎ付けました。この 802.11i に基づき、Wi-Fi Alliance によって改めて規定されたセキュリティ標準が WPA2 です。WPA2 では TKIP に代わり、より安全性の高い次世代暗号 AES (Advanced Encryption Standard) が標準実装として採用されました。</div><div>しかし「WPA」と「WPA2」という２つのセキュリティ「標準」が相次いで登場したことは、ユーザーの間に混乱を招くことになってしまいました。WPA と WPA2 に互換性はあるのか無いのか？互換性が無いなら一体何が違う？WPA2 のほうが新しくて良いものなの？そうだとすれば、WPA を使う意味はどこにあるの？等々...。WEP 脆弱性を早急に対策すべく導入された WPA-TKIP でしたが、中途半端な時期に中途半端な仕様を導入してしまったことは功罪相反する結果になってしまったのかも知れません。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>WPA と WPA2 をめぐる混乱</b></div><div><br /></div><div>WPA と WPA2 は「似て非なるもの」です。ヘッダフォーマットや鍵交換方式が異なるため直接の互換性はありません。しかし、両者で定義されている機能はほぼ同等です。暗号アルゴリズムとして WPA では RC4(TKIP)、WPA2 では AES(CCMP) の実装が義務付けられていますが、オプションとして WPA-AES や WPA2-TKIP の存在も認められています。同じ暗号アルゴリズムで使うかぎり両者の安全性に大差はなく、「同じ AES でも WPA2 のほうが鍵長が長い」とか「WPA2 では二重に暗号化する」「WPA2 にはデータ改竄検査機能があるが、WPA には無い」といったような解説は何かの誤解か間違いです。</div><div>しかしながら、「WPA/WPA2」「TKIP/AES」の有意組み合わせだけで４種類もあることは、それ自体が既に混乱のもとです。WPA-TKIP, WPA2-AES の組み合わせでしか使えない製品も少なくありませんが(※註)、その表記は「WPA」「WPA2」としか書かれていなかったり、あるいは「TKIP」「AES」としか書かれていなかったりで統一されていません。一部のメーカーでは TKIP/AES を自動認識する「WPA-AUTO」だとか、WPA/WPA2 を同時稼動させる「WPA-MIXED」といったモードを設けているところもありますが、その機能の意味するところがユーザーに正しく伝わらなかった場合には、更なる混乱を招いてしまう事もあります。</div><div><br /></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註)そもそも　WPA2-TKIP で動く製品は多くありませんし、AES が使えるのにわざわざ TKIP を使う意義も疑問です。ですが著名な実装系の幾つか...端的に言えば Windows7 では WPA2-TKIP がサポートされています。[</font><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; "><a href="http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/05/win7-wifi-25.html" onclick="window.open('http://www.silex.jp/blog/wireless/assets_c/2011/05/win7-wifi-25.html','popup','width=631,height=514,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false">表示</a>]</font></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; "><br /></font></div><div>WPA/WPA2 に絡んでもうひとつややこしい話題は、WPA/WPA2 ともに「WPA(WPA2)-Personal」と「WPA(WPA2)-Enterprise」という２つの動作モードがあることです。しかし Personal と Enterprise の違いは暗号強度の強弱ではなく、鍵情報を個別に管理するか、集中管理するかという違いだけです。</div><div>Personal 版は PSK(Pre Shared Key) と呼ばれることもあり、要するに AP 側・クライアント側ともに暗号鍵を手動設定するモードのことを指しています。これに対して Enterprise 版のほうは「認証サーバ」と呼ばれる仕組みを用い、一箇所のサーバで集中的に鍵管理を行うモードのことを指しています。認証サーバの設定運用は楽ではないので、十数台程度の機械しか扱わない場合は PSK で個別に設定管理したほうが良く、逆に数百台の機械を扱う場合には認証サーバを立てて一括管理したほうが良い、という風に使い分けられます。</div><div>なお WPA-Enterprise には「EAP認証方式の乱立」という頭の痛い問題があるのですが、長くなりすぎるので今回は触れません。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>救世主？WPS</b></div><div><br /></div><div>歴史的経緯や TKIP の功罪はともかく、無線 LAN のセキュリティ規格について「混乱がある」のは事実であり、そして改善されなければならない課題でした。理想的には、店で買ってきた製品を箱から出して電源を入れればすぐにつながることが望まれます。しかし本当にそうしてしまうと、隣の部屋の住人やら、誰かのデータを盗聴しようとする悪い人にも「すぐに」つながってしまうことになってしまい、それはそれで困ります。いかにして「簡便性」と「安全性」を両立するかが最大の課題でした。</div><div>この問題に対しては 2005 年頃から各社さまざまな方式が提案され、一時期は似て非なる標準が乱立する様相を呈していましたが、2007 年に Wi-Fi Alliance による WPS(Wi-Fi Protected Setup) として標準化されました(※註)。WPS では当初「USB メモリ方式」「近距離無線方式(NFC)」「押しボタン方式(PBC)」「暗証コード方式(PIN)」の４方式が検討されていましたが、最終的には PBC と PIN 方式の２つに絞られました。</div><div><br /></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註)企画当初には Wi-Fi Simple Config と呼ばれていたため、略して <b>WSC</b> と呼ばれることもあります。また、Microsoft 社は WPS 互換の機能を Windows Connect Now 略して<b> WCN</b> と呼んだりもしています。<b>WPS</b> に <b>WSC</b> に <b>WCN</b>...似て非なる略称が氾濫するのは勘弁して欲しい、と私も思います。</font></div><div><br /></div><div>PBC 方式の場合、アクセスポイントと端末のそれぞれについて「ほぼ同時(30秒～3分くらい)」にボタンを押すことで「接続したがっている相手がいる」と識別し、特殊なパケットを交換して秘密情報を共有します。</div><div>PIN 方式の場合はもう少し複雑で、少なくともどちらか一方(普通は AP 側、設定用 WEB 画面を流用する)に入力機構が必要となります。デバイス側に LCD 等が付いている場合は乱数生成された PIN コードが、表示器を持たないデバイスでは製造時に付加された PIN コードがラベルに印刷されているので、これを AP の WPS 設定用 WEB 画面から入力することによって「正しい接続相手」を識別し秘密情報を共有します。</div><div>いずれの方式も、「部屋の外で盗聴しようとしている悪い人には知り得ない」情報を用いて安全な鍵交換を実現している事になります。PBC 方式の場合は「ボタンを押したという行為(が行われた時間)」、PIN 方式の場合は「PIN コード」がそれにあたります。</div><div>なお、Wi-Fi Alliance は先日(2010 年末)に WPS 2.0 仕様を公開しました。これは従来の WPS の仕様をより明確に再定義し、Wi-Fi Direct への対応など一部の新機能を取り込んだもので、WPA/WPA2 のように「似ているけど直接の互換性はない」ということはありません。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>無線 LAN セキュリティの現在、過去、未来</b></div><div><br /></div><div>WPA2-AES + WPS2.0 は Wi-Fi 登場から 10 年経って、ようやく辿りついた一つの到達点です。今後しばらくの間「WPA3」や「WPS3.0」が発表されることはないと思いますし、もしそういう場合にも従来製品との互換性が考慮されたものになるでしょう。</div><div>しかし、過去 10 年間の混乱はまだ収まっていません。全ての製品が WPA2 を実装している訳でもありませんし、新製品に WEP が搭載されなくなった訳でもありません。近年の話では携帯ゲーム機の某ベストセラー機種が「WEP のみ」の実装になっているがために、安全性が確保できないと判っていながら WEP を載せざるを/使わざるを得ない、というような事情もあったりします。結果としてユーザーの前には「WEP40」「WEP128」「WPA-TKIP」「WPA-AES」「WPA2-TKIP」「WPA2-AES」「WPA/WPA2-AUTO」「WEP/WPA-MIXED」のような選択肢が表示され、「わからない」「つながらない」「何なんだこれは」「結局どうしたらいいの？」という悲鳴がネット質問箱やカスタマーサポート電話に溢れることになっています。</div><div>当分のあいだ、WEP や WPA-TKIP など過去のシガラミが消えてゆくのを待ちながら、WPA2+WPS2.0 という標準が普及しデファクトスタンダードとなって、「無線 LAN 設定なんて簡単だよ」と言われるようになるのを待つことになるでしょう。</div><div><br /></div><div>WPA2-AES はいつまで安全に使えるのでしょうか。今のところ、AES には有効な攻撃方法が発見されていません。力任せの総当たり攻撃で 256bit の鍵を破ろうと思えば、一回の演算が 1nsec で出来るとしても 10^68 秒という途方も無い時間がかかる計算になります。10^68 秒と言われてもピンときませんが 10^48 兆年で、演算を一兆倍に高速化し一兆台で並列演算してもまだ 10^24 兆年かかるという途方もなさです(※註)。今後解析が進めば幾つか脆弱性が判明してゆくかも知れませんが、鍵情報数十ビットを知る方法が明らかになった程度では AES 安全性は崩れません。控えめに見積もっても今後 10 年くらい、256bit AES には実用上充分な安全があると考えて良いでしょう。</div><div><br /></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註)WEP/TKIP で用いられている RC4 は鍵長 128bit なので AES に匹敵する暗号強度がありそうに思いますが、内部構造が単純なので逆算されやすく、相関統計や差分比較など「力任せの総当たり」以外の攻撃法で比較的簡単に破られてしまいます。</font></div><div><br /></div><div>とはいえ、256bit AES とて未来永劫絶対に安全とは言えません。コンピュータが小型高速化し、より大量のデータをより高速に演算できるように進歩してゆく限り、いつかは 256bit AES の安全性も揺らぐ日が来るでしょう。その時には「WPA3.0」が出るのでしょうか？</div><div>個人的には、ネットワーク固有のデータリンク層ハードウェアへ一律に暗号化を任せるのはそろそろ止めにして、トランスポート層やネットワーク層のソフトウェア(IPsec や TLS)で動的にセキュリティパイプを確保するようにして欲しい、と思っています。そうしなければ、セキュリティ規格が変わるたびにまた上位互換性だとか機材の買い替えだとかで大騒ぎすることになりますから...。</div><div>もっともモノを売る製造業としては、数年に一度くらい「買い替え需要」が発生してくれた方が嬉しいのかも知れませんけど。</div><div><br /></div>]]>
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    <title>無線 LAN が目指すもの(4.5)</title>
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    <published>2011-09-29T00:00:00Z</published>
    <updated>2011-09-21T01:03:01Z</updated>

    <summary>今回は番外編です。 前回 WiMax に触れたとき、2000 年代初頭の「ラスト...</summary>
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        <![CDATA[<div>今回は番外編です。</div>
<div>前回 WiMax に触れたとき、2000 年代初頭の「ラスト・ワンマイル」問題を取り上げました。結局 ADSL の一人勝ちという形でこの問題は幕を閉じたのですが、この問題に挑んだ技術の中には忘れ難いユニークなものもありました。ここではその幾つかを紹介したいと思います。鬼が出るか蛇が出るか、それは本文を見てのお楽しみ...。</div>]]>
        <![CDATA[<div><b>自家用人工衛星！</b></div><div>これは厳密には「人工衛星」ではなく、都市上空の高高度(20,000m～)に飛翔体を常駐させて衛星がわりに使おうというアイデアで、大気圏内衛星(Atmospheric Satellite)とも呼ばれました。この「大気圏内衛星」構想には太陽電池で飛ぶ飛行機と、ヘリウムを詰めた飛行船という２つの候補がありました。</div><div>飛行機案の有力候補は、NASA が 1990 年代から実験していた「ヘリオス(Helios)」と呼ばれる無人飛行機でした。ヘリオスは巨大な全面太陽電池パネルの翼がその大部分をなし、翼の下に申し訳程度の胴体がぶら下がり、前縁には幾つものプロペラがゆっくりと回転しているという異様な形状の機体です。日中は太陽電池で発電し、夜間は充電した電気で飛び続けることで数ヶ月～数年にわたる連続飛行を目指していました。</div><div>もともとヘリオスは高高度の気象観測や将来の火星探査機の可能性研究が目的だったのですが、この時期はラスト・ワンマイルの有力候補として注目されました。しかし 2003 年 6 月、ハワイ諸島での試験飛行中に試作機が空中分解して墜落してしまいました。NASA では高高度無人機のプロジェクトを諦めた訳ではないようですが、それをラストワンマイル解決に当てて商用利用しよう、という気運はしぼんでしまったようです。</div><div>一方の飛行船には「どうやって夜間飛び続けるか」という問題はありませんが、図体がでかくて速度が遅いので気流に流されやすいとか、気温差によって変化する浮力をどうやって調整するか、どうやって長期間にわたりヘリウムが漏れないよう工夫するかなど独特の問題があります。通信中継用の無人飛行船はドイツの Sanwire 社やイギリスの ATG 社, BAe 社, SkyLink 社などヨーロッパで盛んに研究されていたようですが、実機試験に至った例も少ないらしく、ヘリオスのようなニュースを聞いた記憶もありません。</div><div>街の上空数万メートルの高さを飛び続け、天使のように街の声を伝える無人航空機というイメージはＳＦ的で夢にあふれていますが、その実用化はまだ当分先のことになるようです。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>もっと光を...</b></div><div>光を用いた通信といえば光ファイバーと大抵は相場が決まっていますが、大気中に直接光ビームを発射して通信する Free Space Optic Communication という方法もあります。日本でもビル間通信手段などに利用されていますが、この技術をラスト・ワンマイルに応用しようというユニークなプロジェクトがチェコの twibright 社から提案されました。その名も RONJA(Reasonable Optic Near Joint Access)、送受光ユニットが２組で１ペアとなり、最長 1.4Km で 10Mbps の双方向リンクを実現するとされています。</div><div>しかし RONJA は 1:1 のシステムです。これを商用ネットワークサービスに応用しようとすれば発信局には契約世帯の数だけ送受光ユニットを設置する必要があり、とても商売になるとは思えません。</div><div>実際のところ RONJA は商用サービスを目指したものではなく、「屋根の上に載せるだけで、知り合いの家庭同士に専用の双方向リンクが張れたらいいよね」というような、アマチュア的な動機に基づいて発案されたもののようです。発案元の twibright 社では、RONJA の設計図や回路図やドライバのソースコードを GPL に基づいて無料配布しています(※註)。</div><div><br /></div><div>(<font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">※註)http://ronja.twibright.com/</font></div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>No New Wire Required</b></div><div>「ラスト・ワンマイル」問題で無線とともに注目されていたのが、電力線を使うデータ転送でした。殆ど全ての家庭には既に電力線が配線されているのだから、そこにデータを一緒に流せば良いじゃん？とは誰でも思いつくことでしょう。実際のところ、電力線データ転送は数十年前から何度も話題に上がってはそのたびに消えていった歴史があり、そしてこの時も例外ではありませんでした。</div><div>電力線を用いたデータ転送がなかなか成立しないのは、一見簡単そうでも実現には幾多の困難があるからです。当たり前ですが電力線網は電力を運ぶことを前提に設計されており、そこにデータ信号を流すことは決して容易ではありません。たとえばデータは変圧器を越えませんので、全ての変圧器の前後にルーターを置かなければなりません。その設置および維持コストを考えただけで、はたして他の方式にくらべて「既に配線がある」ことがインフラとしてのメリットになるかどうか少々疑問です。</div><div>また、電力用の柱上電線は高周波の漏洩対策など考えていませんので、そこに高周波のデータを流すと少なからぬエネルギーが電波として放出され、それが妨害電波になるという懸念もあります。特にアマチュア無線のユーザーは電力線データ転送に対し断固反対の立場を取っていますし、ＴＶやラジオなど放送事業者も歓迎していないようです。</div><div>このような困難にも関わらず何度も電力線データ転送が提案されるのは、それが電力会社にとって魅力的な収入源に映るからという事情もあるようです。電力会社が売り上げを伸ばすためには電力消費の増大が常識的な方向性ですが、それに応じるためには発電所や送電設備増設の必要で、何十億円もの初期投資が必要です。しかし電力需要を増加させることなく、既存の電力線インフラが新たな利益を生み出すとしたら？それはまるで、鶏が金の卵を産むような話に聞こえることでしょう。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>ガス管で行こうぜ！</b></div><div>私にとって「ラスト・ワンマイル」問題への最も意外なエントリーは「ガス管通信」でした。たしかに電話線や電気やケーブルＴＶ同様、ガス管も都市インフラの一つには違いありません。しかしガス管を高速データ通信手段に利用することは、普通ならあまり思いつかないことでしょう。</div><div>理論上、中空の金属管は電線同様(時には電線以上に)高周波伝達に適したメディアになり得ます。実際今のような高分子絶縁材が発明される以前、マイクロ波の伝送には導波管という金属パイプが使われていました。しかし、導波管は直径や厚みや材質、設置時の曲げ半径などが精密に計算されて使用されるものです。高周波を流す事などこれっぽっちも考えずに作られたガス管で、高速データ通信なんて出来るのでしょうか。</div><div>それを「できる」と言った会社がアメリカ・サンディエゴの Nethercomm 社でした。同社は 2005 年、当時脚光を浴びていた超広帯域無線通信技術(UWB;Ultra Wide Band)を用いれば、ガス管で 100Mbps を超えるデータ伝送網が実現できるとぶち上げたのです。電力線ネットワーク同様、ガス管というインフラの既得権を持つガス会社に対し、魅力的な収益源としての売り込みを図っていたようです。</div><div>しかし 2005 年といえば既に ADSL が普及期に入った頃であり、「今更ラストワンマイル？しかもガス管で UWB？」と思ったことを覚えています。どうやらそう思ったのは私だけではないようで、結局この Nethercomm 社は何ら製品らしいものを出せないまま消えていったようです。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>まとめ</b></div><div>宇宙開発、アマチュア精神、金の卵に机上の空論。ラスト・ワンマイル問題に群がった群像はその技術的内容だけでなく、その出自や動機も多岐にわたっています。新たな市場が出現する(かも知れない)とき、そこには様々な目的や思惑を抱いた企業が集まるという一例だったのでしょう。これはラスト・ワンマイルの時に限らず .COM バブルの時にも起きましたし、昨今のスマートフォンやクラウドブームでも目にする現象だと思います。</div><div>こういう時、技術屋はとかく技術的内容の優劣比較に走りがちですし、企画屋はビジネスモデルや潜在的顧客数で算盤を弾くことに偏りがちです。新市場の冷静な評価は技術面と企画面の両方から行う必要がありますが、そのバランス感覚は何度やっても難しいものだと思います。</div><div><br /></div>]]>
    </content>
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    <title>無線 LAN が目指すもの(4)</title>
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    <published>2011-08-26T00:00:00Z</published>
    <updated>2011-08-29T05:22:51Z</updated>

    <summary>前回・前々回と「軽薄短小」な小型省電力無線技術(PAN)についての話題を扱ってき...</summary>
    <author>
        <name>YS</name>
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        <![CDATA[<div>前回・前々回と「軽薄短小」な小型省電力無線技術(PAN)についての話題を扱ってきました。今回は再び方向を転換し、「より遠くへ」という話題を扱ってみます。キーワードは「無線 LAN はどのくらい飛ぶのか」「WiMax」「Super WiFi」です。</div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>
<div><b><br /></b></div>]]>
        <![CDATA[<div><b>無線 LAN はどのくらい飛ぶのか</b></div>
<div>そもそも、無線 LAN はどのくらいの距離まで使えるのでしょうか。これはよく聞かれる質問ですが、使用する機器(の送信電力や受信感度性能)、使用する周波数、設置環境(障害物の有無、直線伝搬なのか、反射伝搬なのか)によって大きく変化するため、一言では答えにくい問題です。一般論としていえば 5GHz 帯より 2.4GHz 帯のほうが長距離を飛び、また回折(回り込み)特性が有利なので障害物のある環境でも伝搬性能に優れます。しかしその一方で 2.4GHz 帯は同じ周波数帯を使う機器(他の無線 LAN 装置、Bluetooth、コードレス電話、自動ドア、電子レンジなど)からの干渉を受けるため、せっかく届いた信号もノイズの海に埋もれてしまって実通信距離が短くなる傾向もあります。</div>
<div><br /></div>
<div>理想的条件を仮定すると、WiFi の伝達距離は 2.4GHz 帯で約 100m、5.2GHz 帯で約 40m くらいまでは 54Mbps の性能を維持できる試算になります。通信速度を 6～11Mbps に落として良いのならば、距離はそれぞれ 300m, 140m 程度まで伸びます。(※註)</div>
<div>もっとも、これはあくまで理想的条件下での話であって、実際の条件としては 2.4GHz 帯で屋内(非見通し環境) 25m くらい、屋外(見通し環境) 50m くらい、5GHz 帯はおおむねその半分くらいが速度性能を維持できる目安と考えれば良いでしょう。もちろん、電波干渉があればそのぶん有効通信距離は減少します。</div>
<div><br /></div>
<div><font style="FONT-SIZE: 0.8em" class="Apple-style-span">(※註)送信電力 14dBm, 受信電力 -76dBm + マージン 10dB, アンテナ利得 0dB に対応する理想空間損失距離を Friis 公式から導出</font></div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>
<div><b>WiMax</b></div>
<div>「WiFi は長距離通信に向かない」ことは改めて言うまでもありませんが、一方には中～長距離のデジタル無線通信に対する需要があります。こういった需要に応える広域ネットワーク(WAN;Wide Area Network)無線技術としては、ここ数年話題になっている WiMax があります。いったい WiMax とは何で、WiFi とは何がどう違うのでしょうか。</div>
<div><br /></div>
<div>WiMax はもともと 2004 年頃に IEEE802.16 として制定された、固定局向けの地域無線ネットワーク(FWA; Fixed Wireless Access)でした。ちょうどダイヤルアップ・インターネットにかわり「ブロードバンド」という言葉が爆発的に流行しており、プロバイダと一般家庭をつなぐ「ラスト・ワンマイル」の方法論について喧々諤々と議論されていた頃で、WiMax はその有力候補として注目されていたのです。しかし結局、ブロードバンドの普及は電話線を使った DSL ネットワークがその主役となり、この目的での WiMax は限定的な成功を収めたに終わりました。</div>
<div>昨今推進されている WiMax は、固定局 WiMax から派生した IEEE802.16e と呼ばれる移動体通信規格です。周波数帯は国や地域によって 2～3GHz が使用され、日本では 2.5GHz が使われています。最大伝送レートは 75Mbps ですが実力値は最大 20Mbps 程度と言われています。基地局あたりのカバー範囲は半径 1～3Km ですが、サービスエリア内には充分な密度で基地局が設置され、どこでも利用できると売り込まれてます。ただし地下や建物の奥など、基地局の電波が届かない場所では利用できません。(※註)</div>
<div><br /></div>
<div><font style="FONT-SIZE: 0.8em" class="Apple-style-span">(※註)当然ながら、地下や屋内にも基地局を設置すれば利用可能になります。このような極小エリア向けに使われる小電力基地局を「フェムトセル」と呼ぶこともあります。</font></div>
<div><br /></div>
<div>WiMax の運用形態やビジネスモデルは、WiFi よりも携帯電話に近いものです。アクセスポイント(基地局)の設置運営は認定事業者のみに許された免許制であり、ユーザーが自分で購入して運用することはできません。基本的には運営事業者(日本では UQ WiMax)と契約を結び、月額固定ないし流量制の契約金を払って利用することになります。WiMax の競合相手もやはり携帯電話で、3.5G とか LTE と呼ばれる既存携帯網での高速データ通信、あるいは 4G と呼ばれる次世代携帯網が主な競合と考えられています。</div>
<div>技術的に見れば LTE, 4G, WiMax には共通点も多く、これらの競合にはキャリア業者間の縄張り闘争的な色合いを濃く感じます。技術的な利害得失よりも、どれだけ基地局に投資してサービスエリアを広げるか、どのように使用条件や料金体系を設定して利用者を獲得するかといったところが勝敗を分けるように思います。</div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>
<div><b>Super WiFi</b></div>
<div>「電波のホワイトスペース」という言葉を聞いたことはありませんでしょうか。現在、主要な周波数帯の多くはＴＶ放送を筆頭とする放送事業者の所有資産となっており、一般市民が無免許で利用できる周波数帯は 2.4GHz 帯などごく狭い領域に限られています。しかし放送周波数は一律にべったり使われているわけではなく、地域や時間帯によって使われていない領域があり、これを広義の「ホワイトスペース」と呼んでいます。一方、地上波ＴＶ放送のデジタル化に伴って使用停止となるアナログＴＶ放送の周波数(700MHz VHF 帯)のことも「ホワイトスペース」と呼び、むしろ報道などで目にするのはこちらの定義のほうが多いでしょう。</div>
<div>アメリカでは 2009 年の地上波ＴＶ放送完全デジタル化に伴い、空き地となったホワイトスペースの再利用方法について議論が交わされました。その中にはこれを一般利用者に開放しようという動きがあり、何かにつけて仲の悪い Google と Microsoft が「ホワイトスペース開放」については珍しく共同戦線を張ったことが大きく報道されました。とりわけ Google 社は熱心で、ホワイトスペース無線 LAN を「Super WiFi」や「WiFi on Steroid」「WiFi 2.0」などと呼び、「個人情報発信に革命をもたらすイノベーション」と絶賛しています。</div>
<div><br /></div>
<div>一体、700MHz 帯の何がそんなに凄いのでしょう。理屈からいえば、周波数が低いほど電波は遠くまで飛びます。2.4GHz にくらべると、700MHz 帯は同等出力で理論上２～３倍程度の到達距離を持つはずです。上で述べた理想条件下の試算を適用すれば、11Mbps 程度の速度なら 1Km ほどの通信が可能になるかも知れません。また障害物の裏に回り込む回折効果も期待できるため、一台のアクセスポイントでアパート一棟をまるごとカバーすることができるかも知れません。</div>
<div>...でも、言ってしまえばそれだけです。「今まで出来なかったことが出来る」というより、「今までも出来ていたことがより安く・より簡単に実現できる」ように聞こえますが、それが本当に革命的なことなのか私にはちょっと納得できません。それに、皆が我も我もとホワイトスペース AP を買って据え付けたら、700MHz の電波が溢れかえって干渉だらけになり、せっかくの長距離伝達性能も活かせなくなったりしないのでしょうか？</div>
<div><br /></div>
<div>しかし、干渉をただの邪魔者ではなく、干渉波もコミュニケーションの一種だと考えたならば...「基地局」と「子機」を分けるのではなく、全ての子機が基地局としても機能し、干渉波に含まれるパケットを解読し中継して伝達するようなメッシュ・ネットワークを組むことができたなら...それこそ「インターネットに代わる第二の情報通信網」、「個人情報発信に革命をもたらすイノベーション」になるかも知れません。</div>
<div>それは夢のある話ですが、実現は容易ではありません。そのような超広域・超大規模・超分散自律型のメッシュネットワークが果たして実現可能なのかまだ誰にも判りませんし、そのような超分散ネットワークでセキュリティはどのように守られるべきなのかも判りません。だいいち現在のインターネットでさえ、我々は広告業者(スパム)や詐欺師(フィッシング)、自己増殖プログラム(ウィルスやワーム)の氾濫を防ぎきれていないのです。</div>
<div><br /></div>
<div>ＳＦ的な夢はさて置いおいても、現在のところ Super WiFi の製品化について具体的な動きはあまり聞きません。アメリカでは FCC(連邦通信委員会) が 2010 年 9 月にホワイトスペースの一般利用を承認したというニュースがありますので、それに対応する製品が出るとしてもまだこれから、というところだと思います。Super WiFi が拓く超広域メッシュネットワークを夢見ながら、当面の間はおとなしく契約料を払って LTE か WiMax を使うしかなさそうです。</div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>
<div><b>まとめ</b></div>
<div>1992 年頃の Unix Magazine だったと思いますが、小型 Unix ワークステーションに携帯電話とモデムを括りつけ、巨大バッテリーを積んだ自転車に積み込んで大陸横断に出発し、旅の様子をインターネットで実況中継する実験をアメリカの大学教授が行う様子が連載されていました。私としては「なんだか凄くワクワクする話」として楽しみにしていましたが、世間一般の人は「それが一体何の役に立つの？」「お金と時間の無駄」「暇人の道楽」としか受け取らなかったと思います。</div>
<div>それから 20 年ちかい歳月が経った今、海外で見知らぬ街を Google Map 片手に探検し、その様子を Twitter で中継することなど誰でも出来るようになりました。20 年前は「それが何の役に立つの？」だった長距離無線データ通信は、10 年前には「あれば便利なもの」となり、今では「無ければ不便なもの」になりつつあります。</div>
<div>無線通信技術にはこれからもより遠くへ、より多くのデータを運ぶことが望まれ続けるでしょう。その主役が WiMax になるのか Super WiFi になるのか、はたまたイリジウムのような衛星ネットワークが再び脚光を浴びるのか。興味が尽きないところです。</div>
<div><br /></div>]]>
    </content>
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    <title>無線 LAN が目指すもの(3) </title>
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    <id>tag:www.silex.jp,2011:/blog/wireless//4.39</id>

    <published>2011-07-21T00:00:00Z</published>
    <updated>2011-07-19T01:36:18Z</updated>

    <summary>今回はちょっと WiFi を離れます。前回「無線 LAN が目指すもの(2)」で...</summary>
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        <name>YS</name>
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    <category term="ant" label="ANT" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
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    <category term="無線lanが目指すもの" label="無線 LAN が目指すもの" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    <category term="省電力無線" label="省電力無線" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
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    <category term="家電ネットワーク" label="家電ネットワーク" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.silex.jp/blog/wireless/">
        <![CDATA[<div>今回はちょっと WiFi を離れます。前回「無線 LAN が目指すもの(2)」で家電市場に挑む WiFi の姿を紹介しましたが、今回は「Bluetooth」「Zigbee」「Z-Wave」「ANT」など、同じ市場に違う方向から挑む WiFi のライバル達を紹介しようと思います。</div>
<div><br /></div>
<div><b><br /></b></div>]]>
        <![CDATA[<div><b>Bluetooth</b></div><div>Bluetooth は携帯電話のアクセサリを無線化する技術として、1990 年代にエリクソン社が開発した技術です。登場してから 10 年ほどは鳴かず飛ばずで不遇をかこっていましたが、2005 年頃から急速な普及がはじまり、今では携帯電話の範疇を超えて PC 周辺機器にも使われるようになりました。昨今のスマートフォン・スマートパッドの流行は、Bluetooth にとって更なる追い風となっています。</div><div>Bluetooth で使われている無線技術は WiFi より二世代ほど古く、速度性能では 1～3Mbps で WiFi には遠く及びません。そのかわり小型・低価格・低消費電力については最初から設計目標に取り込まれており、これらの性能では WiFi より先行しています。</div><div>また Bluetooth では異機種間接続性が最初から重視されており、実装機能を「プロファイル」という形で標準化しています。プロファイルについては功罪相反するものがありますが(※註)、標準プロファイル機器同士をつなぐ限りは設定やデバイスドライバが不要であるという特長は、M2M ネットワークについて Bluetooth が持つ利点の一つになっています。</div><div><br /></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註)Bluetooth 対応製品は相互接続テストを通過してロゴを取得することが義務付けられており、多品種少量製品ではプロファイルを含めた認証取得に要する時間と費用が割りに合わないことがあります。</font></div><div><br /></div><div>今後の発展性について、Bluetooth SIG は「Bluetooth 3.0+HS 」と「Bluetooth 4.0LE」という２つの全く異なる方針を打ち出しています。3.0+HS は判り易くいえば「Bluetooth over WiFi」で、Bluetooth のプロトコルやプロファイルがそっくりそのまま WiFi のパケットに包まれて送信されるというものです。従来の 3Mbps では実現できなかったビデオストリーミングなどの機能を、WiFi の高速性を活かして実現することが目論まれています。</div><div>一方の 4.0LE は一部の機能を削除した低消費電力版(Low Energy)で、ボタン電池で数年間の稼動ができるとされており、万歩計や血圧計のような健康器具、キーホルダーや腕時計のような日用品への組み込みが見込まれています。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>ZigBee</b></div><div>ZigBee はホームオートメーションを目的として開発された無線技術で、小型・低価格・低消費電力であることを特に重視して設計されています。通信速度はカタログ値で最高 250Kbps しかありませんが、低消費電力化については Bluetooth よりも進んでおり、乾電池一本で数年間の使用に耐えると言われています。</div><div>ZigBee のユニークな特徴としては、設置運用を容易にするため「メッシュネットワーク」の考え方が取り入れられていることです。通信するノード同士が直接電波の届かない位置に設置されていても、他のノード(ルーター)が中継して通信を成立させる仕組みが取り入れられており、弱い電波でも広い範囲(特に建物内部のように入り組んだ空間)をカバーできることが考慮されています。</div><div><br /></div><div>ZigBee については「IEEE802.15.4」という名前と「ZigBee」という名前が混同して使われることがあり、少し混乱を招いているようです。実はこれには明確な定義があり、「IEEE802.15.4」は電波のフォーマットとそれを送受信する機構についての規格で、「ZigBee」はその上位のプロトコルやデバイスのプロファイル、デバイス相互互換性の認定までも含めた名称になっています。従って「ZigBee」対応機器同士は相互接続して使えることが保証されていますが、「IEEE802.15.4」の機器同士はプロトコルからして異なり互換性がないこともあり得ます。</div><div>なぜ立派な相互接続認証制度が整備されているのに「ZigBee ではない IEEE802.15.4」などという紛らわしいものがあるかと言うと、ZigBee プロファイルは少々複雑で実装が面倒であり、また製品を世にリリースする時に互換性テストと認証を受けなければならないことを嫌う場合があるからです。特定の自社製品同士をつなぐため「だけ」が目的ならば、わざわざ ZigBee 仕様で作って認証を取る必要はない、という訳です。こういったフレキシブルな使い分けが出来ることは利点でもありますが、上に書いたように混乱を招きかねない欠点でもあります。</div><div>今のところ、ZigBee は当初見込まれていた普及レベルには達していません。とはいえ、家電リモコン(RF4CE) やスマート・グリッドへの普及が期待されており、今後数年間で一気に数億台の市場に膨れ上がるであろう、という強気の予想が続けられています。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>Z-Wave</b></div><div>Z-Wave はあまり日本では知られていない無線技術です。もともとはデンマークの Zensys 社(現在は Sigma Designs 社に吸収)によって 1999 年頃に独自開発された小型省電力無線技術です。現在は Z-Wave Alliance という業界団体が設けられていますが、IEEE のような標準規格にはなっていません。</div><div>Z-Wave はメッシュ対応など ZigBee によく似た特徴を持っていますが、ZigBee 以上に家電制御に特化しています。通信速度はカタログ値最高でもわずか 40Kbps どまりで、通信周波数には一般的な 2.4GHz ではなく 800～900MHz 帯を使っています。波長の長い(周波数の低い)電波は通信速度の点では不利ですが、障害物の多い環境での伝達性には優れる特長を持ちます。ただし 2.4GHz 帯と違って国地域ごとに開放されている周波数が異なるため、Z-Wave には幾つかの異なる周波数仕様が存在します。日本では 2012 年以降開放される 920MHz 帯が割り当てられる予定ですが、2011 年現在ではまだ割り当て周波数がありません。</div><div><br /></div><div>日本ではまだマイナーな Z-Wave ですが、海外とくにアメリカでは赤外線リモコンに代わる技術として普及が始まっています。デジタル TV 系のチップサプライヤーとして大きな影響力を持つ Sigma Designs 社が推進していることから、日本でも割り当て周波数が確定しだい AV 系リモコンへの普及が促進されるのではないか、と見る向きもあります。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>ANT</b></div><div>ANT は 2005 年頃に登場した新しい無線技術で、ノルウェイの Nordic Semiconductor 社によって開発されました。同社はもともとワイヤレスヘッドフォンに用いる無線チップなどを製造しており、その知識と経験を活かして開発された次世代省電力無線技術が ANT とも言えます。ANT+ Alliance という業界団体が設立されていますが、Z-Wave 同様&nbsp;IEEE のような標準規格にはなっていません。</div><div>ANT は PAN(Personal Area Network)を目的として開発されており、万歩計や血圧計のような健康器具、腕時計やキーホルダーのような日用品への組み込みが想定されています。...何処かで聞いたような話ですが、Bluetooth 4.0LE とほぼ同じ市場を狙っています。技術的にも 2.4GHz GFSK 変調、1MHz 帯域幅 x 78 チャネルという仕様は Bluetooth とよく似ています。通信速度は実力値で最大 20Kbps と言われています。</div><div>ANT が Bluetooth と異なるのは、プロトコルが非常に簡素化されている点です。Bluetooth で問題になりがちな認証得費用も大幅に安く設定されており(※註)、多品種少数製品にも対応できることを売り文句としています。</div><div><br /></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註)出典 http://www.thisisant.com/pages/ant/ant-alliance-membership-cost-comparison</font></div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>まとめ</b></div><div>小型・省電力を特徴とする「WiFi 以外の無線技術」について代表的なものを簡単に紹介してきました。想定市場のオーバーラップする製品が意外に多いことに驚かれたかも知れません。それだけ「一般家庭向け無線ネットワーク」が注目されている巨大成長市場であり、またその攻略が容易ではないこと(簡単確実、安くて便利でなければならない)の証でもあります。</div><div>これらの技術が淘汰されて唯一無二の標準に収まるのか、それとも適材適所に合わせて住み分けることになるのか。私にはどうも、「唯一無二の標準」では収まらないような気がしています。「家庭向け無線ネットワーク」と言っても、要求される性能仕様やコスト範囲は広いからです。Bluetooth 陣営があえて「3.0+HS」と「4.0LE」の二本立てで攻めているのは、ハイ・ローミックスで広い要求範囲をカバーしようという意図があるのでしょう。WiFi は「ハイ」の方からローへ下りて来ようとしており、「ロー」の範疇では ZigBee, Z-Wave, ANT などがそれぞれ特徴ある戦略で陣地を死守しようとしているように見えます。</div><div>第三者から見れば実に興味深い混線模様ですが、これに商売を賭けなければならない身としては、それぞれの利害得失とマーケット動向を冷静に判断しなければなりません。「一般家庭向けネットワーク」という巨大市場は、そこを目指した勇者が幾多の屍を道筋に晒す、死屍累々のエルドラドでもあるからです。</div>]]>
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    <title>無線 LAN が目指すもの(2) </title>
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    <id>tag:www.silex.jp,2011:/blog/wireless//4.38</id>

    <published>2011-06-29T00:10:00Z</published>
    <updated>2011-06-06T07:46:07Z</updated>

    <summary>前回は「より速く」という視点から無線 LAN 技術の近未来を覗ってみました。しか...</summary>
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        <![CDATA[<div>前回は「より速く」という視点から無線 LAN 技術の近未来を覗ってみました。しかし、必ずしも「より速く、より強く」という重厚長大な価値観だけが進化の方向性ではありません。「より小さく、より安く、より低消費電力で」という方向もまた、無線技術にとって重要な一つの方向です。今回は少し視点を変えて、「軽薄短小」な無線技術について考えてみます。</div>
<div><br /></div>
<div><br /></div>]]>
        <![CDATA[<div>WiFi はもともと PC 用として発展してきましたが、小型・低価格化が進んだことで PC 以外への応用が考えられるようになりました。携帯電話では既に WiFi 搭載が当たり前になりつつありますし、TV やプリンタにも WiFi モデルが増えました。デジタルカメラ・ハードディスク(NAS)・メディアプレイヤー(DVD)にも少しづつ WiFi が浸透しつつあります。この傾向はどこまで続き、どんな課題が残されているのでしょうか。</div><div>究極的なビジョンとしては、一般家庭の電化製品全て...TV や DVD だけでなく、エアコン・冷蔵庫・湯沸かし器・照明器具に至るまで WiFi を搭載し、手元の携帯電話から全てを制御できるという未来像が語られています(※註)。しかしこのようなビジョンを実現するためには、WiFi には幾つかの課題が残っています。</div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; "><br /></font></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註)「何処かで聞いたような話だ」と思われる方もいるかも知れません。「TRON電脳住宅」という言葉や「エコーネット」という言葉を思い出す方もいるかも知れません。このような「一般家庭のデジタルネットワーク化」は、コンピュータ業界３０年来の見果てぬ夢です。</font></div><div><br /></div><div><br /></div><div><b>標準プロトコルの不在</b></div><div>冒頭で「WiFi は PC 用として発展してきました」と書きました。これが何を意味するかと言うと、基本的に使い方はユーザーが「見て」判断するということです。WiFi プリンタにせよ WiFi TV にせよ、まず最初にやることは PC 上でブラウザを立ち上げて IP アドレスを打ち込み、機器の WEB ページを見ることです。これは「人間が機械を使う」ぶんには良いかも知れませんが、「機械と機械をつなげる(Macine-To-Macihne; M2M)」目的にはあまり役に立ちません。</div><div>IP ネットワーク上での自動検出・機器間制御プロトコルが無い訳ではなく、むしろ多すぎるほどです。SNMP,RPC,SLP, UPnP, WSDP, mDNS, DLNA... 列挙すれば軽く 20 は超すでしょう。しかし小さな「標準」が乱立したに過ぎず、「機械と機械をつなぐ」IP の標準プロトコルは未だ確定していません。WiFi を M2M 用途に使うためにはそのどれか一つに定めるか、あるいは全く新しい「標準」を作り直すか、いずれの選択も一長一短あって簡単ではなさそうです。</div><div><br /></div><div><b>アクセスポイントの功罪</b></div><div>WiFi 無線ネットワークはアクセスポイント(AP)の存在が前提となっています。AP 不要のアドホックというモードもありますが、色々と不便なのであまり使われていません。この「まず AP ありき」という前提も M2M ネットワークには不適な特性です。</div><div>これに対処するため、Wi-Fi Alliance では「Wi-Fi Direct」と呼ばれる新たな仕組みを制定中です。従来「親機(アクセスポイント)」と「子機(ステーション)」という機能が分離されていたものを、用途に応じて子機が簡易 AP(※註) としても振る舞ってちいさな無線ネットワークを動的に作成できる、というものです。</div><div>Wi-Fi Direct では前述した接続プロトコル標準化問題も視野に入れており、サービス検索やデバイス間接続も簡易化される予定です。しかし、この部分が具体的にどう標準化されるかについてはまだ不明確なところが残っています。</div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; "><br /></font></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註)この簡易 AP 機能のことを「SoftAP」と呼ぶこともあります。</font></div><div><br /></div><div><b>低消費電力化</b></div><div>一般的な WiFi モジュールの動作時消費電力は 1.5W 程度(受信時 1W、送信時 2W)で、家電製品などに内蔵される LSI の相場としては非常に高い値です。Bluetooth や Zigbee が 0.1W 未満で動作するのに比べると、一桁以上も多くの電力を消費するわけです。</div><div>実はこの数字は 10 年前からあまり変わっておらず、2002 年頃の 802.11b PCMCIA カードでも、最新の PCI-express 802.11n モジュール(シングルバンド)でも平均消費電力はだいたい同じです。LSI 技術の進歩によって回路規模あたりの消費電力は確実に下がっているのですが、WiFi 製品が「PC 用」として消費電力を維持したまま回路規模を増大し、通信速度を高速化する方向に発展してきたことが伺えます。逆に言えば、今の技術で回路規模を制限した(＝通信速度を落とした)チップを作れば WiFi でも消費電力を下げられる筈で、GainSpan 社や Microchip 社(旧 Zero-G Wireless 社) は待機時 1mW 以下、動作時 500mW 以下をうたった製品を発売しています。</div><div><div>WiFi の消費電力が大きい理由には他にも送信出力が大きいこと(※註1)や、受信デューティーサイクルが短いこと(※註2)もあります。これに対しては通信状態に応じて送信出力をこまめに制御するだとか、Deep Sleep とか Wake on Wireless と呼ばれる省電力モードを設けるなどの工夫がなされています。</div><div><br /></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註1)送信出力は一般的な WiFi で 25mW、Bluetooth や ZigBee では 1mW 程度です。</font></div><div><font class="Apple-style-span" style="font-size: 0.8em; ">(※註2)無線回路は受信待ち状態で待機しているだけでも電力を消費するため、電波の交換時間をあらかじめ決めておき、受信予定時間が来るまでは受信回路の電源を切って休眠させることで省電力化を行います。ど</font><span class="Apple-style-span" style="font-size: 10px; ">の程度の間隔で受信回路を動作させるかを「受信デューティーサイクル」と呼び、ZigBee などではこれが WiFi に比べて非常に長く設定可能になっています。</span></div></div><div><br /></div><div><b>低価格化</b></div><div>価格については、半導体は常に「数が出れば安くなる」と「安くなければ数が出ない」というニワトリタマゴの相克のなかにあります。WiFi の主要用途がパソコンの「オプション」としてモジュールであるかぎり、その需要が一定の限界を超えることはなく劇的な価格低下は期待できないでしょう。</div><div>これに対して、WiFi チップメーカー各社では製品基盤に直接実装されること(Chip-on-Board, CoB と呼ばれる)を前提とした製品を開発しており、既にその第一世代のチップは携帯電話、携帯ゲーム機、スマートパッドなどへの導入が始まっています。</div><div>しかし、「エアコンや冷蔵庫」への内蔵を目指すならば、第一世代の CoB 製品ではまだ不足です。携帯電話にせよゲーム機にせよ、少なくとも一昔前のパソコンなみの CPU 能力は有しています。しかしいわゆる「白物家電」...エアコン、炊飯器、扇風機、冷蔵庫などに使われているのは 30 年前のパソコン程度...8bit や 16bit のマイコンで、オンチップに抱いた ROM/RAM を目一杯に使って動作しています。このような産業用マイコンには外部バスもなければ、WiFi ドライバを組み込む余裕もありません。</div><div>第二世代の CoB 製品はおそらく、制御用マイコンの機能と WiFi 通信機能を兼ね備えたものになるでしょう。「メインチップ＋通信チップ」の２チップ構成だったものが１チップ化され、これによって画期的な低価格化が実現されるという方向です。ただし、それがどんな性能を持ちどんな市場に投入されるかについて、まだ具体像は見えていません。</div><div><br /></div><div><b>まとめ</b></div><div>WiFi の家電製品への展開にはこのように課題も多いのですが、今後しばらくこういった動きは活発化してゆくでしょう。パソコン市場が伸び悩むなかで、PC を主戦場としてきた WiFi チップメーカーも新たな活路を求めています。PC 市場とは桁違いに大きいうえに、無線技術の普及率がほとんどゼロに近い家電市場は魅力的な未開拓市場に見えることでしょう。</div><div>しかし、家電市場は決して薔薇色の桃源郷ではありません。そこに要求される価格、信頼性/耐久性、簡便さのレベルもまた PC 市場とは桁違いに厳しいものです。また「無線技術の普及率がほとんどゼロ」というのは競合不在を意味しているわけではなく、あまたの無線技術がそこに挑み、何とかこの巨大市場を制覇しようと激戦を繰り広げている真っ最中なのです。次回は「WiFi 以外の無線技術」について、少しお話をしてみようと思います。</div><div><br /></div>]]>
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    <title>無線LANが目指すもの(1)</title>
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    <published>2011-05-27T00:15:00Z</published>
    <updated>2011-05-27T00:19:56Z</updated>

    <summary>事実上、世界で最初に普及した無線 LAN といえる IEEE 802.11b 規...</summary>
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    <category term="次世代無線技術" label="次世代無線技術" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.silex.jp/blog/wireless/">
        <![CDATA[事実上、世界で最初に普及した無線 LAN といえる IEEE 802.11b 規格が世に出たのは 1999 年の 9 月でした。それから 10 年と少しの時間が経ち、今の無線 LAN は IEEE 802.11n 規格が主流となりつつあります。11Mbps だった伝送速度は理論上最大 600Mbps となり、「無いも同然の安全性」と悪口を言われた WEP も強力な WPA に置き換えられました。とかく問題になりがちな初期設定についても、ボタンを押すだけで接続が完了する WPS が普及しつつあります。<br />今後、無線 LAN はどのように進化してゆくのでしょうか。今回のシリーズでは無線 LAN 業界で起こりつつあるトレンドに、少々主観的な評価を交えてその未来像を語ってみます。まず第一回は人間の飽くなき欲望、「より速く」についてがテーマです。<br />]]>
        <![CDATA[<strong>より速く...その１：マルチストリーム化<br /><br /></strong>802.11n では MIMO (※註)と呼ばれる技術を用い、送信器～受信器間で複数のアンテナ間ごとに独立した通信チャネル(ストリーム)を持たせることで高速化を実現しています。単純に言えばストリームの数が増えるほど速度が上がる筈で、これを「マルチストリーム」と呼んでいます。現状の 802.11n 仕様では１ストリームあたり最高 150Mbps × 最大４ストリームという計算で「理論上最大 600Mbps」という仕様が規定されています。従来販売されていた 802.11n 製品は１ないし２ストリームが主流でしたが、最近になって３ストリームのものが市場に登場してきました。<br /><br /><font size="2"><font style="FONT-SIZE: 0.8em">(※註)Multi-Input / Multi-Output の略で MIMO です。「ミモ」と発音することも多いです。</font><br /><br /></font>では、今後は３ストリームや４ストリームのものが主流になってゆくのでしょうか？ここはちょっと判断が難しいところです。MIMO はその原理上複数本のアンテナが必要になり、受信側ではふつうストリーム数＋１本のアンテナを用います。しかも MIMO のアンテナはある程度の距離(1/2波長以上、2.4GHz 帯の場合は約 6cm)を離して設置する必要がありますので、多ストリームの MIMO 機器はアンテナが四方八方から突き出した「芸者のカンザシ」みたいな格好になってしまいます。PC やタブレットではシート型やチップ型の内装アンテナを使って筺体内に隠すことはできますが、スマートフォンなど小型携帯機器では実装面積そのものが足りず、マルチストリーム MIMO に対応するアンテナを設置できません。<br /><br /><b>まとめ</b><br />マルチストリームによる高速化は現有技術からの大きな飛躍なく高速化を実現できることが特長ですが、小型化、低コスト化、低消費電力化が難しい欠点があります。PC や据え置き TV のような分野には普及してゆくかも知れませんが、２ストリーム以上の MIMO を小型携帯機器に搭載するのは原理的に無理があると思います。<br /><br /><br /><b>より速く...その２：広帯域化</b><br /><br />速度を上げる手段としては、マルチストリーム以外にも「広帯域化」という技術があります。現状の 802.11n でも「HT20」と「HT40」というモードがあることは御存知でしょうか？従来の無線 LAN(802.11a/b/g)では１チャネルあたり帯域 20MHz を使っていたのですが、802.11n ではオプションとして帯域 40MHz を使うモードが追加されているのです。上で「１ストリームあたり最高 150Mbps」と書いてあるのはこの HT40 モードを使用した場合の性能で、HT20 モードで使う場合は半分の 75Mbps となります。HT40 の発展形として、チャネル帯域を更に倍の 80MHz や 160MHz に拡張し、現在の２～４倍の速度を実現する IEEE 802.11ac 規格も検討されています。<br />広帯域化はマルチストリームのようにアンテナをニョキニョキ生やす必要がないので、小型携帯機器にも実装できます。内部の回路も殆どそのまま対応できますので、高速化に伴う部品点数の増加もありません。これだけ聞くと良いことづくめのような気がしますが、現実はそう甘くありません。チャネルあたりの帯域を増やすということは、使えるチャネル数が減るということです。使えるチャネル数が減るということは、隣近所の無線システム同士が混信して性能低下を招く「干渉」が起こりやすくなる、ということです。<br /><br />2.4GHz 帯は日本の場合 13 チャネルが定義されていますが、2.4GHz 帯チャネルでは周波数が重複しているため干渉なく使えるのは HT20 でも 3 チャネルしかなく、HT40 では実質 1 チャネルしか使用できません。2.4GHz 帯ではこのような周波数制限のため、広帯域化による高速化には現実性がありません。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0pt auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="freq24.png" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/freq24.png" width="471" height="275" /><font size="2"><font style="FONT-SIZE: 0.8em">2.4GHz帯におけるチャネル割り当て</font><br /></font></div>
<div align="center"><font size="2"><br /></font></div>5GHz 帯は日本の場合 5.2, 5.3, 5.6GHz の３バンドが定義されています。5.2GHz と 5.3Ghz 帯では重複しない HT20 の帯域が合計 8 チャネルが定義されており、最も新しく制定された 5.6GHz 帯では HT20 x 11 チャネルが確保されています。従って 802.11ac による高速化に現実性がありますが、これはあくまで日本における話です。<br /><br />
<div align="center"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0pt auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="freq52.png" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/freq52.png" width="482" height="275" /><font size="2"><font style="FONT-SIZE: 0.8em">5.2/5.3GHz帯におけるチャネル割り当て</font><br /></font></div>
<div align="center"><font size="2"><br /></font></div>
<div align="center"><font size="2"><img style="TEXT-ALIGN: center; MARGIN: 0pt auto 20px; DISPLAY: block" class="mt-image-center" alt="freq56.png" src="http://www.silex.jp/blog/wireless/freq56.png" width="560" height="255" /><font style="FONT-SIZE: 0.8em">5.6GHz帯におけるチャネル割り当て</font><br /></font></div>
<p><br />5GHz 帯のチャネル定義は各国ごとに異なり、中国や韓国のように HT20 x 4 チャネルしか認可されていない国もあります。このような地域では 2.4GHz 同様、広帯域化による高速化は実現できません。<br /><br /><b>まとめ</b><br />広帯域化による高速化も現用技術からの大きな飛躍が必要なく、小型化や低消費電力化が容易な特長があります。しかし必要な帯域を確保できる周波数が少なく、干渉による性能低下を避けにくい欠点もあります。802.11ac による高速化は HT40 の発展型として自然に普及してゆく可能性が高いですが、本当に２倍・４倍の高速化が実現できるかはその国の電波法や使用環境での干渉状況に左右されるため、次世代無線 LAN を担う高速化の切り札というには今一つ頼りない印象があります。<br /><br /><br /><b>より速く...その３：ミリ波の使用</b><br /><br />2.4GHz や 5GHz 帯での広帯域化が法律によって阻まれるならば、いっそ全然違う周波数を使ってはどうかという話になります。目指す新天地は「ミリ波」とも呼ばれる 60GHz 帯。国によって違いはありますが、57～66GHz の範囲で連続した約 7GHz 帯域幅の利用が認められています。この帯域を使う無線 LAN としては IEEE 802.11ad 規格が検討中であり、これと並行して WiGig と呼ばれる標準化団体も活動しています。<br /><br />ミリ波には「広帯域が取れる」という以外に「干渉の影響が少ない」という特長があります。ミリ波は酸素分子と共鳴して減衰するため空気中での伝達距離が短く、壁やガラス窓のような障害物もほとんど透過しません。またミリ波はレーザー光線のように鋭い指向性を持つため(※註)、アンテナの指向方向以外にはほとんど電波が飛びません。2.4GHz では隣近所数十メートル半径の電波がお構いなしに飛び込んでくるのに対し、60GHz では薄壁一枚隔てた隣部屋の電波すら入ってこない可能性が高いのです。この特性は干渉しにくいだけでなく、「盗聴されにくい」という特長にもなります。<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em" size="2">(※註)ミリ波技術はもともと鋭い指向特性を活かし、ミサイル誘導など軍事技術として発展してきた経緯があります。「AH-64Dロングボウ・アパッチ」</font><font size="2"><font style="FONT-SIZE: 0.8em">といえば、判る人には判るかも知れません。<br /></font><br /></font>しかしミリ波の特徴である高指向性は、「無線 LAN」として使用するときの障害でもあります。アンテナ設置角度がわずかにずれただけで通信不通になってしまうようでは、固定機器間での運用も難しいでしょう。まして動き回る複数の機器相手に通信しようと思ったら、軍用の照準レーダーみたいにアンテナを上下左右に動かして通信相手を「ロックオン」する必要があります。一体、そんなことができるのでしょうか。<br />実は、それが「できる」という技術があります。平面上に小さなアンテナを沢山敷き詰め、各アンテナの位相を電気的に変化させることで指向性を操作するフェイズド・アレイ・アンテナという技術です(※註)。このような仕組みを使って電波の指向特性を操作することを「ビーム・ステアリング」と呼んでいます。<br /><br /><font size="2"><font style="FONT-SIZE: 0.8em">(※註)これも元を辿れば軍事技術です。「イージス艦の艦橋に張り付いている六角形の板」といえば、判る人には判るかも知れません。</font><br /><br /></font>アレイ・アンテナによるビームステアリングは米国 SiBeam 社がその先鞭を付け、60GHz を使う WiHD (Wireless HDMI) 規格に採用されています。しかしまだ実装面積も消費電力も大きく、小型携帯端末に搭載できる状態にはなっていません。<br /><br /><b>まとめ</b><br />ミリ波技術には新たな高速無線通信の可能性があり、1Gbps を超える速度も夢ではありません。しかし従来の無線 LAN とは文字通り桁違いに高い周波数を使うため、その実用化にはビームステアリングを始めとする幾つかのブレークスルーを必要とします。前述した WiHD で第一世代の製品が世に出つつありますが、これが小型端末に搭載されるほど普及するにはまだ数年の時間を要するように思えます。<br /><br /><br />以上「より速く」というテーマに関して、無線 LAN 技術の傾向とその利害得失を簡単に紹介してみました。あちらを立てればこちらが立たず、一石二鳥の解決法というのはなかなか無いものだ、ということがお判り頂けるかと思います。この中のどれかが市場の主流を占めるのか、それとも時期や用途によって使い分けられるのか、ひょっとして全く新しい技術が登場して全ての問題を一挙に解決するのか...。予測は難しいですが、非常に面白い話題だと個人的には思います。<br /><br />「高速化」についてはまだシャノン方程式とか UWB とかのネタもありますが、次回は全く違う視点から「無線 LAN の近未来」を占ってみたいと思います。</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
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    <title>無線屋さんのおしごと(4)</title>
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    <published>2011-05-13T00:15:00Z</published>
    <updated>2011-05-13T02:25:14Z</updated>

    <summary>仕様だとか規格だとか堅苦しい話が続いておりますが、このシリーズも今回で一旦仕切り...</summary>
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    <category term="無線屋さんのおしごと" label="無線屋さんのおしごと" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    <category term="wifialliance" label="Wi-Fi Alliance" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.silex.jp/blog/wireless/">
        <![CDATA[仕様だとか規格だとか堅苦しい話が続いておりますが、このシリーズも今回で一旦仕切りとします。もう少しだけお付き合いくださいませ。<br /><br />前回、無線 LAN の仕様を定めている米国電気電子学会(IEEE)は製品の実装検証までやってくれるわけではなく、実装仕様の検証は販売製造元の自己責任に任されているという話をしました。しかし膨大かつ難解な無線 LAN 製品の検証を全てのメーカが自己責任で行うことには困難があり、無線 LAN の初期には「規格準拠」を自称しながら互換性のない製品が市場にあふれてしまう結果となりました。これを解決する為に組織されたのが非営利業界団体 Wi-Fi Alliance です。<br /><br />]]>
        <![CDATA[今でこそ「Wi-Fi」(※註)は無線 LAN の代名詞となっていますが、この呼称は Wi-Fi Alliance が無線 LAN 普及のために命名したものです。当時(1999年頃)は高速化された 802.11b 規格が世に出たばかりで、市場にはまだ各社各様の独自規格無線 LAN 製品が乱立していました。後発である 802.11b 準拠製品が「その他大勢の１つ」ではなく、異種メーカ間での接続性が保証された業界標準の無線 LAN であることを強調するために「Wi-Fi」というブランドが命名されたのです。<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em">(※註)「Wi-Fi」とも「WiFi」とも綴られますがハイフンの入った「Wi-Fi」が正式な綴りで、これは Wi-Fi Alliance の登録商標です。Wi-Fi という単語は何かの略語というわけではなく、1950 年代に高級オーディオ製品を普及させる原動力となった「Hi-Fi(High Fidelity の略、ハイファイと発音)」にあやかって命名されたようです。</font><br /><br />Wi-Fi Alliance の成功は単にインパクトのある命名を行ったことだけではなく、製品を実際に互換性テストにかけ、互換性が実証された製品にのみ「Wi-Fi CERTIFIED」のロゴマークを付与するという「Wi-Fi 認証ロゴ制度」を確立させたことです。私自身にも 2000 年頃、「安い」という理由で無名メーカの Wi-Fi ロゴなし無線 LAN カードを買ったらつながらなかったり遅かったりと散々で、返品して差額払って一流メーカ製の Wi-Fi ロゴつき製品に買い替えたら一発で問題なくつながり「Wi-Fi ロゴって伊達じゃねぇ」と驚いた経験があります。<br /><br />では、Wi-Fi ロゴつき製品ならば前回に述べた「IEEE 802.11 の仕様定義」を全て満たした製品だと言えるのでしょうか。...残念ながら、必ずしもそうとは言えないのです。Wi-Fi 認証テストが検証するのはあくまで「互換性」であり、「実装仕様が IEEE 802.11 仕様規格を厳守しているかどうか」ではありません。手元にある Wi-Fi Alliance のテスト仕様書を見ると、確かにその製品が「守っているべき」実装仕様について延々と 20 ページにわたって定義されています。しかし、テスト手順では実際にパケットをキャプチャしてそれが本当に仕様通りであるかどうかを検証しているわけではなく、Wi-Fi Alliance が選定した標準機器に対して各種の動作モード・暗号モードの設定組合わせで「実際に接続でき、使用できたかどうか」の検証にとどまっています。<br /><br />とはいえ、それは Wi-Fi ロゴの持つ価値を下げるものではありません。ユーザ自身が店頭売りの機器を買ってきて接続するコンシューマ市場においては特に、規格云々よりもまず第一に「ちゃんと使えるのかどうか」が重要な評価基準となります。そこで「第三者の手によって異機種間相互接続性が検証された」ことを証明する Wi-Fi ロゴは大きな価値を持っています。<br />また Wi-Fi ロゴテストが「規格仕様の厳密な検証」ではなく「互換性テスト」にとどまっていることには、その方が安くつくという現実的な意味もあります。Wi-Fi Alliance は非営利団体ではありますが、非営利だからといってコストと時間のかかる検証テストをタダでやってくれる訳ではありません。一方、メーカにとっては製品開発を可能なかぎり低いコスト・短い時間で実施したい事情がありますから、製品一品種ごとに何百万円もかかるような膨大で厳密なテストはやりたくないのが本音です。Wi-Fi ロゴテストはそういう意味においても、現実的な妥協点を示していると私は思います。<br /><br />しかし、と考える方もおられるかもしれません。本当に製品実装仕様の厳密な検証が必要な場合、IEEE や Wi-Fi Alliance がやってくれないならば、一体誰がそれをやってくれるのだろう？と。もうここまで読めばお判りかも知れませんね。「そういうこと」をやっている企業の一社が、他らならぬ我々サイレックス・テクノロジーなのです。<br /><br />と弊社の紹介をしたところで、やっとマーケティング部門への義理を果たせました(笑)。次回からはもう少し軽い話をしようと思います。<br />]]>
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    <title>無線屋さんのおしごと(3)</title>
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    <published>2011-04-22T00:00:00Z</published>
    <updated>2011-04-22T00:03:39Z</updated>

    <summary>前回・前々回と「無線 LAN はチップ買ってきて基盤に貼り付けてドライバ入れれば...</summary>
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    <category term="無線屋さんのおしごと" label="無線屋さんのおしごと" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    <category term="ieee規格" label="IEEE規格" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.silex.jp/blog/wireless/">
        <![CDATA[前回・前々回と「無線 LAN はチップ買ってきて基盤に貼り付けてドライバ入れれば動く、というものでもない」という話をしてきました。しかしこういう話をすると「じゃあ、何をどうすれば『動く』と言いきれるの？」という疑問が出るかも知れません。あるいは「いやしくも国際工業標準規格にのっとって作られている筈の製品に、相性だの互換性問題だのがあるなんて、そんなの何か間違っている」と思われるかも知れません。<br /><br />]]>
        <![CDATA[無線 LAN の標準仕様は「米国電気電子学会(IEEE)」の定めた規格に基づいています。例えば通称「IEEE 802.11」と言われる無線 LAN については<br /><br />IEEE Standard for Information technology<br />Telecommunications and information exchange between systems<br />Local and metropolitan area networks<br />Specific requirements Part 11: Wireless LAN Medium<br />Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications<br /><br />という長いタイトルの規格書で定められています。この規格書は全部で 512 ページもあり、電気的特性やら変調精度やら、パケットの定義やらプロトコル状態遷移図やら、微に入り細をうがって記述されています(※註)。そんな立派な規格書があるのなら、世の中の無線 LAN 製品すべてがこれを厳守している限り、相性問題だの互換性問題だのは出ない筈ですね。...しかし幸か不幸か、現実に出ている製品では、IEEE 規格を 100% 間違いなく厳守して実装した製品というのは稀なのです。<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em">(※註)厳密に言えばこの仕様書は 1～2Mbps の元祖 802.11 に関する仕様で、11Mbps の 11b や 54Mbps の 11a, 11g については高速化部分に関する追加仕様が別途定められています。</font><br /><br />この「規格違反」というのがどういう原因で起こり、それがどのように見えるかというと大きく３種類に分けられます。<br /><br />(1) 無線 LAN チップに存在する実装バグ(エラッタ)<br />(2) 無線 LAN チップから出力される電波のアナログ的な規格違反<br />(3) 無線 LAN チップを駆動するドライバの実装バグ<br /><br />(1) は LSI チップの設計に起因する問題で、同じ型番のチップでもロットによってエラッタの有無が異なる場合もあります。重大な不具合は出荷以前にほとんど発見・修正されますので致命的問題になることは稀ですが、一旦市場に出てしまうと LSI 内部の回路は修正できません。こういう場合、大抵はドライバにエラッタ対策のコードを入れての回避が試みられます(チップに内蔵されている機能をあえて使わずソフトで代替処理するとか、チップが無応答になったとき強制リセットをかける、など)。この手の不具合は回避処理がうまく動作している限りユーザの目には見えませんが、チップ本来の性能を活かしきれないため、カタログ通りの速度が出ないような現象として発現します。<br /><br />(2) は LSI 本体ではなく、そこから出力される高周波信号をアンテナまで導くアナログ回路や基盤パターンの設計・実装に起因する問題です。ここの設計がキチンとできているかどうかによって、同じチップを同じように実装した製品同士でもノイズの大小によって受信感度に差が出たり、あるいは意図的に出力を下げなければ不要輻射を規定レベルに収められない(電波認証が取得できない)という問題になります。その結果、カタログスペック上では同等性能のはずの製品同士なのに、実運用においては通信速度や距離などの性能に差が出るという現象として発現します。<br /><br />(3) はドライバソフトウェアの実装に起因する問題で、最も多く問題が出るところです。たとえば無線パケットヘッダ情報として規定上は「0」でなければならないビットが、特定条件下で(たとえば再送時)「1」になるような不具合です。この場合、一回目の送信が成功すればアクセスポイントに接続できるのに、一回目の送信が失敗すると再送パケットでは接続できないという現象が発生します。しかしＡＰ側でもその異常ビットをいちいち検査しエラー扱いとするか、無視して受け入れるかの実装違いがあるので、「Ａ社のＡＰには常に接続できるのに、Ｂ社のＡＰには稀に接続できないことがある」という風に発現します。<br /><br />いずれにせよ、「相性」や「互換性問題」は無線 LAN 製品の設計・実装が完全に規格通りでないことに由来しています。立派な規格書があるのにどうしてそうなるんだ、IEEE の責任者出てこい！と思われる方もおられるかも知れません。これに対する答えは、<br /><br /><font style="FONT-SIZE: 1.56em">「IEEE は仕様を制定するだけで、製品の実装を検証する義務も権利もありません」</font><br /><br />ということです。製品の動作を 500 ページ以上もある仕様書と照らし合わせ、全ての動作が規格通りであることを確認するのは大変な作業です。弊社でチェックリストを作成した例では、パケットフォーマットの検証だけで 617 項目に及びました。膨大な種類の新製品が毎月のように発売される無線 LAN 全製品に対し、そんな検証を行う資金も人員も時間も IEEE にはありません。製品を規格通りに実装する責任は、その製品を製造・販売しているメーカ自身にあるのです。<br />しかしメーカも限られた納期とリソースで仕事をしていますから、全ての製品に対して完璧を期することはできません。結果として「相性」や「互換性問題」を抱えた製品が市場に漏れ出してしまうことになります。<br /><br />こういった問題は無線 LAN が市場に投入されだした初期(1998 年以前)には特にひどく、同じ「802.11 規格準拠」をうたった製品でもメーカが違うとまるでつながらない、という様相を呈していました(※註)。無線 LAN 普及のためには互換性・接続性の確立が欠かせないものとして認識され、それを保証する業界団体として Wi-Fi Alliance が設立され「Wi-Fi 認証ロゴプログラム」が発動することになります。<br /><font style="FONT-SIZE: 0.8em"><br />(※註)元祖 802.11 規格では、同じ 2.4GHz 無線でも互換性のない「DS 方式」と「FH 方式」の２種類を認めていたことが更に混乱に拍車をかけていました。</font><br /><br />では Wi-Fi 認証ロゴとは何なのか、次回はその辺のおはなしを致しましょう。<br />]]>
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    <title>無線屋さんのおしごと(2)</title>
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    <published>2011-04-15T05:15:41Z</published>
    <updated>2011-04-15T08:28:37Z</updated>

    <summary>さて前回、「組込み機器の無線LAN対応」というテーマについて、主にハードウェア面...</summary>
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    <category term="無線ドライバ" label="無線ドライバ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#tag" />
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        <![CDATA[<p>さて前回、「組込み機器の無線LAN対応」というテーマについて、主にハードウェア面から見た我々サイレックスの「お仕事」を紹介致しました。今回は第二弾として、ソフトウェア面から見た「無線屋さんのおしごと」を紹介致します。</p>
<p>前回紹介したような数々の困難を乗り越えて、無線対応のハードウェアを完成させたとしましょう。次に問題になるのは、それを動かすドライバの入手です。PC 用に市販されている無線LAN モジュールの場合、PC (Windows ないし Mac) 用のドライバはメーカから提供されていますが、組込みOS用のドライバはどうでしょうか？</p>]]>
        <![CDATA[iTRON や VxWorks など特殊な組込み用 RTOS のドライバは、チップやモジュールのメーカからは供給されていないと思ってまず間違いありません。Windows CE 用のドライバは提供されていることもありますが、無い場合のほうが多いです。<br />では、Linux はどうでしょうか？これは大抵の場合メーカからは提供されておらず、オープンソースプロジェクトからその製品に適合する(であろう)ドライバをダウンロードして使うことになります。しかし同じ Linux であっても、カーネルバージョンによってドライバ API の仕様が異なります。特にカーネルバージョン 2.6.26 を境として無線 API の拡張(nl80211)が行われているため、これを前提としたドライバは 2.6.24 以前のカーネルでは動作しません。しかし新しければ良いという訳でもないのが Linux カーネルの困ったところで、2.6.24 で動作確認されていたドライバが 2.6.38 では一部の機能が動かなくなってしまった、という事も起こり得ます。<br />また、CPU アーキテクチャによってもドライバの動作が異なってくるため、intel PC で動作確認されているドライバが他の CPU(ARM, MIPS, PowerPC, SuperH など)で動く保証もありません。「動くかも知れない」のですが、個々の組合わせ事例について誰かが責任をもって動作検証してくれる訳ではありません。オープンソースの宿命として、動作検証は原則としてユーザが自らの責任で行う必要があるのです。<br /><br />では「無線 LAN 機能の動作検証」とは、具体的に何をするのでしょうか。アクセスポイントにつながってパケットが送受信できれば良いような気もしますが、「アクセスポイント」と一口に言っても、世の中には星の数ほど機種があります。一体どの機種とどの機種で確認すれば「常識的な範囲での相互接続性」が検証できたと考えられるのでしょう。無線 LAN には 11b, 11g, 11a, 11n など各種の通信モードがあり、WEP, WPA/TKIP, WPA/AES, WPA2 などの暗号モードがあり、Open, Shared, EAP などの認証モードがあります。EAP には更に細かく TLS, PEAP, TTLS, LEAP, FAST などのプロトコルがあります。この組合わせを全て確認することを考えると憂鬱になりますし、ましてこの作業を検証対象のアクセスポイント機種だけ繰り返すことを考えると途方に暮れてしまいます。<br /><br />まぁ、頑張って検証作業を進めるとしましょう。これで問題が出なければそれに越したことはないのですが、たとえば『Ａ社のＢというアクセスポイントとの組合わせで EAP-LEAP が動作してない』などという問題が出るかも知れません。しかしサポートを求めても、アクセスポイントの製造元からは「チップかドライバの問題でしょう」と言われ、チップメーカからは「アクセスポイントの問題だ」と言われるかも知れません。<br />オープンソースのドライバなら、コミュニティに連絡すれば誰かが「あぁ、それはこういうことだよ」と答えを教えてくれるかも知れませんが、教えてくれる保証もありません。まして特殊な CPU を使っていたり、カーネルにカスタマイズが入っている場合は「誰か知っている人が助けてくれる」可能性はますます少なくなります。もちろんオープンソースなのだから自分で直せればそれに越したことはありませんが、それが簡単にできる事かと言えば話は別です。<br /><br />無線セキュリティ動作に関しては更にもう一つ、ややこしい事情があります。上に述べた WPA や EAP、WPS(WiFi Protected Setup)などの機能はチップやドライバにまとめて実装されている訳ではなく、時として OS 側に実装されていたり、あるいは OS とドライバの間に入るミドルウェアとして実装されていることです。Linux の場合は hostapd とか wpa supplicant と呼ばれるオープンソースのミドルウェアが多用されていますが、これらミドルウェアも全てのカーネルバージョンやドライバとの組み合わせで動作検証されている訳ではありません。ミドルウェアを使ったセキュリティ動作で問題が出た場合も、やはり原因切り分けと修正の作業が必要になります。<br /><br />ここでまとめると、ソフトから見た無線屋さんのおしごとは<br /><br />・非標準 OS へのドライバ移植<br />・ミドルウェアとドライバの結合とテスト<br />・各種モードを組み合わせた場合のドライバ動作検証<br /><br />といったところになります。場合によっては、ここに「無線設定画面の設計」などユーザーインターフェースに関わる部分や、「ローミング性能の高速化」「WiFi 非標準動作モードの対応(高速アドホックモードなど)」といったカスタマイズの仕事が加わる場合もあります。<br /><br />今回の記事では「～かも知れません」という表現を多用しましたが、これは憶測や脅し文句ではなく、実際の業務でしばしば遭遇した体験に基づいています。しかし無線 LAN 技術は国際標準規格の筈なのに、何故こんな事態になるのか疑問に思う方も多いでしょう。次回はその辺りについてのお話をしようと思います。<br />]]>
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